5 / 8
波の寄る辺
しおりを挟む
「私と一緒に寝てほしい、セックス無しで。時間のある時でいい」
そんなチャットを突然もらって、ローゼンはどきりとした。多忙な身であるレイフは、時間が空いたら仮想空間で時々大自然の雄景の中を一人で散歩したり、仮眠をとったりする事があった。本人から話は聞いていたが、プライベートな仮想空間のルームに誘われるのはこれが初めてだ。
同僚や上役の長官と一緒に同席して、仮想空間で共に会議をする事は何度かあったが、それとこれとは訳が違かった。気が少しそぞろになりながらもとりあえず今日の任務や報告書書きを終わらせ、レイフに返信をし指定の場所で落ち合う事にした。
指定されていた仮想空間のアドレスを打ち込み、没入する。そこは風が強い太平洋の砂浜を模した所だった。空は青くない、嵐が過ぎ去ろうとする灰色である。日光は厚い雲で覆われている。波の音がうるさい、遠方で雷が光った。自分が立っている場所は雨で湿っており、砂は黒かった。
目の前にある、寂れた木造建築の小さな家のドアを開ける。そこの奥のベッドにレイフは横になっていた。訪問したローゼンを薄目で見つめる。
「…来たか。横になってくれ」
どぎまぎしながらもローゼンは白いシーツがかけられたベッドに腰かけ、レイフの右隣に横になった。今回は2人とも私服の姿で、現実そのものの分身の設定をしている。レイフは普段オールバックである黒髪を下ろし、目をつむっている。そっとローゼンの背中に手を回し、胸板に自分の顔を埋めた。頬が紅潮し、心音が跳ね上がった。
(…司令疲れてるのかなー)
「お前といるとなんとなく安心する。しばらくこのままでいたい」
眠りが深くなったのか、レイフはすぅと寝息をたてた。
据え膳食わぬは何とやらと言うが、このような自然の中で性的な行為、セックスをするのは野暮に感じられた。少なくとも今だけは。1人こういう時に手を出しそうな奴の顔が一瞬思い浮かんだが、心の中で毒付き表には出さなかった。
枕の位置を調整し、シーツをかける。自分も眠くなってきた。この家の中では独特な防音の設定があるのか波と風の音量が緩和され、暴雨風とけたたましい波音はかすかな調べとして耳に届いた。
窓から見える景色では、太陽が顔を覗かせている所だった。雲間から光が差し、天使の梯子となってまだ荒れ狂う海を照らしていた。海は本来の青さを取り戻そうとしている。
「2人とも起きたら浜を散歩しましょう?」
そうつぶやいた後少し体勢を変え、ローゼンは眠っているレイフの首元に軽くキスをした。
そんなチャットを突然もらって、ローゼンはどきりとした。多忙な身であるレイフは、時間が空いたら仮想空間で時々大自然の雄景の中を一人で散歩したり、仮眠をとったりする事があった。本人から話は聞いていたが、プライベートな仮想空間のルームに誘われるのはこれが初めてだ。
同僚や上役の長官と一緒に同席して、仮想空間で共に会議をする事は何度かあったが、それとこれとは訳が違かった。気が少しそぞろになりながらもとりあえず今日の任務や報告書書きを終わらせ、レイフに返信をし指定の場所で落ち合う事にした。
指定されていた仮想空間のアドレスを打ち込み、没入する。そこは風が強い太平洋の砂浜を模した所だった。空は青くない、嵐が過ぎ去ろうとする灰色である。日光は厚い雲で覆われている。波の音がうるさい、遠方で雷が光った。自分が立っている場所は雨で湿っており、砂は黒かった。
目の前にある、寂れた木造建築の小さな家のドアを開ける。そこの奥のベッドにレイフは横になっていた。訪問したローゼンを薄目で見つめる。
「…来たか。横になってくれ」
どぎまぎしながらもローゼンは白いシーツがかけられたベッドに腰かけ、レイフの右隣に横になった。今回は2人とも私服の姿で、現実そのものの分身の設定をしている。レイフは普段オールバックである黒髪を下ろし、目をつむっている。そっとローゼンの背中に手を回し、胸板に自分の顔を埋めた。頬が紅潮し、心音が跳ね上がった。
(…司令疲れてるのかなー)
「お前といるとなんとなく安心する。しばらくこのままでいたい」
眠りが深くなったのか、レイフはすぅと寝息をたてた。
据え膳食わぬは何とやらと言うが、このような自然の中で性的な行為、セックスをするのは野暮に感じられた。少なくとも今だけは。1人こういう時に手を出しそうな奴の顔が一瞬思い浮かんだが、心の中で毒付き表には出さなかった。
枕の位置を調整し、シーツをかける。自分も眠くなってきた。この家の中では独特な防音の設定があるのか波と風の音量が緩和され、暴雨風とけたたましい波音はかすかな調べとして耳に届いた。
窓から見える景色では、太陽が顔を覗かせている所だった。雲間から光が差し、天使の梯子となってまだ荒れ狂う海を照らしていた。海は本来の青さを取り戻そうとしている。
「2人とも起きたら浜を散歩しましょう?」
そうつぶやいた後少し体勢を変え、ローゼンは眠っているレイフの首元に軽くキスをした。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
壁乳
リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。
最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。
じれじれラブコメディー。
4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。
(挿絵byリリーブルー)
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる