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ハイドランジア
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「あまりベタベタ花に触るなよ、毒があるかも知れない」
雨がしとしと降る灰色の空の下、窓側に飾られた紫陽花の一差しをローゼンはベッドの中からぼんやりと見つめていた。同じベッドで裸で同衾しているレイフは、自らの黒髪を梳いてそう言った。昨日から、レイフは日本支部に長期滞在中である。今自分達がいるのは賓客用のゲストハウスだった。
総司令官であるレイフがわざわざ日本支部に直接訪問するのは支部の視察もあるが、自分の義足、義手の微調整も兼ねて専門部署に意見を聞くため、と本人からの言だ。
「俺が子どもの頃は家に飾ってなかったですよね」
「今は園芸用のハイドランジアは無毒性のものが出ているが、野生種のものを飾るのは少し躊躇われるな。中毒者も出ている」
ハイドランジア、紫陽花は毒性を持つためそれの表裏一体である薬理機構の研究が昔から進められてきたが、今現在では成分の解明が進み品種改良で無毒性、有毒性のものが世の中に出るようになった。電脳の検索結果では毒性の専門用語が多く、理解するのが困難だった。
きっと薬に詳しい某友人だったら簡単に説明してくれるのだろう。
自分の想いびとのレイフは盆栽が趣味だった。レイフ自身も盆栽に通ずる野花に関連した知識も多少あり、一緒に過ごしていた時は桜の盆栽を飾っていた記憶がある。自分が子どもの頃は確かに何をするか分からなかったから、ハイドランジアを飾らなくて正解だったと思う。俺も大人になったから今では意味が分かるけど。
「梅雨だからあまり外に出たくないですねー」
忙しい中、昨日の夜はわざわざ自分の為に時間を作ってくれた愛しい男に、ローゼンはそっと唇へキスをした。少し逡巡しつつも相手は歯列を開け舌を受け入れた。褐色の逞ましい胸の尖りに指を沿わせ弱く引っ張る。
「…っ」
びくりとレイフの体が震えた。
「あなたが淫乱なのは俺の前だけでいいですよ」
「…歯が浮くようなセリフを言うな!」
思いっきり頬を引っ張られ、いででとローゼンは涙目になった。互いの陰茎を重ね合わせ、一緒にゆるく扱く。胸板に舌を這わせたら、それぞれの口から多少の悦楽を含んだ吐息が思わず漏れた。
俺にとってのあんたは親代わりだったけど、昔から心の内に根付くハイドランジアの毒みたいなものなのだろう。
もしかしたらあんたは自分に中毒している俺が嫌かも知れない。
毒にも薬にもならない、これは恋愛関係ではないのだろう。それでも俺はこの状況に満足しているんだ。
「…今度、一緒にどこか出掛けましょうか。あなたがいいのだったら」
もたらされる快楽に顔を歪めながらも、レイフはじっとローゼンの目を見た。
互いの目線が重なり合った。
雨がしとしと降る灰色の空の下、窓側に飾られた紫陽花の一差しをローゼンはベッドの中からぼんやりと見つめていた。同じベッドで裸で同衾しているレイフは、自らの黒髪を梳いてそう言った。昨日から、レイフは日本支部に長期滞在中である。今自分達がいるのは賓客用のゲストハウスだった。
総司令官であるレイフがわざわざ日本支部に直接訪問するのは支部の視察もあるが、自分の義足、義手の微調整も兼ねて専門部署に意見を聞くため、と本人からの言だ。
「俺が子どもの頃は家に飾ってなかったですよね」
「今は園芸用のハイドランジアは無毒性のものが出ているが、野生種のものを飾るのは少し躊躇われるな。中毒者も出ている」
ハイドランジア、紫陽花は毒性を持つためそれの表裏一体である薬理機構の研究が昔から進められてきたが、今現在では成分の解明が進み品種改良で無毒性、有毒性のものが世の中に出るようになった。電脳の検索結果では毒性の専門用語が多く、理解するのが困難だった。
きっと薬に詳しい某友人だったら簡単に説明してくれるのだろう。
自分の想いびとのレイフは盆栽が趣味だった。レイフ自身も盆栽に通ずる野花に関連した知識も多少あり、一緒に過ごしていた時は桜の盆栽を飾っていた記憶がある。自分が子どもの頃は確かに何をするか分からなかったから、ハイドランジアを飾らなくて正解だったと思う。俺も大人になったから今では意味が分かるけど。
「梅雨だからあまり外に出たくないですねー」
忙しい中、昨日の夜はわざわざ自分の為に時間を作ってくれた愛しい男に、ローゼンはそっと唇へキスをした。少し逡巡しつつも相手は歯列を開け舌を受け入れた。褐色の逞ましい胸の尖りに指を沿わせ弱く引っ張る。
「…っ」
びくりとレイフの体が震えた。
「あなたが淫乱なのは俺の前だけでいいですよ」
「…歯が浮くようなセリフを言うな!」
思いっきり頬を引っ張られ、いででとローゼンは涙目になった。互いの陰茎を重ね合わせ、一緒にゆるく扱く。胸板に舌を這わせたら、それぞれの口から多少の悦楽を含んだ吐息が思わず漏れた。
俺にとってのあんたは親代わりだったけど、昔から心の内に根付くハイドランジアの毒みたいなものなのだろう。
もしかしたらあんたは自分に中毒している俺が嫌かも知れない。
毒にも薬にもならない、これは恋愛関係ではないのだろう。それでも俺はこの状況に満足しているんだ。
「…今度、一緒にどこか出掛けましょうか。あなたがいいのだったら」
もたらされる快楽に顔を歪めながらも、レイフはじっとローゼンの目を見た。
互いの目線が重なり合った。
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