シャドラ ~Shadow in the light~

Crom

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第1章:Blue Blood Panic

16.エピローグ

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 朝日が差し始めた大広場、シェリルは穏やかな表情で救出されたデイズに抱きかかえられ眠っていた。
 魔力を限界まで放出し疲れたのであろう。

 デイズも衰弱はしているものの命に別状は無い様だ。

 アドルフの指示の下、生き延びた兵士たちが慌ただしく広場の復旧作業を行っていた。

 後日、デイズ・ミシュランへの事情聴取が終了し、カイルの言うとおりデイズは魅了チャームの魔術にかかっていた間も意識を保っていたことが分かった。

 デイズは娘からの告白を受けた後、すぐにセントルイス学院から詳細を聞き出し娘の苦しみを知る。
 そして、それが自らの貧民支援という行為が引き金となって起きていることも分かった。
 だが、どうしてもデイズには施策を止めるという判断が出来なかった。

 実は、彼女は元々貧民地区の出身であり、デイズの夫、亡くなったミシュラン家前当主が彼女を見初め経歴を書き換えて娶っていたという経緯がある。
 そのため、自らの少女時代の苦しみを考えるとどうしても貧民支援を打ち切ることだけはできなかったらしい。

 しかし、それが娘を苦しめている………。
 自分のせいで地獄のような苦しみを娘に味合わせてしまっている。
 そのせめてもの償いとして娘の復讐を肩代わりし、罪を全てかぶろうとしたらしい。

 それが、デイズの精神系魔術に対する素養なのか、はたまた驚異的な精神力、愛のなせる技かはわからないが、結果としてデイズ、シェリルの母娘によって命を奪われた者は1人もいなかった。

 「歪んだ愛、とはいえないよねぇ。きっと本当に大切な人のためなら自分の事なんて省みず、なんでもしちゃうんだろうね」

 許される事ではないが、アイリーンやメリー達がシェリルを執拗にイジメていたのも理由があった。

 親から命令されていたのだ。
 市民からの絶大な指示を背景に近年更に勢力を強めてきているミシュラン家を潰そうという陰湿な謀略の一環であった。

 権力闘争の道具として自分の子どもまでも利用する。
 この国の中心部にはどんな者たちが巣食っているのか......

 なんて、したり顔で先日の事件語り合っているここはなんでも屋BLITZのリビング兼オフィスである。
 今日も相変わらず客は1人も来ない。

 来客用ソファーを占拠したカイルは新聞を片手に大きなあくびをし、リュウガは日課のトレーニングをしながら各々穏やかな午後を過ごしていた。
 新聞には例の事件は、ずさんなガス管工事による爆発事故とだけ短く報じられていた。
 事件の存在自体封殺されておりすぐに時間の波に流され、今後世にでることはないのだろう。

 「お二人ともっ!!」

 そんな平穏な午後と一抹のもやもやした思考は、はつらつとした声に一喝されてはかなく崩壊した。

 「どうして教えてくれなかったんですか!そんな大事になってるなんて!私だけ全然何も知らなかったんですけど!!!」

 「あー、いやぁ、できることならサクラにも教えたかったんだけどさぁ、敵を騙すにはまず味方からっていうじゃない?そういう意味でも敵にこっちの動きを勘付かれないためには隠しとくしかなかったんだよ」

 「そうやって兄さんはいっつも一人で抱え込んで・・・・。たまには心配する人の事も考えてくれてもいいのに」

 「んん?なんて?ちょっと声小さくて聞こえなかっ..........」

 「もういいですっ!!」

 怒りからなのか何なのかサクラの顔はやや赤い。

 「今回に関しては、許してやれよサクラ。お前を危険な目に合わせたくなかったからコイツは言わなかったんだ。なにせ、吸血鬼の一人がすぐ側にいたんだからな」

 リュウガが珍しくフォローを入れる。
 ただし、片腕一本指逆立ちをしたままのついでではあるが。

 「・・・・シェリルちゃん、今どうしてるんでしょうね。せっかくお友達になれたのに」

 「お屋敷に戻ってお母さんの退院を待ってるって聞いたよ。アー君情報だから間違いないと思う」

 「そうですか。うぅ~、でも………」

 「心配ならまた今度会いに行こうよ。多分俺らお屋敷に遊びに行ったらVIPルームに通されると思うし・・・っと噂をすればアー君、いらっしゃい。どうしたの?」

 カランカラン、と軽快な玄関のベルの音と共に入店してきたのは、最近おなじみスーツ姿のアドルフである。

 「毎度言っているがアー君と呼ぶな。今日はキサマらに報酬を渡しに来たのだ」

 「わざわざご苦労なこったな。適当に口座に振り込んでおいてくれりゃよかったのに」

 トレーニングを終えゴソゴソと食料を漁っていたリュウガが声をかける。

 「それはそうなのだが、話しておかねばならないこともあってな。この際、手渡しの方が確実だと思ったのだ」

 そう言ってアドルフは丁寧に封がされた1通の封筒をカイルに手渡した。

 「おぉ~!!きたきた!!これで極貧生活ともおさらば・・・あれ?やけに薄くない?」

 一抹の不安を感じながらカイルが封筒を開けるとそこには......



 - 2,000,000zail -



 ...を請求するという紙が一枚入っていた。

 「・・・ねぇ、アドルフ。これ間違ってるよ。これ、小切手じゃなくて請求書じゃん」

 「あぁ、それで間違いないが」

 「ええええええええええええええええええぇぇぇぇっ!!」

 ブリッツの三人の声が見事に合わさった。

 「ちょっと!!!アドルフさん、200万zailの請求って一体どういうことなんですか?」

 「どういうことも何も、お前達が無駄に壊しまくった公共財の修繕費と各地への迷惑料の一部だ。それを本来我々が支払うはずだった依頼料を差し引くとちょうど200万zailの赤字となったわけだ」

 「な、納得いかねぇ~」

 ブリッツの三人は「夢にまで見たセントラルへの出店がぁ」、「俺の酒代が」、「明日からの食費どうしましょう」と三者三様の悲鳴を上げている。

 「まぁそう落ち込むな。代わりと言っては何だが新しい依頼を紹介してやろう。感謝するがいい」

 「くれぐれもしっかり頼んだぞ」と言い残して、さっさとアドルフは店を後にした。

 未だお通夜ムードの店内にアドルフと入れ替わりで一人の少女が入ってきた。

 「あの、依頼をしたいんですが」

 「はーい、いらっしゃいませ。すみません、今しがたちょっとショックな出来事がありまして、すぐにお茶をお持ちしますね………ってええぇぇぇ~!!」

 「お久しぶりです。皆さん」

 そこにはお屋敷にいるはずのシェリルが申し訳なさそうに立っていた。

 「おぉ、久しぶりじゃない。一体どうしたの?」

 「あの、実は。もっと強くなりたいってお母様に相談したら「世の中のことを広くよく理解して本物の貴族として正しく振舞えるようにしばらく勉強してきなさいって。」って」

 そこでシェリルは一旦言葉を切った。そしてしばらくモジモジしていたがついに思い切って、「私をここにおいてくださいませんか?」と言った。

 「えっと、ちなみに依頼料は200万zailです」

 ブリッツの三人はいきなりのことに面食らっていたがサクラが「きゃぁーーーー!!」とシェリルに抱きついたのを機に店内は暖かい空気に包まれた。

 「さて、それじゃあみんなでストランドにでも行ってシェリルちゃんの歓迎会でもしよっか!!」

 「いや、それよりもシェリル。暇なら俺と手合わせしてくれねぇか?ちょっと試したい技があってな」

 「もうっ!!二人とも!!なんだかんだ今回も結局はただ働きだったんですよ。歓迎会は私とシェリルちゃんの二人でしますからお二人は働いてきてください!!」

 こうしてシェリルが加わり四人となった何でも屋BLITZブリッツ。

 今日はいつも以上に騒がしい日になりそうである。


 セントラル・シティに出店できるまで後、「78,000,000zail」

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