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屋上

005

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「あぁ……分からん。降参だ降参」

「諦めたらそこで試合終了よ」

「安西先生!?」

コイツどこまでネタを持ってるんだよ。話が全く先に進まない。
まぁ、答えてる僕もなんなんだよって感じだけど。

「フッ……現代人の悪いところね。すぐに答えや攻略を知りたがる。それを探すのが一番面白いのに」

「現代ゲーマーに喧嘩を売るのは止めておけ」

「ドンキーゴング限定で勝負してあげるわ」

「なんでドンキーゴング限定なんだよ…!」

だんだん疲れて来た。
僕も無尽蔵な体力を持ってるわけじゃない。
僕はどちらかというと、平凡な能力値の人間だからな。

「じゃあ答えだけど、聞いても意外に平凡なもんよ答えなんて」

「ここまで伸ばして聞かないわけにはならないだろ。平凡でも知りたい」

「そう」

立花は本を閉じ、立ち上がり、僕に近づく。
その漆黒の髪が、冷たい風で揺れる。

「あなたに興味がある。ただそれだけの違いよ」

「えっ……?」

意表を突く言葉だった。
目の前で敵将と戦ってたら、背中から足軽の槍で突かれたような、そんな意表。

「あっ勘違いはしないで。あなたが好きになったんじゃなく、ただ興味本位よ。自殺をしようとした人がもし生き長らえたらっていうちょっとしたね」

ちょっとじゃない、僕にとって大迷惑だし、趣味が悪いわ。
現実とは残酷だな。
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