家族で国家機密──うちの犬がしゃべった、その先で

武者小路参丸

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第6話 初任務──出動、unknown(アンノウン)への対峙

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「・・・だい~ん!あたしもう無理。あの教官、鬼。悪魔。」

自宅のベッドに倒れ込み、うつ伏せ・大の字のまま言うクミコ。

「まさか地下に400メートルトラックあるとはな。・・・40代の俺等に走りからはキツいよ!」

ミサオもベッドにもたれかかり、その場に缶コーヒー片手にうずくまっている。

「パピもマミも、やっぱり疲れた?歳・・・のせい?」

既に獣人化している、やはり寝そべって話すコジマル。

「ジョロ。気を使ってくれてるのはわかる。わかるけれども・・・まぁ、俺等夫婦、歳だわな?俺はまだ武道経験あるけどさ、マミ運動系、前から嫌いだもんな?」

「あたしは中学のテニス部くらいなの!しかもその頃からアイドルの追っかけしてたから、練習もあんまり出てないの!筋金入りなの!」

「へー!凄いねマミ!」

「ジョロ、驚く内容と違うぞ?さて、おさらいだ。ほら、マミも身体起こして!」

ミサオの言葉で渋々ベッドの上にあぐらで座り直すクミコ。

「えっと、確認な?・・・俺達は、今日の訓練終了を持って正式な国家公務員。で、警察官。階級は警部補。ここまではいいよな?」

ミサオの言葉に頷く2人。

「んで、これは建前の役職。本当は国家害意生命体対策部隊──通称H-FORCE(エイチ・フォース)所属の二等陸尉。みんな二尉って言ってるやつ。要は会社で言う係長か。つまり制服着たお巡りさんには現場で指示与える立場だな。」

ミサオは缶コーヒーを一口飲み込む。

「そいで、俺達はどこかの警察署には基本所属していない。応援だけだな。で、確認されたら、警察庁にて動いていますと言う感じ。そいえば警察手帳、見してみ?マミの。」

「・・・。」

無言で手渡された手帳を見るミサオ。

「・・・はい、ありがと。」

「なんか言いなさいよ!どうせ写真写り悪いわよ昔から!」

「何も言って無いじゃんか!いつも俺言ってるよ?可愛いって!」

「マミ?パピ?話進めよ?」

「ごめんジョロ。ホントにパピは・・・。」

「ちょ、俺悪いみたいに・・・まぁいいよ。続けるぞ。具体的にやる事な?連絡有れば即行動開始。あの化け物・・・今はとりあえず通称unknown(アンノウン)だけど、アイツ等への対処。場面によって臨機応変に。・・・て、殲滅とか言わないのな?生身で持ち帰りとかあるからか?」

ミサオはそこで疑問を呈する。

「それある筈だよ?僕のやっつけたやつ、あそこ居たもん。えと、エイチフォースだっけ?あそこの本部。」

「え?居たの?あの化け物?マジか!」

驚くミサオ。クミコも硬直する。

「匂いしたもん。」

「・・・鼻いいんだな、ジョロ。それは置いといて、後は特殊拳銃。これは常時携帯許可が下りてるから、腰か脇のホルスターに入れておく事。家ではあの銃器ロッカーに仕舞う事。後は、基本現場へ直行直帰。出張有りで、交通費や必要経費は後日精算。ここまではオケ?」

「もう分かったからさ、何か頼まない?お腹ペコペコよあたし。ジョロもだよね?」

「うん!僕も2人と同じもの食べたい!」

「わかったわかった、じゃ、何食う・・・。」

ミサオのスマホが鳴る。

(対策)

の二文字が画面に映る。
 
「・・・ナンバー3・3・0(さん・さん・まる)、コードネームミッチェル、確認乞う。」

「・・・確認しました。出動要請発令、神奈川県横浜市、unknown(アンノウン)出現確認。現場に急行願います。現場には支援要員も既に向かって居ます。詳細は端末に送ります。無事の帰還を。」

「了解。永井家、行動開始します。」

電話を切るミサオ。

「来ちまったよ!初仕事!早く車に・・・て、ジョロ、ワンコモード!現場まではな!とりあえず、パンでも何でも車の中で食いながらな!」

慌てて2階の寝室から駆け下り、1階の押し入れを開けた所に隠された銃器ロッカーからホルスターと特殊拳銃をクミコの分と合わせて取り出す。

「マミ!戦闘服!これも着けて!」

クミコにホルスターと拳銃を渡すミサオ。何度も2人で繰り返した訓練の成果か、準備が早い。

「襟の桜の代紋!ヨシ!警察手帳!ヨシ!ブーツ!オッケー!んじゃ飛ばすぞ!少し離れたらマミ、窓開けて赤色灯外に貼っつけて!行くぞ!」

帰宅の余韻も束の間、永井家は、初の出動をこの日迎える事となった。

ーーーーーーーーーーーー

あとがき

“任官”からわずか数日──  
永井家に訪れた、最初の“現場”出動。

疲れを癒やす間もなく、突きつけられる“国家公務員”としての責務。  
だけど彼らは「正義感」ではなく、「家族だから」動く。

パピとマミの絆。  
ジョロの覚悟。  
そして、どこか日常の延長線にある非日常。

それが、この物語の原点です。

初任務の現場では、果たして何が起きるのか?  
見守っていただければ幸いです。
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