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第8話 選んだ道──普通の朝と、戦う決意
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明けて翌日。
「パピ、マミ。おはよう!」
「ん~?ジョロか。おはよ。今何時だ?・・・て、まだ4時半だぞ?」
「え?いつも通りだよね?お散歩。」
「・・・そこは変わんないのね?・・・分かった。行こうや。でも、犬モードでな?」
スヤスヤ眠るクミコを残し、ミサオは以前と同じくコジマルにハーネスを着け、お散歩バッグを肩から下げて、ショルダーリードとハーネスをつないで玄関を出る。
「・・・ジョロ、聞きたいんだけどさ、アッチの姿の時はトイレも使って普通に俺等と飯も食えるわけじゃん?でもさ、犬モードん時は、頭ん中に話しかける以外前と変わらんじゃんか、それこそトイレも。・・・何で?」
「ウ~ワワフワフッ!(ん~わかんない)!」
「え?今しゃべった?どっち?」
ワチャワチャ話をしながらも散歩を終えて帰宅するミサオとコジマル。
「・・・おかえり。早いわね、二人とも。あたしまだ目が開かないわよ。・・・ほら、ジョロおしり拭こ?」
雑巾とおしり拭きで、コジマルの足元とおしり等を綺麗にするクミコ。以前からのルーティンである。
「それも、モード変えれば自分でやれるような気が・・・。」
「いいの!今のジョロはワンコなんだから。」
「んな理不尽な・・・。」
クミコの言葉にへこむミサオ。
ここでちゃっかり獣人モードで食卓に付くコジマル。
朝の食卓は、以前と変わって3人前。不思議と身体に悪い物は自然と避けている様子のコジマル。
「好き嫌いでは無いんだよな、不思議と。レーズンとか犬の時も禁忌だよな?チョコとかも。」
「少しは食べてもしなないよ?でも不思議と食べたく無いんだよね。」
「それは良しとしよう。でも、俺達の飯の横のカリカリ。これはどうなんだ?」
「これは・・・オヤツ!」
高らかに宣言するコジマル。
「マミ!ダブルで食ったら太るよ?ジョロ。大体パテラは?膝の皿どうなったのよ?」
「んとね、治った!」
「んなバカな!理不尽にも程があるよ!マミ、何とか言ってよ!」
「本人が治ったって言ってるんだからいいじゃない!何?治らない方が・・・。」
「わかった!わかりました!俺もジョロの足治ってた方がいいんだから・・・そこじゃないんだよな。」
騒がしい朝の食卓も済んで、皆でTVの前へと座る。
「マミ、ニュースにして!チャンネル変えて!」
クミコがリモコンのボタンを押す。
「・・・ものの見事に、あの件スルーだな。ま、最初ん時もそうだったけど。」
ミサオがため息をつく。
「これ、内容違えは怖い事よ?悪意が無くてもね。」
クミコがその情報統制の危険性を指摘する。
「・・・いずれ、状況酷くなれば解禁せざるを得ないだろうが、それさえもなるべくソフトに・・・大変だろうなぁ。上の人達も、現場もな?」
ミサオも矛盾に気付きながらも、何か出来る訳でも無くただ状況を静観するのみ。
「人々の暮らしを守るって、大変なのね。・・・でも、ジョロはそれでも戦うの?怖くないの?」
「そうだ。出来ればジョロには、痛い思いや危険な事して欲しくないのが親の本音だ。・・・でも、お前のそのツラ見たら、曲げそうにねぇな、まったく。」
「ゴメンねマミ、パピ。僕もよくわからないんだけどね。アイツ等は存在しちゃいけない。仲間の魂が、そのまま虹の橋に行けないなんて、あっちゃいけない。だから僕は・・・僕達は、戦うんだよ。」
「・・・その為には、私達もそばに居なきゃいけない。・・・そう、決めたんだもんね。ゴメンねジョロ。」
コジマルを抱き寄せ、そのまま倒れ込むクミコ。
「・・・それって、お前の意思なんだよな?何かに強制されて・・・。」
ミサオは尚も問う。
「・・・心配してくれてありがと。でも、僕が決めた。で、気付いたら、パピとマミの子供だった。・・・そして、仲間達の魂を返してあげる。また生まれ変わって、笑顔に会える様に。」
「わかった。・・・これ以上は聞かない。やるべき事じゃなくて、やると決めた事なら、親は笑って応援するさ。・・・筋肉痛と戦いながらな。昨日の転げ回ったとこ、今頃痛えよ。マミ、湿布ある?」
「冷蔵庫!無かったら薬箱から出しといてね?」
「・・・この家は、格差社会なのか?俺虐げられてないか?優しくしてよマミ!」
「それはベリ甘スィート過ぎるわよ。大黒柱なんだから、デンと構えてなさいよ。」
「・・・冷蔵庫ね?・・・腑に落ちないなぁまったく。」
ブツブツ言いながら、ミサオは湿布を取りに行く。
この日はそのまま何事も無く過ぎてゆく。
以前と同じ様に。
でもこの普通の日々は続かない。
この家族は選択したのだ。
魂を救う為の戦いを。
息子の意思に寄り添い、共に進む道を。
いずれ、皆が笑顔になれるその日を目指して。
その狭間の平穏に感謝しながら、今日が過ぎていった。
ーーーーーーーーーーーー
あとがき
静かに過ぎていく朝。けれどそこには、確かな変化と覚悟がありました。
“ただの家族”として生きてきた永井家が、“守る側”としての第一歩を踏み出した翌日。
その何気ない日常に見える風景の裏には、それぞれの思いと決意が積み重なっています。
ジョロ──コジマルの「戦う理由」は、誰かに与えられたものではなく、自分で選び取ったもの。
それに寄り添うように、ミサオとクミコもまた、“親”としての選択を下しました。
「痛い思いをしてほしくない」という本音と、「それでも支えたい」という覚悟。
何気ない会話や仕草の中に、家族としての距離感と、想いの深さが滲み出る。
そんな“言葉にならない想い”を、今後も丁寧に描いていけたらと思います。
この物語は、“戦い”の物語であると同時に、“家族”の物語です。
続く日々の中で、それぞれが何を選び、何を守ろうとするのか。
それを、ぜひ見届けていただけたら嬉しいです。
「パピ、マミ。おはよう!」
「ん~?ジョロか。おはよ。今何時だ?・・・て、まだ4時半だぞ?」
「え?いつも通りだよね?お散歩。」
「・・・そこは変わんないのね?・・・分かった。行こうや。でも、犬モードでな?」
スヤスヤ眠るクミコを残し、ミサオは以前と同じくコジマルにハーネスを着け、お散歩バッグを肩から下げて、ショルダーリードとハーネスをつないで玄関を出る。
「・・・ジョロ、聞きたいんだけどさ、アッチの姿の時はトイレも使って普通に俺等と飯も食えるわけじゃん?でもさ、犬モードん時は、頭ん中に話しかける以外前と変わらんじゃんか、それこそトイレも。・・・何で?」
「ウ~ワワフワフッ!(ん~わかんない)!」
「え?今しゃべった?どっち?」
ワチャワチャ話をしながらも散歩を終えて帰宅するミサオとコジマル。
「・・・おかえり。早いわね、二人とも。あたしまだ目が開かないわよ。・・・ほら、ジョロおしり拭こ?」
雑巾とおしり拭きで、コジマルの足元とおしり等を綺麗にするクミコ。以前からのルーティンである。
「それも、モード変えれば自分でやれるような気が・・・。」
「いいの!今のジョロはワンコなんだから。」
「んな理不尽な・・・。」
クミコの言葉にへこむミサオ。
ここでちゃっかり獣人モードで食卓に付くコジマル。
朝の食卓は、以前と変わって3人前。不思議と身体に悪い物は自然と避けている様子のコジマル。
「好き嫌いでは無いんだよな、不思議と。レーズンとか犬の時も禁忌だよな?チョコとかも。」
「少しは食べてもしなないよ?でも不思議と食べたく無いんだよね。」
「それは良しとしよう。でも、俺達の飯の横のカリカリ。これはどうなんだ?」
「これは・・・オヤツ!」
高らかに宣言するコジマル。
「マミ!ダブルで食ったら太るよ?ジョロ。大体パテラは?膝の皿どうなったのよ?」
「んとね、治った!」
「んなバカな!理不尽にも程があるよ!マミ、何とか言ってよ!」
「本人が治ったって言ってるんだからいいじゃない!何?治らない方が・・・。」
「わかった!わかりました!俺もジョロの足治ってた方がいいんだから・・・そこじゃないんだよな。」
騒がしい朝の食卓も済んで、皆でTVの前へと座る。
「マミ、ニュースにして!チャンネル変えて!」
クミコがリモコンのボタンを押す。
「・・・ものの見事に、あの件スルーだな。ま、最初ん時もそうだったけど。」
ミサオがため息をつく。
「これ、内容違えは怖い事よ?悪意が無くてもね。」
クミコがその情報統制の危険性を指摘する。
「・・・いずれ、状況酷くなれば解禁せざるを得ないだろうが、それさえもなるべくソフトに・・・大変だろうなぁ。上の人達も、現場もな?」
ミサオも矛盾に気付きながらも、何か出来る訳でも無くただ状況を静観するのみ。
「人々の暮らしを守るって、大変なのね。・・・でも、ジョロはそれでも戦うの?怖くないの?」
「そうだ。出来ればジョロには、痛い思いや危険な事して欲しくないのが親の本音だ。・・・でも、お前のそのツラ見たら、曲げそうにねぇな、まったく。」
「ゴメンねマミ、パピ。僕もよくわからないんだけどね。アイツ等は存在しちゃいけない。仲間の魂が、そのまま虹の橋に行けないなんて、あっちゃいけない。だから僕は・・・僕達は、戦うんだよ。」
「・・・その為には、私達もそばに居なきゃいけない。・・・そう、決めたんだもんね。ゴメンねジョロ。」
コジマルを抱き寄せ、そのまま倒れ込むクミコ。
「・・・それって、お前の意思なんだよな?何かに強制されて・・・。」
ミサオは尚も問う。
「・・・心配してくれてありがと。でも、僕が決めた。で、気付いたら、パピとマミの子供だった。・・・そして、仲間達の魂を返してあげる。また生まれ変わって、笑顔に会える様に。」
「わかった。・・・これ以上は聞かない。やるべき事じゃなくて、やると決めた事なら、親は笑って応援するさ。・・・筋肉痛と戦いながらな。昨日の転げ回ったとこ、今頃痛えよ。マミ、湿布ある?」
「冷蔵庫!無かったら薬箱から出しといてね?」
「・・・この家は、格差社会なのか?俺虐げられてないか?優しくしてよマミ!」
「それはベリ甘スィート過ぎるわよ。大黒柱なんだから、デンと構えてなさいよ。」
「・・・冷蔵庫ね?・・・腑に落ちないなぁまったく。」
ブツブツ言いながら、ミサオは湿布を取りに行く。
この日はそのまま何事も無く過ぎてゆく。
以前と同じ様に。
でもこの普通の日々は続かない。
この家族は選択したのだ。
魂を救う為の戦いを。
息子の意思に寄り添い、共に進む道を。
いずれ、皆が笑顔になれるその日を目指して。
その狭間の平穏に感謝しながら、今日が過ぎていった。
ーーーーーーーーーーーー
あとがき
静かに過ぎていく朝。けれどそこには、確かな変化と覚悟がありました。
“ただの家族”として生きてきた永井家が、“守る側”としての第一歩を踏み出した翌日。
その何気ない日常に見える風景の裏には、それぞれの思いと決意が積み重なっています。
ジョロ──コジマルの「戦う理由」は、誰かに与えられたものではなく、自分で選び取ったもの。
それに寄り添うように、ミサオとクミコもまた、“親”としての選択を下しました。
「痛い思いをしてほしくない」という本音と、「それでも支えたい」という覚悟。
何気ない会話や仕草の中に、家族としての距離感と、想いの深さが滲み出る。
そんな“言葉にならない想い”を、今後も丁寧に描いていけたらと思います。
この物語は、“戦い”の物語であると同時に、“家族”の物語です。
続く日々の中で、それぞれが何を選び、何を守ろうとするのか。
それを、ぜひ見届けていただけたら嬉しいです。
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