家族で異世界冒険譚(ターン)!第2部 ~永井家異世界東奔西走~ 改定版

武者小路参丸

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第4話 国境都市コルテオの影と白き英雄の予兆

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明けて次の日。

永井家の皆は、今回の一件の報告の為に首都トリニダス、冒険者ギルド本部近くに転移。

ミサオは山中での出来事の詳細を、冒険者ギルド総責任者であるグランド・マスター、セルジオに報告する。。

ミサオの報告の中の、人の言葉を話し魔物を従えていた上位種と思われる闇憑きの存在には、セルジオも驚きを禁じ得なかったようだ。

すぐにヘリオス山へ亡き骸(なきがら)の回収に向かわせるとの事。

幸いとでも言えばいいのか、上位種闇憑きの遺体は損傷もそこまで酷く無いのをミサオが伝えると、セルジオは王国の各機関と連携して、研究・分析を早急に進める事を決める。

ちなみに討伐報酬は、亡き骸(なきがら)を見てから査定する事との事。

(うん。リアルに生活費稼ぐのは大事!)

ミサオの肩には家族との生活がかかっている。

その流れで改めて再会した長男・ムサシをグラマスに紹介する。

ムサシの活躍を話すと、セルジオからの怒涛の冒険者登録と能力の確認の流れとなる。

水晶での魔力の確認と、訓練場での対決スタイルでの能力の確認では、その度に周りの驚愕の表情の中、完了となる。

結果として、グラマスであるセルジオ側から、各地ギルマスには事後承認案件として、C級冒険者登録並びにミサオの部下としての専任依頼が要請される。

ミサオとしては家族一緒が一番なので、ムサシの了解を経て承諾する。

永井家は、冒険者パーティーとしての色合いも帯びてきつつあった。

次に、その後の行動についての話し合いが持たれる事となる。

トリニダス王国、その西の国境の街コルテオ。

隣国聖カチオ教国とを、大きな森と川をはさんで対峙している、いわゆる辺境伯が統治している場所。

最近、異常に闇憑きの被害が増えてきているという。

首都から馬車で10日はかかる場所だが、ミサオは全く苦ではない。

その場で次の案件として、調査確認及び討伐依頼受諾。行動開始となる。

(聖カチオ教国・・・名前が引っかかるのは気のせい・・・じゃないよなぁ。)

苦笑しつつミサオを始めとした永井家一行は、次の討伐へと向かう。

「ファミリー、ポチッとな!」

恒例の号令と共に、永井家一行は異世界の空間を揺らし、瞬間転移した。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

目の前にそびえるのは、堅牢な城壁。

国境都市コルテオ。

重厚な外壁が、遠目にも威圧感を放っていた。

「国境都市コルテオ・・・あの森の先の川の中央が、隣国との境なんだね。」

ムサシが感心したように、街並みを見上げながら言う。

「辺境伯がいるなんて、ワイルドなイメージよねぇ。セルジオさんみたいなイケオジキャラかしら?」

危機感ゼロなクミコの発言に、思わずミサオは頭を抱える。

「ヘリオス山では珍しい食べられなかったから、ここではいーっぱい食べようね!」

ジョロは食欲全開で、町の匂いをくんくん嗅いでいた。

相変わらず、旅情も緊張感も微塵もない。

ミサオは苦笑しながらも、家族に釘を刺す。

「まあ、油断はするなよ。この町はな、他よりもいろいろ不穏な噂がある。警戒は忘れるな。」

・・・辺境伯ラウロ・ファルミニスが統治する、要塞都市コルテオ。

その地は、首都トリニダスから馬車で約十日の距離。

隣国・聖カチオ教国との国境線を守るために築かれた、国防の要だった。

街は、上層・中央・下層と階層構造に分かれ、それぞれに生活の格差が色濃く現れている。

常駐する騎士団もいて、町全体に武張った空気が漂っていた。

隣国カチオ教国との現在の関係は一応良好だと言われている。

だが、その成立前には激しい武力衝突もあった歴史を持つ。

そして今。

ただでさえ物々しいこの町に、さらに不穏な影がある事をセルジオからミサオは聞いている。

その内の一つが辺境伯周辺の失踪事件。

関連性はまだ不明だが、町中で続発する不審死。

さらには・・・。

闇憑きの異常な増加。

(間違いなく何か起きている。絶対に。)

ミサオは胸の奥に湧き上がるざわめきを押し殺し、城門へと歩を進める。

例の如く銀のS級冒険者のペンダントの威光を示して、意気揚々とミサオを先頭に場内へと向かう永井家一行。

城壁を超えて、すぐ。

ミサオたちの鼻を突いたのは、どこか据えたような匂いだった。

階層で分かれている城塞都市の中で一番最初に目に入るのは下層区。

いわゆるスラム。

薄汚れた身なりの者たちが、探るような目で一行を見つめる。

親に捨てられたり、死に別れた孤児達。

夢や希望も無く、死んだような目をした大人達。

この地にあふれる救いのない現実。

それでも、この都市の各階層に設置された教会が、かろうじて命綱となっていた。

特に下層区にある孤児院の存在が、彼らの支えになっているという。

「向こうの世界でも、他の国の映像とかじゃ目にした事あるけど、リアルは流石に胸が痛いな・・・。」

ミサオが静かに言葉を漏らす。

「そうね・・・。」

クミコも、小さくうなずいた。

家族の笑顔を何より大切にする永井家にとって、この光景は、胸を締めつけるものだった。

(今は・・・今は、依頼に集中しよう。)

ミサオは、湧き上がる想いを押し殺し、家族を促して中層区へと進んだ。

いつものように、まずはこの都市の中層区にある冒険者ギルドへ向かう永井家一行。

ミサオのペンダントを見せれば、どこの町でも、対応は早い。

この都市でも、専任S級冒険者の権威は健在だった。

すぐにこの都市のギルドマスター、テッドと対面を許され、固い握手の後に早速話が始まる。

その中で得られた情報の中に・・・ミサオには一つ気になる内容があった。

冒険者以外の、謎の人物による闇憑き撃退事件。

目撃証言によると、孤児たちを守るため、突然現れた謎の男。

彼は、炎の壁を操って孤児たちを守り、名前も名乗らず静かに姿を消したという。

・・・かすかな、予感。

胸の奥に、何かが震えた。

(・・・まさかな。)

ミサオは無意識に、強く拳を握りしめた。

ギルドでの聞き取りを終えた永井家は、ギルマスのテッドに紹介された近くにある宿へ向かう。

街で一番の料理を出す宿。

ジョロのリクエストに応える形だった。

明日からは、本格的な行動開始である。

ジョロがこの都市の食事を堪能したのは言うまでもない。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

その頃。

国境都市コルテオ上層区、辺境伯領館内応接室。

ラウロ・ファルミニス。

この都市を統べる男が、テーブルに突っ伏しながら苦悶の声を漏らしていた。

「足りない・・・まだ足りない・・・外のヤツらの準備はまだか・・・。」

赤く染まった両の眼が、異様な光を放っていた。

この都市には新たな闇が、動き出している。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

次の日。永井家は二手に分かれて、それぞれ情報集めに動き出した。

ムサシとクミコは中層区内の市場へ。

ミサオとジョロは、下層区周辺へと向かう。

「このキャベッチオ、高くないかしら?テリオスなら半額だったわよ?」

野菜売りのおばちゃん相手に、クミコが値段交渉中。この王国で手に入る野菜類は、現代世界と種類も名称も似通ってる物が多いので、クミコも大部分を覚えているらしい。

「あんた、遠くから来たんだねえ?領主様が様々な品物を買い占めてるんだよ。税金も上がる一方さ!これから何か起きやしないかと、住民もみんな不安がってるさね!」

「そうなんですね・・・。でも果物は絶対欲しいわねぇ。お姉さん、そこのオレンザと、隣のアッポーペンも!」

「お姉さんなんて歳じゃないよ!嬉しい事言ってくるよね全く!おまけにキーゥオも持ってきな!」

「マミ、策士か・・・?」

ムサシが小声で感心していた。

一方その頃、ミサオとジョロは手をつないで下層区のスラム街を歩いていた。

ジロジロと探るような住民たちの視線。

そんな中。

目の前を横切ろうとした、足を引きずった小さな少女が転んでしまった。

「だいじょーぶぅ?つかまって!」

慌てて駆け寄るジョロ。

少女はジョロの手を握り、はにかみながら立ち上がった。

その時。

「誰だお前!ミナに何してる!」

怒鳴りながら近づいてきた1人の男の子。

「待って、リオ。この子は、助けてくれたの!」

「・・・随分と小綺麗な格好してるなお前。ここは、お前みたいな恵まれたヤツの来る場所じゃない!帰れ!」

そう叫び、ミナを守るように抱えてリオと呼ばれた子は脇道へ消えていった。

「パピ、おとこのこ、おこってたね?なんで?」

ジョロが首をかしげる。

「そうだな・・・ビックリしたんだろうな。知らない人だから。でもな、ジョロ。女の子を助けたお前、パピはすっごく嬉しかったぞ!」

ミサオは、ジョロの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。ジョロは照れながらにこにこしている。

(この町・・・やっぱり空気が重い。生きるのに必死だから、人の事なんて構ってられない心の余裕の無さが、見てるだけでもわかる。普通に聞き込みしても目立つな・・・。どうせなら、テッドに聞いた孤児院にでも探りを入れてみるか。)

孤児院なら喜ばれるだろうと考え、差し入れを用意する為にミサオとジョロは、クミコたちのいる市場へと戻っていった。

程なくして、両手いっぱいに食料を抱えたムサシと、井戸端会議の真っ最中だったクミコをミサオとジョロが見つける。

「マミ!むっちょんにーにー!すごいおみやげ~!」

はしゃぐジョロを見て、クミコが小さく笑った。

すぐにクミコとムサシに情報を共有し、ムサシが抱えた食料を手土産にして、永井家全員で教会へと向かう。

スラム街の中心に建つその教会は、外壁こそくたびれていたが、中に入ると。

驚くほど綺麗に掃除が行き届き、空気まで澄んでいた。

祭壇に向かって、小柄なシスターが一心に祈りを捧げている。

その姿に、ミサオたちは一瞬、言葉を失った。

(ここだけ、世界が違うみたいだな。)

ミサオの心の中に、そんな感想が浮かんだ。

やがて祈りを終えたシスターが、こちらへと歩み寄ってくる。

「私たちを優しく見守る主神カチオの家、教会へようこそ。今日はお祈りでしょうか?」

彼女は、柔らかな笑顔を浮かべていた。

(主神カチオ・・・ねえ?課長さん、俺と飲んだ時にゃ単なる愚痴の多いイケメン親父だったけど、下界での扱いは相変わらずだな。)

ミサオは内心苦笑しながらも、一歩前に出て答える。

「いえ、今日は日頃から課長さ・・・主神カチオにお世話になっているので、家族皆の総意として、孤児院の皆さんに差し入れを持ってきました。

初めまして。私は冒険者を生業(なりわい)としておりますミサオ・ナガイ。

隣が妻のクミコ・ナガイ、こちらが息子達のムサシ・ナガイとコジマル・ナガイです。

それはそれと・・・最近このあたりで、闇憑きに関わる事件があったと聞きまして。何かお話を伺えたらと。」

ミサオの言葉に合わせてムサシが両手で抱えた食料をシスターに手渡す。

シスターは一瞬目を丸くしたが、すぐにふんわりと微笑んだ。

「まあまあ、こんなにも沢山の食料を・・・。本当に、ありがとうございます。実は最近の都市内の情勢もあって、食事の量を減らさねばと考えていた矢先だったのです。」

そう言う彼女の顔には、心底ホッとした表情が浮かんでいた。

「改めまして、私はこの教会のシスターであり、孤児院の運営も任されております、マリア・ベッカーと申します。

どうぞ皆様、孤児院の方にも顔を出してやってくださいな。子供たちも、きっと大喜びします。」

そう促され、ミサオたちは教会奥に併設された孤児院へと歩き出す。

(リアルな現実と向き合うのは正直辛いが・・・行こう。ここにいる小さな命たちと、ちゃんと向き合わないとな。)

ミサオはそっと心に誓った。

シスター・マリアに促されて移動した、教会に併設されている孤児院の子達は、ミサオが想像していたよりもずっと元気だった。


「皆さん!今日は、こちらにいるミサオさん御一家が、食べ物を沢山届けてくれましたよ!ちゃんとご挨拶しましょうね!」

シスター・マリアの呼びかけに、わらわらと集まってくる小さな子供たち。

その数、ざっと十五人ほど。年長組はジョロと同じくらい、小さな子は三歳か四歳くらいだろうか。

(ん?あれは・・・。)

隅の方では、ミサオとジョロが先程出会ったあの男の子と少女・・・リオとミナも、壁を背にしてこちらをじっと見ている。

男の子はまだ警戒心を隠さず、少女は小さく手を振り、それに応えるようにジョロもぱたぱたと手を振り返していた。

「せっかくだし、みんなと遊んでいこうか?」

ジョロにミサオはしゃがんで声を掛ける。

「うん!あそぶっ!!ねぇねぇみんな~っ!僕ねぇ~、ナァガァイ~・・・。ジョ!」

尻尾をブンブン振りながら勢いよく名乗ろうとして、ちょっと舌を噛んでしまったジョロ。

慌てて駆け寄るムサシ。

でもそんな姿に、孤児たちの間からクスクスと笑い声が広がる。

ミサオはそんな光景を見ながら、そっとクミコの手を引いた。

「ジョロとムサシに任せて、俺達はシスターさんから話を聞かせて貰うとしようか。」

「うん、わかったわ。」

頷いたクミコと一緒に、シスター・マリアの案内で奥の部屋へ向かう。

温かみのある木の扉を開けると、簡素ながらもきちんと整えられた小さな応接室が広がっていた。

シスターは粗末なソファーに静かに腰を下ろし、対面に座った永井家夫婦の方を見ると、真剣な眼差しを向ける。

「先日の話ですが・・・この都市の城壁の外、すぐ傍にある森の手前に、食べられる草花や果実を取りに行った子供達が、闇憑きに襲われそうになるという出来事がありました。」

その声には、隠しきれない震えが滲んでいた。

「普段は街の近くで魔物なんて見かけないのに、よりにもよって闇憑き・・・しかも三体も。

後に聞いた所によると、闇憑きはゴートス種と呼ばれる魔物の変異した姿だったと。騎士でも手こずる事が予想される、危険な魔物です。」

話しながら自ら用意した、水の入ったコップを手に取り、そっと口に含むマリア。

「後で私が確認したのですが、子供達は逃げることも、叫ぶことすら出来なかったと言ってました。。

本来であれば、誰一人として生き残れない状況でもあったと容易に想像出来ます。」

青ざめた顔で話すマリア。

ミサオは拳を握りしめながら、続きを促した。

「そこに、噂の男が現れたんですね?」

「ええ。子供たちの前に立ち、巨大な炎の壁を作って、彼らを守ってくれたそうです。」

マリアの表情が、少しだけ柔らかくなる。

「その少し後に私もお会いする事が叶いましたが、実際聞いてた通りの大きな身体。でも、太っているわけじゃないんです。

白いフワフワした毛に、耳の先だけちょっとだけ黄色く色づいていていつもニコニコしていて、笑顔がとても、可愛らしくて。」

どこか恥ずかしそうに早口になるマリア。

(随分と嬉しそうに話すな。・・・てか、耳の先だけ黄色とか、白いフワフワした毛って、獣人って事か?)

ミサオは、思わず肩をすくめて苦笑する。

マリアは尚も話を続ける。

「名前を尋ねても、別に名乗るほどじゃないって。

子供たちが勝手に(でか兄)って呼んでいて・・・それで、私も(でか兄さん)と呼ぶ様になったんです。」

なぜか顔を赤らめるマリアを見ながら、ミサオは心の中で何故かガッツポーズした。

(Yes!シスターの恋心ダダ漏れじゃねぇか!この男、性根がイケメンだな! 戦える上に心優しいとか反則だろ!)

ミサオが内心悶えてるのにも構わず、更にマリアは続ける。

「今も時々、森で狩りをして、孤児院に食べ物を届けてくれるんです。みんな、でか兄さんが大好きですよ。」

(・・・みんな、ねぇ。そりゃ大好きでしょうとも!丸わかり過ぎてからかいそうになるの辛いわ!)

心の中でお腹一杯になったミサオとクミコは、深々と頭を下げた。

「教えてくれて、ありがとうございます、。

俺達も・・・そのでか兄さんに、会ってみたくなりましたよ。いずれこの都市で会える時が有るかも知れませんが、タイミングが有れば是非紹介して下さい。」

マリアは微笑みながら、何度も頷いてくれた。

だが。

笑顔でマリアと話すミサオの胸の奥には、消えない不安が、確かに広がっていく。

(この場所以外は、街が何か得体の知れない空気に覆われた様な気配だ。それだけは間違いない。)

ミサオとクミコは、息子達の方へと足早に戻っていった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

同じ頃。

上層区・辺境伯領館に隣接する王国騎士団駐留地。

騎士団長エリオット・クレバンは、槍を振るう若い団員たちを眺めながら、剣を片手に、静かに考え込んでいた。

(領内での失踪事件、不審死。只の偶然では済まされぬと思うのは気の所為だろうか・・・。)

顎髭を指で撫でながら、深く眉をひそめる。

(闇憑きの動きも不可解だ。領主ラウロ伯の行っている、万が一の為の食糧備蓄や税の引き上げも、それを理由とされれば無理からぬ事ではあるが・・・。

今一つ腑に落ちぬ。

調べを進めねばならんな。この都市だけではなく、ひいては王国にまで害を及ぼす事など絶対にあってはならん!)

重い空気を振り払うように、エリオットは再び両手で剣を握り、強く上から振り下ろした。

「ふん!」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
再び場所は城塞都市コルテオ下層区・孤児院。

壁際で警戒心たっぷりにこちらを窺うリオをよそに、ジョロは他の孤児たちとすっかり打ち解け、笑顔で話していた。いつの間にかミナもその輪に加わって居る。

「パピがね!ドドーンって、わるいの、ぜーんぶやっつけたの!

ムッちょんにーにーもね、ギルドで、三人まとめてグググって、バーンって天井まで飛ばしたんだよ!」

身振り手振りも大きく、大興奮で語るジョロ。

そこへ、リオがズイッと割って入った。

「へっ、でか兄ちゃんの方がすげ~んだぞ!

闇憑き相手にバァーッて炎の壁作って、相手は三匹だっていうのに、ニコニコ笑ってたんだ!」

負けず嫌い丸出しのリオに、ジョロも負けじと笑う。

「でもね!マミだって、負けないんだから! あのつよいパピもマミに怒られたら泣いちゃうし、マミのごはん食べたらね、ジョロ、天国にいっちゃうくらい幸せなんだから!」

ジョロは大きく胸を張った。

その様子に、孤児たちも、リオも、つい吹き出して笑った。

その横で静かに聞いていたムサシも笑いを堪えている。

貧しさも、哀しみも、一瞬だけ吹き飛ぶような、温かい空気が広がる。

「おい、ジョロ!あんまりパピ泣いちゃうとかみんなに言うのは控えような?」

冷や汗をかきながら、戻ってきたミサオがジョロを止めに入る。

結局この日は、「でか兄さん」と呼ばれる存在には会えなかったが、永井家一行は孤児たちとシスターたちに再訪を約束し、宿へと戻って行く。

・・・夜のコルテオの街は、昼間とは違いしんと静まり返っていた。

宿屋のベッドの上で、ジョロは小さな手に握りしめたお菓子を見つめながら、ぽつりと言った。

「これ、ミナちゃんが大事にとってあったお菓子なんだって。お友達の印にってジョロにくれたの。・・・また、ミナちゃんたちにあいたいなぁ。」

「うん、すぐにまた会いに行こうな。」

ミサオも、そっとジョロの頭を撫でながら、微笑んだ。

小さな出会いが、永井家の絆をさらに強くしていく。
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