家族で異世界冒険譚(ターン)!第2部 ~永井家異世界東奔西走~ 改定版

武者小路参丸

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第7話 コジロー帰還とケジメの血戦

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「・・・森に狩りにいったら、沢山の魔物がやってきてさぁ。こりゃ大漁だってんで喜んでたらあんな騒ぎだろ?

いきなりあんな大穴出来ちゃって、誰か怒られないのかなぁ・・・。ていうか、お前邪魔!バン!」


例の指鉄砲を放つと、牛モドキの眉間を正確に撃ち抜く、でか兄さん。


「フン!なんだありゃ!あのガタイ良いヤツを、いきなり一撃かよ!」


剣を振るいながら、ジェイが叫ぶ。


「何かあんな感じに近い人、前にも、見たわよね!」


矢を次々と放ちながら、サブリナも声を上げる。


「頑張って・・・ミサオの新作唐揚げ食う・・・塩!」


槍を振るいながら、ドリトスは相変わらずマイペースである。


シスターや子供達に安心するよう声をかけた後、でか兄さんは暁の牙に向き直った。


「外の魔物は、もう来ないと思うんだ。残りは街の中だけだから、早く狩らない?お腹空いちゃったよ・・・。」


「あれだけ居た魔物がか?ハハッ!そいつはちげぇねぇやっ!どうせなら呑気な兄さん、一緒にやらねぇかい?」


ジェイの呼びかけに笑顔で頷きながら、でか兄さんは静かに腕を上げ、ジェイに向かって手の平を向ける。次の瞬間――ジェイの剣が、蒼白い炎を纏った!


「俺も炎は使える方だが、コイツは良いねぇ。ほんなら決めるか――せいっ!」


ジェイの一閃!


水平に放たれた一撃は、悪魔モドキの胴をきれいに断ち切る。わずかに間を置いて、ズシリと音を立てて倒れる悪魔モドキ。切断面は炭化し、血すら流れない。


「さ、早くやっちゃって、みんなで美味しいご飯食べよう!」


陽気なでか兄さんの声が、シスターと子供達の空気を明るく染め上げた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

時は少しさかのぼり、中層階広場。 

冒険者達・騎士団・そして、クミコとジョロも合流した永井家が、右門から侵入した魔物と闇憑きの群れと激闘を繰り広げていた。


「パピッ!後ろ!」


魔物に蹴りを叩き込んだムサシが叫ぶ。


「あいよっ!・・・てか、ここまで乱戦だと、下手に広範囲魔法をぶっ放しゃあ味方に被害出るからな!ムッちょんも、抑えていけよ!」


ミサオも返しながら魔物の牙を躱す。


「パァピィ~!がんばれ~っ!ムッちょんにーにー!やっちゃえ~っ!」


「ムッちょん!無茶しちゃダメよ~!って、あぁっ!おまけしてくれたお姉さんのお店が~!」


防御魔法で守られているクミコとジョロだが、そのテンションは格闘イベントの観戦モードである。


そんな中、魔物を蹴散らしながらこちらに向かってくる騎士の姿があった。 

馬に乗り、立派な軍装をまとった男が馬から飛び降りると、ミサオに近寄る。


「専任S級冒険者、ミサオ・ナガイ殿とお見受け致す。それがし、トリニダス王国・コルテオ駐留騎士団長エリオット・クレバンと申す。此度の一件、騎士団長として忸怩たる思いもあるが、まずは礼を申し上げたい!」


迫る魔物を切り裂きながら、堂々と告げるエリオット。


「やっと会えましたね、エリオット団長。噂はこの地のギルマスからかねがね。騎士団の奮戦、さすがの一言です。日頃の団長殿の薫陶の賜物でしょう。」


ミサオも魔物の攻撃をかわしながら、言葉を交わす。


その時、伝令が駆け込んできた。


「破壊された右門からの魔物の流入は止まりました!外にも敵影無しとの報告です!」


「わかった!各門の警戒を続けつつ、外の確認も怠るな。動ける兵は上層階に向かわせろ!」


エリオットの指示が飛ぶ。


その時。

少し離れた場所で、複数の魔物に囲まれる冒険者達の姿が見えた。


(まずい!)


ミサオが駆け出そうとした瞬間。


蒼白い炎を纏った剣が、魔物の群れをまとめて斬り伏せた!


「こっちも、中々な展開だな!」


現れたのは、ジェイだった。 

その背後には、ドリトス・サブリナ・シスター・子供達が続く。


そして・・・。


「あれぇ、ムッちょん!来てたの?」


のんびりとした口調で手を振る、でか兄さんの姿があった。


「・・・相変わらずおまえは呑気だなぁ!」


ムサシが笑顔で叫ぶ!


「もしかしてあなた・・・コジョ?・・・コジョなのね!」


クミコも涙を滲ませてる。


「え、あの大っきい人、コジョにーにー?コジョにーにー!ボクね~!ジョロ~!」


精一杯アピールするコジ丸。


3人それぞれのリアクションをする姿の後ろで。


「図体でかくて、とびっきり優しくて、困ってるやついたら、一番に駆けつけて助けてやろうとするなんて。姿変わっても、性根は変わんねぇよなぁ・・・。向こうの世界じゃ、具合悪くなって3日でサヨナラしちまってよ。サンくんと俺達置いてけぼり食わせて、空高く登って逝っちまった。いずれ会えるとは思ってた。でもな、ヒック!この地で!そんな気が、じでだんだ・・・ゴジョ~、やづどあえだなぁ~!」


こらえきれず涙をボロボロ流し、顔をクシャクシャにして走り出すミサオ!


そのままでか兄さん・・・コジローを、強く強く抱きしめるミサオ!


気が付くと、クミコ・ムサシ・ジョロも・・・みんながコジローに抱きついていた。


「みんな大げさだなぁ、会えるのは、当たり前でしょ?家族なんだから!・・・みんな、ちょっと、少し、苦しいかも・・・。」


少し苦しげに、でも笑顔のコジロー。


「コイツは、また・・・永井家無敵かよっ!」


ジェイが唖然とする。


ドリトスは、笑顔で頷く。


サブリナはもらい泣きである。


剣を振るいながらのエリオットは、状況が飲み込めず、首をかしげている。


「でか兄ちゃんが・・・ジョロの・・・兄貴・・・。」


「リオ、よかったね、ジョロも、でか兄ちゃんも、よかったね!」


呆然とするリオと、再会を祝福するミナ。


シスターや他の子供達は、笑顔で見つめていた。


しかし周りを見渡せば、まだ魔物の残党はちらほらと徘徊し、上層階の状況もわからない。


急に、クミコが言う。


「あら、そういえば、暁の皆さんって、いつこっちに?」


「今それ聞く?言ったろ、俺が出かける時に。細工は流々、仕上げは御覧じろ(ごろうじろ)ってな!プランBってやつ、ちゃんと考えてますともハニー!信用出来るズッ友、頼んで転移かましてまさあ!ま、これで打ち止めとは言って無いけどね。」


ドヤ顔のミサオ。


「さあ、みんなで早く片付けて、ご飯食べよう!」


笑顔で言うコジロー。


中層区での戦いも、先が見えてきそうである。

それぞれが、次なる行動へと動き出した。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ラウロ・・・お前の想い、このセルジオ、しかと受け取った!街の人々を守るその為にも、化け物っ!貴様の息の根を・・・必ず止める!」


改めて剣を構えるセルジオ。


「ただの人間如きに、何が出来る?いくら足掻こうと、結局は絶望の中に倒れゆくのみ。愚かな!」


そう吐き捨てながら、剣を捨て、セルジオへと歩を進めるラウロ。・・・いや、ラウロの姿をした何かが人では無い異容へと変貌してゆく。


その両手の指先からは鋭い爪が伸び、口元からは獣のような牙が生えてくる。 

次第に、その姿は人とは似ても似つかない、異形のモノへと変わっていった。


だが、セルジオは一歩も退かない。


むしろ、その姿がユラユラとおぼろげに揺れ始め・・・。


刹那!


異形のモノへ、セルジオの右・左・正面と、目にも留まらぬ右手からの三連撃が放たれた!
「フンッ!」

だが、異形のモノもただの化け物ではない。

鋭い動体視力と反射神経で、それらを避けてみせた!


「こんなものか・・・王国の剣聖などと呼ばれていい気になっ・・・グアッ!」


不意に、異形のモノが叫び声を上げる!


足元には無惨にも切り落とされた左腕が転がっていた。


「ラウロならば、受け切れたであろう・・・秘剣、深淵の煌めき!」


静かに、だが確かな怒りを宿した目で見据えるセルジオ。


「貴様には、地獄すら生ぬるい!俺が、お前の存在を消滅させる!」


再び、セルジオの姿がユラユラと揺れ、その剣が、真の煌めきを放つ。

「グウウウウッ・・・。」


かつて左腕があった場所を抑え、苦しげなうめき声を漏らす異形。

そこに攻め込むセルジオ。


息もつかせぬ連撃。 

異形の身体が、みるみるうちに切り刻まれてゆく。


「そのまま、チリとなれ、化け物!」


その勢いはさらに加速し、そして。


セルジオの動きが止まる。


「・・・烈の剣、激流。」


静かに剣の血を払い、鞘に収める。

それと同時に、異形の身体が破裂したかのようにバラバラの肉片と化した。


見ていた住民達の誰もが、これで決着したと確信した。


しかし、切り刻まれた肉片がフルフルと震えだし、少しずつ一カ所へと集まっていく。


「・・・再生するのか・・・。」


振り返ったセルジオが、鋭い目で肉片の動きを注視する。


やがて、完全ではないが元の姿に近い状態まで戻った異形が、口を開いた。


「カ゚・・・グ・・・ハ・・・ハハッ、ハハハ・・・貴様ら人間如きに我が・・・ハァ、ハァ、これでは、力が足りぬか、ハァ、ハァ、ここで使うつもりはなかったが・・・。」


異形は、残った右手を天にかざし、叫んだ。


「貴様等っ!我に力を寄越せっ!」


すると、住民達を攻撃もせず立ち尽くしていた赤目の者達が、苦しみだす。

そしてその身体から、黒い霧のようなものが立ち昇り、異形の右手に吸い込まれていった。


「ハッ、ハハハッ!来た!来たぞ!終わりだ!お前たちはもう終わりだ!ハ~ッハッハッハッハッ!」


霧を取り込むごとに、異形の身体が、より分厚く、大きくなっていく!


「もうお前たちに希望はない!そのまま泣き叫び、何も出来ぬまま、死ぬがいい!」


その瞬間。


(ズウンッ!)


と響く音。


「それは・・・どうかな!」

中層区とを隔てる門の一つが、ラウロの数人の私兵と共に何かの大きな力で吹き飛ばされ、土煙の向こうから一つの集団の姿が浮かび上がる。



中層階の戦いを片付けた、永井家達の姿がそこにあった。

暁の牙、騎士団の面々も、シスターと孤児達を守りながら上層階になだれ込む。その後ろからは動ける冒険者達も現れる。


エリオットが指示を出す。


「くっ!なんだこの化け物は・・・ん! あれは、セルジオ王子! なぜこんな所に! ・・・今は時間が無い! さあ、我が国栄光の騎士達よ! 住民達を守り、 この場から速やかに避難をさせよ! 決して怪我人などは出すな! お前達の力を見せてみよ!」


あちこちで声が上がり、速やかに動き出す騎士団の面々。


異形を見据えたまま、ミサオが叫ぶ。


「専任S級冒険者より通達! この場で動ける冒険者は、それぞれ騎士団と連係し、健常な者の誘導・中層階及び下層階での避難場所の確保! 並びに、怪我人の為の救護拠点の構築! ランク上位者、積極的に指示を出せ! お前達の底力、見せてみろ!」


「応!」


高々と天に拳を突き上げ、ミサオの激に答え動き出す冒険者達。


着々と避難が進んでゆく。


「クックック、ナニヲシヨウガ、ケッカハカワラヌノニナ・・・ショセンハ、ハムシノアガキ。ムダナコトヲ・・・。」


見上げる様な大きさ、頭に二本のねじれたツノ、深紅の身体に太く長い爪を備えた両の手足の三本の指。長い舌をチロチロとさせながら、異形がつぶやく。


「その羽虫がどれ程のものか、お前に改めて教えてやろう・・・。」


セルジオの右手には、改めて剣が強く握られている。


「王子!」


セルジオの傍に、エリオットが剣を抜きながら駆けつける。


「・・・王子!この状況は一体?」


「王子はやめろ!エリオット、今の私は・・・いや俺は、只の冒険者だからな。・・・アイツは辺境伯殿の成れの果て。せめて我が一撃で、眠らせようとしたのだがな。」


寂しそうにつぶやくセルジオ。


「オモッタヨリモ、ハムシノカズカ゚・・・スコシオオイナ。グッ、グ、グォ~ッ!」


急に雄叫びを上げる異形。その声に呼応したかの様に、空から一体、又一体と降りてくる色違いの悪魔モドキの闇憑き達。


「なぁ、グラマス!」


元ラウロだった化け物と対峙するセルジオに、ミサオが後ろから声を掛ける。


「アイツと因縁あるんだろ! ・・・だったらアンタが、引導渡してやんな! それが辺境伯さんへの手向けになるだろうさ。後は・・・雑魚共は俺等で引き受ける! エリオットさん! アンタも知らない仲じゃないんだろ! 2人の精一杯の一撃、期待してるぜ!」


右手を前に突き出し、握り拳から親指を上に出してのグッジョブサインを出すミサオ。


「ミサオ、お前・・・承知!」


その場で深々と頭を下げるセルジオ。それに続くエリオット。


戦う皆が、一斉に構える。


そして、走り出す!


ケジメの血戦が今、始まる!
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