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第11話 水神の影と永井家の気配──それぞれの動き始める影
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場所は戻って深夜の宿屋。
「・・・ん!」
急に飛び起きて、ベットの上から回りを見廻すミサオ。
「ん~?どうしたの?」
眼をこすりながら、声をかけるクミコ。
「・・・いや、気のせいだ。ゴメン、起こしちゃって。」
再び眠りにつこうとする2人。
(夢、だったかな?今、家族がヤベぇ事になってる気がしたんだが・・・。)
夢の中身は思い出せないながらも、何か不安な物をミサオは感じていた。
釈然としないまま寝返りを打ち、再び目を瞑るミサオ。
・・・場所は戻り、片手にナイフで獣人の少年に襲いかかった男。
目の前の獣人の少年に、氷の盾で防がれて焦る。
隙をついて、少年が男の土手っ腹に横蹴りを一発!
少年の蹴りで黒尽くめが吹っ飛ぶ!
それを追いかけ、少年の再びの右回し蹴り!
頭に決まって、男は昏倒する。
それを見たもう一人の魔道具持ちの黒尽くめが、袋もそのままに防壁の向こうへと走り去る。
少年はすぐさま頭陀袋に近付き、袋の縄を解く。
中から、うさぎ耳の可愛い女の子が顔を出す。
口に噛まされたさるぐつわも外してやり、手足の縄も無言で外してやる少年。
「あ、あの、ありがと、ありがと、水神さま!」
泣きながらお礼を言う、うさぎ耳の少女。
「前から言ってるだろ、俺はただの獣人!魔法使えるだけの獣人!って・・・この笛、面倒くさくなる前に退散か?・・・この男締め上げて、みんなの居場所吐かせたかったのにな・・・。おい!泣いてないで早く、俺におぶされ!保護区に戻るぞ!」
(ピィ~ッ!ピィ~ッ!)
町の中に響く笛の音。近付きつつあるその音から、少年は背中に少女を背負い、逃げる様に走ってゆく。
その場には、民家の壁に背中を預けて、頭をうなだれた男が1人残された。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌朝。
「さて、飯も食ったし、デートだ、デート!」
「またそんな事言って、聞き込みでしょ、き・き・こ・み!」
じゃれ合う永井家夫婦。
ミサオはウキウキした様子で、クミコは苦笑している。
「ジョロも、デート、したい!」
「いやいや、ジョロは俺達と新しいお友達探しだろ?」
ジョロの発言をたしなめるムサシ。
「まだムッちょんにーにーにも、デートする相手いないんだぞ?ジョロはまだ・・・あ、孤児院のミナちゃん?。」
呑気ながらもムサシにサラッとイヤミを言うコジロー。
「コジョ、お前も人のことは言えないと思うぞ。さぁ、そろそろ・・・。」
ジョロの発言に対するムサシとコジローの掛け合いも終わり、みんなが頷く。
「それじゃあ永井家、行動開始!」
ミサオの号令と共に、家族は2手に分かれていった。
信徒地区の宿屋の前で別れた永井家夫婦と息子達。
永井家ブラザーズはムサシの引率で、獣人保護区の調査へ向かった。
永井家夫婦は信徒地区の次の検問・・・その先にある神官地区へと向かう。
永井家夫婦は人間だけだったからか検問をスムーズに通れたが、ミサオは首筋にチクチクとかすかな痛みを感じる。
(・・・ガキん時もあったなぁ・・・この、隠れて見ている刺すような気配。)
父親がヤクザで、実母は水商売をやっていたミサオ。
ヘタに父親が偉い役職のせいで若い衆にはヘコヘコされ、 家庭環境を知らない中学の先輩からは目をつけられ。
そんな中で、しまいには少年院送り。
荒れていた時代を、ミサオは苦々しく思い出す。
「ウチの家族は、俺が守る!」
「ん? どうしたの?」
小さくつぶやくミサオに、問いかけるクミコ。
「いや、何でも、何でもないよ!
それにしても、何ていうか。行ったことはないけど、現代世界で言うバチカンみたいな雰囲気だな、この辺りって!」
とっさにごまかすミサオ。
「そうねぇ。歩いてる人も見た感じ、神官さんや修道女さんって感じよね。
コルテオ孤児院のマリアさんも、こちらにいたんですもんね。
あ、同じ服でも色が違うのねぇ・・・役職で変わるのかしら?」
キョロキョロしている、お上りさん丸出しのクミコに苦笑しつつも、 ミサオの目と耳には余念がない。
一応、観光地にもなっている神官地区。
ちらほらと、他の土地から来たであろう人々もいるようである。
「あっちには・・・教会。・・・こっちはまた教会。何か教会多くない?」
クミコが不満そうに言う。
「まぁまぁ、そういう国だから仕方ねぇべや。
取り敢えず、行政とか扱う場所がここにあるみたいだし。スマホの動画でこの国の基盤とかも、少し頭に入れとくべきかなぁ。
お、あそこの建物、丁度(行政府)って書いてあんじゃん。行こうかね、マイハニー!」
永井家夫婦は腕を組みながら、(首都行政府)と大きく書かれた木の板を仰ぎ見つつ、石造りの建物に入る。
建物は五階建て程の、尖塔の付いた本館にくっつく形で両隣に三階建くらいの建物がある。
中に入ると、天井一面の壁画。流石、宗教国家という感じが漂う。
天井を見上げて感心するクミコ。
そこに、気配を消して近付いてくる人影。
「何か?」
人影とクミコの間にスッと立ちふさがり、でも笑顔で問うミサオ。
「これはこれは!観光でお越しになられたのですか?」
にこやかな表情で、セパレートの袖口や太ももの辺りが太くなったこの国独特の神官服を着た男が聞く。
「いや、観光半分、仕事半分といったところで。
一応、この国の事あまり詳しくないので、勉強出来たらなぁと思いましてね。
成り立ちとか、今のこの国の素晴らしさとか。・・・この前のスタンピードの件とか・・・ね?」
ニヤリと笑いながら答えるミサオ。
一瞬目をすぼめた男であったが、すぐに笑顔に戻り2人に向かって言う。
「それはそれは、立ち話もなんですし、どうぞこちらへ。
茶菓子でもつまみながら、ご説明差し上げますので。さ、どうぞどうぞ。」
先に立って何処かへ案内しようとする男。
(さて、鬼が出るか蛇が出るか。お手並み拝見ってとこかな?)
警戒している様子は見せず、ミサオはクミコに声をかける。
「それはありがたい!さ、マイハニー!楽しそうなお話、聞きに行きますかね?」
「あら?わざわざすみません!お手数ですが色々教えて下さいね!」
クミコが男に頭を下げつつ、永井家夫婦は建物の奥へと男に付いていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
場面変わって、永井家ブラザーズの3人。
信徒地区からトコトコ歩いて、獣人保護区へ向かっていた。
検問では昨日の聖騎士も見かけるが、ムサシが身分証を出すと、アゴで無言のまま保護区の方角を指し示す。
「・・・感じ悪いよなぁ。一体何様だよ?見た目が違うって、そんなにおかしなもんか?」
いつも笑顔のコジローが、珍しく不満そうに言う。
「俺も気持ちは一緒だが、あまり目立つのは感心しないな。
あくまで探りを入れるための動きなんだから。コジョ、自重してくれよ。」
引率役らしく、やや厳しめにたしなめるムサシ。
「あっ! あっちにテント、でっかいのある! 見てこよ~っと!」
ウキウキしながら駆け出すジョロ。
「あ、ジョロ待った! 急に走っちゃダメだって、ちょっと待てって!」
「そ~ゆ~年頃だわなぁ、ジョロは。」
「呑気なこと言ってないで、お前も追いかけろ!」
慌てるムサシと、呑気なコジロー。
いつもの掛け合いをしながら、ジョロの後を追う。
一つの大きなテントの前で立ち止まるジョロが、2人を振り返る。
「ねぇ、誰か泣いてるみたい・・・。」
ジョロに言われて2人の兄が耳を澄ますと、たしかにすすり泣く声が聞こえる。
2人は頷き合い、テントの入口に手をかける。
「ごめんください、・・・えっと、旅の者なんですが、少しお話をうかがいたくて・・・。」
ムサシが声を掛けて中をのぞくと、獣人たちが数人いた。
タヌキ耳。狐耳。そして・・・うさぎ耳の親子と思われる2人組。
小さな少女が母親の胸にしがみつき、すすり泣いている。
昨夜、(水神様)と呼ばれたあの少年に助けられた女の子だった。
「どちら様ですかな?」
タヌキ耳の男が立ち上がり、近づいてくる。
「初めまして。冒険者ギルド所属、C級冒険者のムサシ・ナガイと申します。
こちらは弟のコジローとコジマル。先だってのコルテオで起きたスタンピードの調査のついでに、少しばかり様子をうかがいに参りました。」
ムサシが礼儀正しく頭を下げる。
「それはそれは、ご苦労様です。見ればお若いのにC級とは中々・・・。
あぁ、私はこの保護区の長を務めております、ヘンリーと申します。」
タヌキ耳の男、ヘンリーが微笑む。見た目は好々爺である。
「・・・お取り込み中だったのでは?」
「いえ、まぁ、取り込みというより・・・。」
ムサシの言葉につられて、うさぎ耳の少女に目をやりながら、ヘンリーは言葉を濁す。
「ですがまあ、いずれ耳にされることでしょうし・・・。
おいイチカ、お客様に茶を!」
狐耳の女性に声をかけ、ヘンリーは永井家ブラザーズの3人に座る様進める。
「実は最近、この国では、子供たちの(神隠し)が相次いでおりましてな。」
鼻の下にひげを蓄えたヘンリーが、深いため息をつく。
「人間も獣人も関係無く、ある日突然いなくなる。
保護区だけでも、すでに4人。
そしてこの子、ラティファも危うく5人目になる所でした。」
「・・・逃げ出せたってことですか?」
「いえ、助けられたんですよ。(水神様)に。」
「神様? 水の?」
首をかしげるジョロ。
「名前はわかりません。ただ、この地区ではそう呼ばれておりましてな。
水や氷を操る力を持ち、何人もの子供を助けたと聞いております。
このラティファも、その一人です。」
ヘンリーの説明に、ムサシは知りたい情報を尋ねる。
「その水神様って、どんな方なんですか?」
「見たところ、歳の頃は15歳くらい。
耳は垂れた白、そこに金と茶の毛が混じっていて─
あなた方と、よく似た毛色をされていましたな。」
「!・・・貴重なお話、ありがとうございます。
これ以上お時間をいただくのも失礼かと思いますので、今日はこの辺で失礼します。」
立ち上がり、2人を促すムサシ。
「え、ムッちょん、闇憑きの調査は・・・?」
「それは又、。日を改めてだコジョ。それでは、失礼致します。
さ、コジョ、ジョロ、行くぞ!」
ムサシの声に、やや驚きつつも従う2人。
テントの外に出た永井家ブラザーズの3人。
コジョがムサシに声を掛ける。
「やっぱり気になるか?」
「なるに決まってるだろ!
永井家に関わる問題なら、最優先だ。・・・早くマミとパピに知らせなきゃな。」
ムサシはキョトンとしているジョロの手を握り、コジョを伴って信徒地区へと戻っていく。
「・・・あの子、泣いてたね。次会ったら、お話いっぱいするんだ!」
鼻息荒く、拳を握るジョロ。
「なんか、腹減ったなぁ・・・。」
コジローのいつもの口癖。
「お前はいつもそればっかりだな。けど、今日ばかりは賛成だ。
ジョロ、何食べたい?」
「ん~お肉!」
「ジョロは若いなぁ。たまには魚でもいいんだけどなぁ。」
「コジョは何でも腹一杯食えれば良いんだろ?でも、やっぱり一番は・・・やっぱりマミのご飯だな!」
ムサシの言葉に、2人も笑いながら頷いた。
一時の平和が、そこにはあった。
ワイワイ話しながら検問の愛想の悪い聖騎士の横を、ギルドカードを掲げたムサシを筆頭に、永井家ブラザーズが意気揚々と通る。
ジョロが真ん中・右手をムサシ、左手をコジロー。
並んで手を繋いで歩く姿は、端から見れば微笑ましい光景だった。
しかし、その笑顔の裏では。
「ムッちょん。」
「あぁ、気付いてる。」
お互いにジョロに笑顔を向けながら話す次兄と次長兄。
「……何、この感じ?嫌い!」
急に言いだすジョロに、びっくりする2人。
「どうした?」
「ん~、何か悪い人、近くに居る!」
聞いたムサシに、口を尖らせて答えるジョロ。
「まったく、相手が素人なのか、ジョロがすげぇのか・・・まぁ、落ち着かねえこった。」
相変わらずのコジロー。
「すぐにどうこうしてくる距離じゃ無さそうだな。取り敢えず、2人を宿で待つとしよう。」
ムサシの言葉で3人は宿屋へと戻る。
部屋に入ると、予想外にミサオとクミコが待ち構えていた。
「お、ご苦労さん! 思ったよりも早かったな! その分じゃ、飯まだだろ? マミ、みんなで外行くかい?」
ミサオが言う。
「そうねぇ、何か珍しい物ってあるのかしら? 郷土料理とか?」
抱きついて来たジョロの頭を撫でながら答えるクミコ。
「うちの王子様は、肉って言ってたっけな?」
笑顔のコジロー。
「でもパピ、外は・・・。」
「わかってる。だから、敢えてさ。ちょっくら、クンロク(説教)入れてやろうと思ってな。そんときゃ頼むぜ! C級!」
言いかけたムサシの肩を軽く叩き、笑いながら部屋のドアへと歩き出すミサオ。
外へと出た永井家一行は、町のあちらこちらを見ながら食堂を探す。
・・・離れた所には、建物の影から1人・2人・・・3人。
永井家の動きを見つめている。
商人風、市場の八百屋風、薬師風。
それぞれ市井の人間を装いながらも、その目は鋭い。
永井家が、途中の路地を曲がる。
離れた位置から互いに頷き、路地へと向かう3人。
角まで来て、1人が壁に背中を付けて、路地をのぞく。
が、しかし。
「あ! いない!」
焦る声に、慌てて路地を見る残りの2人。
巻かれたと思い、慌てて路地を走り出す。
「どしたい慌てて、落とし物かい?」
路地を走り抜けようとする3人に、後ろの方から声が掛かる。
振り返ると、家々のすき間から現れた男・・・ミサオ。
「・・・アンタ等、この国来てからハエでもあるまいし、人の近くをブンブンブンブン飛び回りやがってよぉ。」
話すミサオから、1歩、2歩と後ずさる3人。
「どこに行くつもりだ。」
振り返る3人の目に映る獣人の青年、ムサシ。
左腰の刀の鯉口は、いつでも切れる体勢で腰を落とす。
戦闘態勢。
その後ろには、クミコとジョロを守るように立つコジロー。
「気づかなきゃどって事ねぇんだが・・・。あんた等の動きは、ハッキリ言って邪魔だ。目障りだ。だから消えろ。」
淡々と言うミサオ。
商人風の男が、静かにふところに手を入れようとする。
「やめとけ!」
ムサシから声が掛かり、慌てて手を止める男。
「・・・このまま居なくなるなら、今回は見逃してやる。
でもなぁ、またその面(ツラ)ぁ見せやがったら。そん時ゃ二度と、お天道(てんと)さん拝めなくなるって、肝に銘じとけ。わかったな!」
黙ってミサオの横を走り抜けて消えてゆく3人の男達。
「ったく、一々面倒くせぇったらありゃしねぇ。
おうムッちょん、コジョ! ご苦労さん! ジョロも、マイスイートハニーも平気か? さて、飯だ飯!」
家族皆に掛け、改めての家族水入らずの外食に向かうミサオ。。
「・・・まったく、何が予約で一杯だよ、どう見たって閑古鳥鳴いてたろうよ!」
この国に来てから、不機嫌な顔が多いコジロー。
やはり獣人に対する扱いが酷いと、リアルに実感している永井家一行である。
引き戸を開け、この日3軒目の食堂の中へと入る永井家一行。
「いらっしゃーい! 5名さまですかい? じゃ、こっちのテーブルに座って! お~い! 5名様! じゃんじゃん持ってきて!」
「いやいや、あの、まだ注文・・・。」
恰幅の良い女性、女将なのだろうか、押しの強さにそれ以上言えなくなるムサシ。
「ねぇねぇ、僕達は入ってもいいの? さっきも、その前も、嫌そうな顔してたよ?」
「そうねぇ、あなた達みたいなお耳ピコピコだったりシッポフリフリが、嫌いな人も正直いるみたいね。
バッカみたい!
こんなに可愛いのにねぇ。
でもね、そんな人ばっかりじゃないの、ジョロも知ってるでしょ?
暁の人達も、リュミアちゃんも、ポポンくんやピピンちゃん、そうねぇ、エリオットさん、ギルマスにグラマス、とにかく一杯居る。このお店の人もそうかな?
だ・か・ら! ジョロは! 気にすることなんてない!
ジョロに何かありそうなら、マミがやっつけちゃう!」
胸を張るクミコ。
それを見て、深く頷く永井家の父、長兄、次兄。
「おまたせしました~!
ブーブー鳥の炒め物、ズンベラカッカのスープ、スチョーンとキンキンの煮込み、そしてこれが!
シッポもオッ立つ! 当店自慢の! スパフウパフの蒸し上げだよ!
さあ、まだまだくるよ! 腹ぁ一杯食べてくれ!」
(さ~っぱりわからん!)
内心ツッコみたいのを我慢して、ミサオが言う。
「何か、気ぃ使っていただいてありがとうございます。でも、その、俺達ご迷惑じゃ・・・?」
「な~に言ってんだい!
あたしゃねぇ、元々この国の人間じゃなくてねぇ。死んだ亭主が、ここに店構えたからここに居るだけの事、獣人がどうとか、気にゃしないよ!
それにね、うちはこの見習いが、水神様に助けて貰った口だからねぇ。
この辺でもちらほら居るみたいだよ!・・・何より、お宅んとこの子供さん達、みんな可愛いじゃないかい!
そうだろう、旦那?」
キップの良い女将の啖呵に、一同惚れ惚れする。
「水の神様・・・ラティファちゃん。」
「どうした、ジョロ?」
下を向いてつぶやくジョロを心配するミサオ。その姿を見て、ここぞとばかり獣人保護区での顛末を説明するムサシとコジロー。
「水と、氷、ねぇ? それって?」
「そう先走るなってマミ。まだ何も決まったわけじゃねぇさ。ただ・・・。」
「ただ?」
「アイツだったら、らしいじゃん? 風呂、好きだったし!」
「そうねぇ、シャワーにも自分から浴びに来て! おかしいわよねぇ。」
2人で盛り上がるミサオとクミコ。
その時、ジョロが話し出す。
「パピ、マミ! ・・・あのね、テントの中でね、ラティファちゃん、泣いてたの。
水の神様に助けてもらって、お母さんに会えたのに、ずっとず~っと泣いてたの。
・・・怖かったんだよね。
僕、怖い思いさせたやつ嫌い! 女の子泣かせるやつ、ダメッ!
だから、僕、僕・・・。」
一生懸命話すジョロを、立ち上がり抱きしめるミサオ。
「そうだ、それでいい。」
それ以上の言葉は要らなかった。
ミサオは思っている。
ジョロもしっかり永井家であると。
「それはそうとさぁ、パピとマミの首尾は?」
コジローの的確なツッコミに、夫婦思わず声をそろえて・・・。
「その話、忘れてた!」
子供達が笑いだす。つられて、ミサオとクミコも笑いだす。
外食は、もう少し長引きそうな気配である。
「・・・ん!」
急に飛び起きて、ベットの上から回りを見廻すミサオ。
「ん~?どうしたの?」
眼をこすりながら、声をかけるクミコ。
「・・・いや、気のせいだ。ゴメン、起こしちゃって。」
再び眠りにつこうとする2人。
(夢、だったかな?今、家族がヤベぇ事になってる気がしたんだが・・・。)
夢の中身は思い出せないながらも、何か不安な物をミサオは感じていた。
釈然としないまま寝返りを打ち、再び目を瞑るミサオ。
・・・場所は戻り、片手にナイフで獣人の少年に襲いかかった男。
目の前の獣人の少年に、氷の盾で防がれて焦る。
隙をついて、少年が男の土手っ腹に横蹴りを一発!
少年の蹴りで黒尽くめが吹っ飛ぶ!
それを追いかけ、少年の再びの右回し蹴り!
頭に決まって、男は昏倒する。
それを見たもう一人の魔道具持ちの黒尽くめが、袋もそのままに防壁の向こうへと走り去る。
少年はすぐさま頭陀袋に近付き、袋の縄を解く。
中から、うさぎ耳の可愛い女の子が顔を出す。
口に噛まされたさるぐつわも外してやり、手足の縄も無言で外してやる少年。
「あ、あの、ありがと、ありがと、水神さま!」
泣きながらお礼を言う、うさぎ耳の少女。
「前から言ってるだろ、俺はただの獣人!魔法使えるだけの獣人!って・・・この笛、面倒くさくなる前に退散か?・・・この男締め上げて、みんなの居場所吐かせたかったのにな・・・。おい!泣いてないで早く、俺におぶされ!保護区に戻るぞ!」
(ピィ~ッ!ピィ~ッ!)
町の中に響く笛の音。近付きつつあるその音から、少年は背中に少女を背負い、逃げる様に走ってゆく。
その場には、民家の壁に背中を預けて、頭をうなだれた男が1人残された。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌朝。
「さて、飯も食ったし、デートだ、デート!」
「またそんな事言って、聞き込みでしょ、き・き・こ・み!」
じゃれ合う永井家夫婦。
ミサオはウキウキした様子で、クミコは苦笑している。
「ジョロも、デート、したい!」
「いやいや、ジョロは俺達と新しいお友達探しだろ?」
ジョロの発言をたしなめるムサシ。
「まだムッちょんにーにーにも、デートする相手いないんだぞ?ジョロはまだ・・・あ、孤児院のミナちゃん?。」
呑気ながらもムサシにサラッとイヤミを言うコジロー。
「コジョ、お前も人のことは言えないと思うぞ。さぁ、そろそろ・・・。」
ジョロの発言に対するムサシとコジローの掛け合いも終わり、みんなが頷く。
「それじゃあ永井家、行動開始!」
ミサオの号令と共に、家族は2手に分かれていった。
信徒地区の宿屋の前で別れた永井家夫婦と息子達。
永井家ブラザーズはムサシの引率で、獣人保護区の調査へ向かった。
永井家夫婦は信徒地区の次の検問・・・その先にある神官地区へと向かう。
永井家夫婦は人間だけだったからか検問をスムーズに通れたが、ミサオは首筋にチクチクとかすかな痛みを感じる。
(・・・ガキん時もあったなぁ・・・この、隠れて見ている刺すような気配。)
父親がヤクザで、実母は水商売をやっていたミサオ。
ヘタに父親が偉い役職のせいで若い衆にはヘコヘコされ、 家庭環境を知らない中学の先輩からは目をつけられ。
そんな中で、しまいには少年院送り。
荒れていた時代を、ミサオは苦々しく思い出す。
「ウチの家族は、俺が守る!」
「ん? どうしたの?」
小さくつぶやくミサオに、問いかけるクミコ。
「いや、何でも、何でもないよ!
それにしても、何ていうか。行ったことはないけど、現代世界で言うバチカンみたいな雰囲気だな、この辺りって!」
とっさにごまかすミサオ。
「そうねぇ。歩いてる人も見た感じ、神官さんや修道女さんって感じよね。
コルテオ孤児院のマリアさんも、こちらにいたんですもんね。
あ、同じ服でも色が違うのねぇ・・・役職で変わるのかしら?」
キョロキョロしている、お上りさん丸出しのクミコに苦笑しつつも、 ミサオの目と耳には余念がない。
一応、観光地にもなっている神官地区。
ちらほらと、他の土地から来たであろう人々もいるようである。
「あっちには・・・教会。・・・こっちはまた教会。何か教会多くない?」
クミコが不満そうに言う。
「まぁまぁ、そういう国だから仕方ねぇべや。
取り敢えず、行政とか扱う場所がここにあるみたいだし。スマホの動画でこの国の基盤とかも、少し頭に入れとくべきかなぁ。
お、あそこの建物、丁度(行政府)って書いてあんじゃん。行こうかね、マイハニー!」
永井家夫婦は腕を組みながら、(首都行政府)と大きく書かれた木の板を仰ぎ見つつ、石造りの建物に入る。
建物は五階建て程の、尖塔の付いた本館にくっつく形で両隣に三階建くらいの建物がある。
中に入ると、天井一面の壁画。流石、宗教国家という感じが漂う。
天井を見上げて感心するクミコ。
そこに、気配を消して近付いてくる人影。
「何か?」
人影とクミコの間にスッと立ちふさがり、でも笑顔で問うミサオ。
「これはこれは!観光でお越しになられたのですか?」
にこやかな表情で、セパレートの袖口や太ももの辺りが太くなったこの国独特の神官服を着た男が聞く。
「いや、観光半分、仕事半分といったところで。
一応、この国の事あまり詳しくないので、勉強出来たらなぁと思いましてね。
成り立ちとか、今のこの国の素晴らしさとか。・・・この前のスタンピードの件とか・・・ね?」
ニヤリと笑いながら答えるミサオ。
一瞬目をすぼめた男であったが、すぐに笑顔に戻り2人に向かって言う。
「それはそれは、立ち話もなんですし、どうぞこちらへ。
茶菓子でもつまみながら、ご説明差し上げますので。さ、どうぞどうぞ。」
先に立って何処かへ案内しようとする男。
(さて、鬼が出るか蛇が出るか。お手並み拝見ってとこかな?)
警戒している様子は見せず、ミサオはクミコに声をかける。
「それはありがたい!さ、マイハニー!楽しそうなお話、聞きに行きますかね?」
「あら?わざわざすみません!お手数ですが色々教えて下さいね!」
クミコが男に頭を下げつつ、永井家夫婦は建物の奥へと男に付いていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
場面変わって、永井家ブラザーズの3人。
信徒地区からトコトコ歩いて、獣人保護区へ向かっていた。
検問では昨日の聖騎士も見かけるが、ムサシが身分証を出すと、アゴで無言のまま保護区の方角を指し示す。
「・・・感じ悪いよなぁ。一体何様だよ?見た目が違うって、そんなにおかしなもんか?」
いつも笑顔のコジローが、珍しく不満そうに言う。
「俺も気持ちは一緒だが、あまり目立つのは感心しないな。
あくまで探りを入れるための動きなんだから。コジョ、自重してくれよ。」
引率役らしく、やや厳しめにたしなめるムサシ。
「あっ! あっちにテント、でっかいのある! 見てこよ~っと!」
ウキウキしながら駆け出すジョロ。
「あ、ジョロ待った! 急に走っちゃダメだって、ちょっと待てって!」
「そ~ゆ~年頃だわなぁ、ジョロは。」
「呑気なこと言ってないで、お前も追いかけろ!」
慌てるムサシと、呑気なコジロー。
いつもの掛け合いをしながら、ジョロの後を追う。
一つの大きなテントの前で立ち止まるジョロが、2人を振り返る。
「ねぇ、誰か泣いてるみたい・・・。」
ジョロに言われて2人の兄が耳を澄ますと、たしかにすすり泣く声が聞こえる。
2人は頷き合い、テントの入口に手をかける。
「ごめんください、・・・えっと、旅の者なんですが、少しお話をうかがいたくて・・・。」
ムサシが声を掛けて中をのぞくと、獣人たちが数人いた。
タヌキ耳。狐耳。そして・・・うさぎ耳の親子と思われる2人組。
小さな少女が母親の胸にしがみつき、すすり泣いている。
昨夜、(水神様)と呼ばれたあの少年に助けられた女の子だった。
「どちら様ですかな?」
タヌキ耳の男が立ち上がり、近づいてくる。
「初めまして。冒険者ギルド所属、C級冒険者のムサシ・ナガイと申します。
こちらは弟のコジローとコジマル。先だってのコルテオで起きたスタンピードの調査のついでに、少しばかり様子をうかがいに参りました。」
ムサシが礼儀正しく頭を下げる。
「それはそれは、ご苦労様です。見ればお若いのにC級とは中々・・・。
あぁ、私はこの保護区の長を務めております、ヘンリーと申します。」
タヌキ耳の男、ヘンリーが微笑む。見た目は好々爺である。
「・・・お取り込み中だったのでは?」
「いえ、まぁ、取り込みというより・・・。」
ムサシの言葉につられて、うさぎ耳の少女に目をやりながら、ヘンリーは言葉を濁す。
「ですがまあ、いずれ耳にされることでしょうし・・・。
おいイチカ、お客様に茶を!」
狐耳の女性に声をかけ、ヘンリーは永井家ブラザーズの3人に座る様進める。
「実は最近、この国では、子供たちの(神隠し)が相次いでおりましてな。」
鼻の下にひげを蓄えたヘンリーが、深いため息をつく。
「人間も獣人も関係無く、ある日突然いなくなる。
保護区だけでも、すでに4人。
そしてこの子、ラティファも危うく5人目になる所でした。」
「・・・逃げ出せたってことですか?」
「いえ、助けられたんですよ。(水神様)に。」
「神様? 水の?」
首をかしげるジョロ。
「名前はわかりません。ただ、この地区ではそう呼ばれておりましてな。
水や氷を操る力を持ち、何人もの子供を助けたと聞いております。
このラティファも、その一人です。」
ヘンリーの説明に、ムサシは知りたい情報を尋ねる。
「その水神様って、どんな方なんですか?」
「見たところ、歳の頃は15歳くらい。
耳は垂れた白、そこに金と茶の毛が混じっていて─
あなた方と、よく似た毛色をされていましたな。」
「!・・・貴重なお話、ありがとうございます。
これ以上お時間をいただくのも失礼かと思いますので、今日はこの辺で失礼します。」
立ち上がり、2人を促すムサシ。
「え、ムッちょん、闇憑きの調査は・・・?」
「それは又、。日を改めてだコジョ。それでは、失礼致します。
さ、コジョ、ジョロ、行くぞ!」
ムサシの声に、やや驚きつつも従う2人。
テントの外に出た永井家ブラザーズの3人。
コジョがムサシに声を掛ける。
「やっぱり気になるか?」
「なるに決まってるだろ!
永井家に関わる問題なら、最優先だ。・・・早くマミとパピに知らせなきゃな。」
ムサシはキョトンとしているジョロの手を握り、コジョを伴って信徒地区へと戻っていく。
「・・・あの子、泣いてたね。次会ったら、お話いっぱいするんだ!」
鼻息荒く、拳を握るジョロ。
「なんか、腹減ったなぁ・・・。」
コジローのいつもの口癖。
「お前はいつもそればっかりだな。けど、今日ばかりは賛成だ。
ジョロ、何食べたい?」
「ん~お肉!」
「ジョロは若いなぁ。たまには魚でもいいんだけどなぁ。」
「コジョは何でも腹一杯食えれば良いんだろ?でも、やっぱり一番は・・・やっぱりマミのご飯だな!」
ムサシの言葉に、2人も笑いながら頷いた。
一時の平和が、そこにはあった。
ワイワイ話しながら検問の愛想の悪い聖騎士の横を、ギルドカードを掲げたムサシを筆頭に、永井家ブラザーズが意気揚々と通る。
ジョロが真ん中・右手をムサシ、左手をコジロー。
並んで手を繋いで歩く姿は、端から見れば微笑ましい光景だった。
しかし、その笑顔の裏では。
「ムッちょん。」
「あぁ、気付いてる。」
お互いにジョロに笑顔を向けながら話す次兄と次長兄。
「……何、この感じ?嫌い!」
急に言いだすジョロに、びっくりする2人。
「どうした?」
「ん~、何か悪い人、近くに居る!」
聞いたムサシに、口を尖らせて答えるジョロ。
「まったく、相手が素人なのか、ジョロがすげぇのか・・・まぁ、落ち着かねえこった。」
相変わらずのコジロー。
「すぐにどうこうしてくる距離じゃ無さそうだな。取り敢えず、2人を宿で待つとしよう。」
ムサシの言葉で3人は宿屋へと戻る。
部屋に入ると、予想外にミサオとクミコが待ち構えていた。
「お、ご苦労さん! 思ったよりも早かったな! その分じゃ、飯まだだろ? マミ、みんなで外行くかい?」
ミサオが言う。
「そうねぇ、何か珍しい物ってあるのかしら? 郷土料理とか?」
抱きついて来たジョロの頭を撫でながら答えるクミコ。
「うちの王子様は、肉って言ってたっけな?」
笑顔のコジロー。
「でもパピ、外は・・・。」
「わかってる。だから、敢えてさ。ちょっくら、クンロク(説教)入れてやろうと思ってな。そんときゃ頼むぜ! C級!」
言いかけたムサシの肩を軽く叩き、笑いながら部屋のドアへと歩き出すミサオ。
外へと出た永井家一行は、町のあちらこちらを見ながら食堂を探す。
・・・離れた所には、建物の影から1人・2人・・・3人。
永井家の動きを見つめている。
商人風、市場の八百屋風、薬師風。
それぞれ市井の人間を装いながらも、その目は鋭い。
永井家が、途中の路地を曲がる。
離れた位置から互いに頷き、路地へと向かう3人。
角まで来て、1人が壁に背中を付けて、路地をのぞく。
が、しかし。
「あ! いない!」
焦る声に、慌てて路地を見る残りの2人。
巻かれたと思い、慌てて路地を走り出す。
「どしたい慌てて、落とし物かい?」
路地を走り抜けようとする3人に、後ろの方から声が掛かる。
振り返ると、家々のすき間から現れた男・・・ミサオ。
「・・・アンタ等、この国来てからハエでもあるまいし、人の近くをブンブンブンブン飛び回りやがってよぉ。」
話すミサオから、1歩、2歩と後ずさる3人。
「どこに行くつもりだ。」
振り返る3人の目に映る獣人の青年、ムサシ。
左腰の刀の鯉口は、いつでも切れる体勢で腰を落とす。
戦闘態勢。
その後ろには、クミコとジョロを守るように立つコジロー。
「気づかなきゃどって事ねぇんだが・・・。あんた等の動きは、ハッキリ言って邪魔だ。目障りだ。だから消えろ。」
淡々と言うミサオ。
商人風の男が、静かにふところに手を入れようとする。
「やめとけ!」
ムサシから声が掛かり、慌てて手を止める男。
「・・・このまま居なくなるなら、今回は見逃してやる。
でもなぁ、またその面(ツラ)ぁ見せやがったら。そん時ゃ二度と、お天道(てんと)さん拝めなくなるって、肝に銘じとけ。わかったな!」
黙ってミサオの横を走り抜けて消えてゆく3人の男達。
「ったく、一々面倒くせぇったらありゃしねぇ。
おうムッちょん、コジョ! ご苦労さん! ジョロも、マイスイートハニーも平気か? さて、飯だ飯!」
家族皆に掛け、改めての家族水入らずの外食に向かうミサオ。。
「・・・まったく、何が予約で一杯だよ、どう見たって閑古鳥鳴いてたろうよ!」
この国に来てから、不機嫌な顔が多いコジロー。
やはり獣人に対する扱いが酷いと、リアルに実感している永井家一行である。
引き戸を開け、この日3軒目の食堂の中へと入る永井家一行。
「いらっしゃーい! 5名さまですかい? じゃ、こっちのテーブルに座って! お~い! 5名様! じゃんじゃん持ってきて!」
「いやいや、あの、まだ注文・・・。」
恰幅の良い女性、女将なのだろうか、押しの強さにそれ以上言えなくなるムサシ。
「ねぇねぇ、僕達は入ってもいいの? さっきも、その前も、嫌そうな顔してたよ?」
「そうねぇ、あなた達みたいなお耳ピコピコだったりシッポフリフリが、嫌いな人も正直いるみたいね。
バッカみたい!
こんなに可愛いのにねぇ。
でもね、そんな人ばっかりじゃないの、ジョロも知ってるでしょ?
暁の人達も、リュミアちゃんも、ポポンくんやピピンちゃん、そうねぇ、エリオットさん、ギルマスにグラマス、とにかく一杯居る。このお店の人もそうかな?
だ・か・ら! ジョロは! 気にすることなんてない!
ジョロに何かありそうなら、マミがやっつけちゃう!」
胸を張るクミコ。
それを見て、深く頷く永井家の父、長兄、次兄。
「おまたせしました~!
ブーブー鳥の炒め物、ズンベラカッカのスープ、スチョーンとキンキンの煮込み、そしてこれが!
シッポもオッ立つ! 当店自慢の! スパフウパフの蒸し上げだよ!
さあ、まだまだくるよ! 腹ぁ一杯食べてくれ!」
(さ~っぱりわからん!)
内心ツッコみたいのを我慢して、ミサオが言う。
「何か、気ぃ使っていただいてありがとうございます。でも、その、俺達ご迷惑じゃ・・・?」
「な~に言ってんだい!
あたしゃねぇ、元々この国の人間じゃなくてねぇ。死んだ亭主が、ここに店構えたからここに居るだけの事、獣人がどうとか、気にゃしないよ!
それにね、うちはこの見習いが、水神様に助けて貰った口だからねぇ。
この辺でもちらほら居るみたいだよ!・・・何より、お宅んとこの子供さん達、みんな可愛いじゃないかい!
そうだろう、旦那?」
キップの良い女将の啖呵に、一同惚れ惚れする。
「水の神様・・・ラティファちゃん。」
「どうした、ジョロ?」
下を向いてつぶやくジョロを心配するミサオ。その姿を見て、ここぞとばかり獣人保護区での顛末を説明するムサシとコジロー。
「水と、氷、ねぇ? それって?」
「そう先走るなってマミ。まだ何も決まったわけじゃねぇさ。ただ・・・。」
「ただ?」
「アイツだったら、らしいじゃん? 風呂、好きだったし!」
「そうねぇ、シャワーにも自分から浴びに来て! おかしいわよねぇ。」
2人で盛り上がるミサオとクミコ。
その時、ジョロが話し出す。
「パピ、マミ! ・・・あのね、テントの中でね、ラティファちゃん、泣いてたの。
水の神様に助けてもらって、お母さんに会えたのに、ずっとず~っと泣いてたの。
・・・怖かったんだよね。
僕、怖い思いさせたやつ嫌い! 女の子泣かせるやつ、ダメッ!
だから、僕、僕・・・。」
一生懸命話すジョロを、立ち上がり抱きしめるミサオ。
「そうだ、それでいい。」
それ以上の言葉は要らなかった。
ミサオは思っている。
ジョロもしっかり永井家であると。
「それはそうとさぁ、パピとマミの首尾は?」
コジローの的確なツッコミに、夫婦思わず声をそろえて・・・。
「その話、忘れてた!」
子供達が笑いだす。つられて、ミサオとクミコも笑いだす。
外食は、もう少し長引きそうな気配である。
4
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