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第4章 貫く瞳は常より眩しく
15話
しおりを挟む葦の葉のように賑わう街。ただの交差点なのに、観光名所としても名を馳せるスクランブル交差点の白線は、今日もあまり意味をなしていないように思える。それでも秩序を保っている様は、この島国の美点かもしれない。
「わぁ……すごい人……」
岬は初めて訪れたセンター街に目を見張った。
「なんだってこんなに人が多いんだ」
隣で腕を組んでいる厘は、ごった返す人の波に顔をしかめる。郊外にしか住んだことのない岬たちにとっては、異世界と相違なかった。
「俺様くらいになりゃあ、こんくらい賑わってる方がしっくりくるらぁ」
「……大体、なんでこいつも連れて来たんだ。岬」
う、と口籠りながら、岬は一歩前で目を輝かせている庵を見据えた。
彼との出会いから、ちょうど一週間。
夕飯を共にした日から、庵は岬の住むアパートの屋根を寝床に暮らしていた。手狭な1DKで厘と隣り合わせ、というのはあの一泊で懲りたようで、庵曰く外の方が落ち着くらしい。
それでも、夕飯に誘えば『食ってやらなくもない』と鼻を擦りながらやって来る。妖花同士の仲は相変わらずだったが、生まれた頃から母と二人きりの岬にとって、良くも悪くも騒がしい食卓は新鮮だった。———毎日、放課後を向かえる度に足が弾んだ。
「実はね。……こんな風に出かけてみたかったんだ。えっと、二人に買ってあげたいものもあるし」
やっぱり私、今日も浮足立ってる。頬を赤らめて視線を落とす岬に、厘はため息をついた。
「……まぁいい。用を済ませたらすぐに帰るぞ」
「うんっ」
軽めのため息が頭上を撫でる。不機嫌ながら、結局はしっかりと付き合ってくれる厘の優しさが好きだった。すっかり秋の空に見合う羽織に笑みを零し、岬は先を歩く彼を追った。
『厘はとことん岬に甘いね』
「そ、そうかな……」
『うん。なんていうか、特別って感じ』
特別———汐織の言葉を反芻する。同じ相槌を繰り返しながら、それは母も同じであることを戒める。これまで一緒に暮らしてきた家族だから、に違いない。どうしてか、指先から電流が走った。
「オイ。俺を置いてくな」
「なんだ庵。はぐれるのが怖いだなんて、可愛い所があるじゃないか」
「バカ野郎、怖くなんてねぇ!」
「強がらなくてもいい。その方が通俗的で馴染んでいるぞ」
ほくそ笑む厘と、喚き続ける庵。かち合う二人の横顔を見据えながら、岬は未知の感情に首を捻っていた。
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