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Mission2 お祖母様を救え!
44.おばあちゃん子
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ライース兄様の叱責が飛んだ。
「アタタ……。お許しください。若様、痛いです。髪を……そんなに強く引っ張らないでください」
カルティのまとめられた後ろ髪をライース兄様がむずっとつかんで、思いっきりひっぱりあげていた。
ライース兄様ってば、手加減なしだ。
うん、あれは痛そうだ……。
絶対に痛いだろう。
見ているあたしも痛くなってきた。
カルティの目には涙が浮かんでいるよ。
「カルティ、下ばかり見るな。ちゃんと正面を見据えろ!」
「はい……」
カルティの顔が正面を向いた時点で、ライース兄様はぱっとその手を離す。
乱れた髪を手で直しながら、カルティは姿勢を正した。
「おまえは、一流のアドルミデーラ家で、一流の教育を受けた、アドルミデーラ家の従者だ。もっと自信を持て。アドルミデーラ家に選ばれた一流の従者であることを誇れ。堂々としていろ」
何回『一流』って言ってます?
少し、ライース兄様の口調が刺々しいような気もするけど、あたしが言いたかったことをライース兄様がフォローしてくれた。
さすが、ライース兄様だ。
「カルティは素敵な従者になれるよ」
がんばってね、という気持ちをめいっぱいに込めて、あたしはカルティを見上げる。
「わ、わ、わかりました」
顔を真赤に染め上げたまま、カルティはコクコクと頷く。
その勢いで、後ろで一つにまとめられた髪がぴょこぴょこと馬の尻尾のように跳ねている。
……本編では、すごく捻くれて扱いにくいのに、幼いカルティは正反対の性格をしている。この素直さと反応は可愛すぎる。
いつまでも愛でていたい。
というか、このままの状態で育って欲しい。
食器の片付けを再開したカルティを、あたしは生暖かい目線で見守る。
カルティって、すごい『おばあちゃん子』なんだな――と、改めて実感する。
あたしにとって、お祖母様はヒトとして尊敬する対象だけど、血縁関係者としては……ちょっと怖い。
あたしは実母の身分が低かったこともあったし、正妻から隠れるようにして息を殺して生きていたので、貴族としての教育はさほど受けることができなかった。
正妻の妨害で、支給品も滞り、さほどよい暮らしもしていない。
身分が低いお母様はそれが当然と思っていたようで、あえて現状を父上に訴えることはしなかった。
下手に訴えて、さらに嫌がらせの度合いが酷くなっても困る……とでも思ったのだろうか。
言葉遣いもこんなんだし、礼儀作法もなってなくて、あたしを見たお祖母様は頭を抱え込んでしまったくらいだ。
今は体調を崩されてちょっぴり控えめになったけど、最初の頃はマナーがなってない、とビシバシ怒られた。
その厳しさが刷り込まれているから、お祖母様に対する苦手意識が消えないでいる。
ま、前世を思い出した今なら、貴族世界で生きていくにはあまりにも未熟すぎるあたしに、お祖母様はあせりと責任を感じたのだろう。
「アタタ……。お許しください。若様、痛いです。髪を……そんなに強く引っ張らないでください」
カルティのまとめられた後ろ髪をライース兄様がむずっとつかんで、思いっきりひっぱりあげていた。
ライース兄様ってば、手加減なしだ。
うん、あれは痛そうだ……。
絶対に痛いだろう。
見ているあたしも痛くなってきた。
カルティの目には涙が浮かんでいるよ。
「カルティ、下ばかり見るな。ちゃんと正面を見据えろ!」
「はい……」
カルティの顔が正面を向いた時点で、ライース兄様はぱっとその手を離す。
乱れた髪を手で直しながら、カルティは姿勢を正した。
「おまえは、一流のアドルミデーラ家で、一流の教育を受けた、アドルミデーラ家の従者だ。もっと自信を持て。アドルミデーラ家に選ばれた一流の従者であることを誇れ。堂々としていろ」
何回『一流』って言ってます?
少し、ライース兄様の口調が刺々しいような気もするけど、あたしが言いたかったことをライース兄様がフォローしてくれた。
さすが、ライース兄様だ。
「カルティは素敵な従者になれるよ」
がんばってね、という気持ちをめいっぱいに込めて、あたしはカルティを見上げる。
「わ、わ、わかりました」
顔を真赤に染め上げたまま、カルティはコクコクと頷く。
その勢いで、後ろで一つにまとめられた髪がぴょこぴょこと馬の尻尾のように跳ねている。
……本編では、すごく捻くれて扱いにくいのに、幼いカルティは正反対の性格をしている。この素直さと反応は可愛すぎる。
いつまでも愛でていたい。
というか、このままの状態で育って欲しい。
食器の片付けを再開したカルティを、あたしは生暖かい目線で見守る。
カルティって、すごい『おばあちゃん子』なんだな――と、改めて実感する。
あたしにとって、お祖母様はヒトとして尊敬する対象だけど、血縁関係者としては……ちょっと怖い。
あたしは実母の身分が低かったこともあったし、正妻から隠れるようにして息を殺して生きていたので、貴族としての教育はさほど受けることができなかった。
正妻の妨害で、支給品も滞り、さほどよい暮らしもしていない。
身分が低いお母様はそれが当然と思っていたようで、あえて現状を父上に訴えることはしなかった。
下手に訴えて、さらに嫌がらせの度合いが酷くなっても困る……とでも思ったのだろうか。
言葉遣いもこんなんだし、礼儀作法もなってなくて、あたしを見たお祖母様は頭を抱え込んでしまったくらいだ。
今は体調を崩されてちょっぴり控えめになったけど、最初の頃はマナーがなってない、とビシバシ怒られた。
その厳しさが刷り込まれているから、お祖母様に対する苦手意識が消えないでいる。
ま、前世を思い出した今なら、貴族世界で生きていくにはあまりにも未熟すぎるあたしに、お祖母様はあせりと責任を感じたのだろう。
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