転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす

のりのりの

文字の大きさ
92 / 132
Mission3 お祖母様を救え!

92.機械仕掛けの鳥

しおりを挟む
 書いては読み返して、さらに文字を書き加え、ときには訂正線を引いて書き直したりしながら、ライース兄様は手紙を書き上げる。

 よほど急いでいるのか、手紙を清書することなく、そのまま紙を折って封印を施してしまった。封印も身内でのやり取りを主とした略式タイプだ。

 ライース兄様はきびきびとした動作で席を立ち、鍵付き戸棚の前に移動する。
 いくつかの複雑な操作の後に扉を開けて、棚の中から鳥の置物をとりだしていた。
 鳥の大きさは……前世の鳥でいうところの鳩くらいか。
 
 鍵付き戸棚の中にしまわれていたのは、機械仕掛けの鳥だった。
 からくり人形ならぬ、からくり鳥だ。

 この鳥には見覚えがある。
 フレンドからメッセージやギフトが届いたときに、画面に表示される通知アイコンが、この機械仕掛けの鳥なのだ。

 ちょっとふざけたような表情をしており、そのアイコンをみるたびにほっこりしたのだが……こちらの世界で実際に立体化されたものを目にすると、あまり可愛げのない、歯車やゼンマイで動く鳥型のオブジェだった。

 ライース兄様は、慣れた手つきで鳥の右足にセットされている筒の中にさきほどの紙を入れると、筒の蓋を閉める。
 そして、鳥の額にはめ込まれている魔精石に己の指先を当てる。

 しばらくすると鳥の目に光が灯り、羽がバサバサと音をたてて動きはじめた。
 機械仕掛けの鳥は、ライース兄様の魔力が充填されて動き始める。
 バサバサと煩い羽音をたてながら羽ばたくと、ライース兄様の肩に止まった。

 部屋の窓を開け、機械仕掛けの鳥に向かって「デイラル先生のところへ」とライース兄様が言うと、鳥は飛び立ち、窓から外の空へと飛んでいった。

 これがこの世界の情報伝達手段である。

 機械仕掛けの鳥に魔精石を埋め込み、それを動力源にして動かしているのだ。
 このようなものが作れるのなら、ロボットや、それこそ人間を乗せて空を飛ぶ機械仕掛けの乗り物とか、地上を高速で走る機械仕掛けの乗り物が作れそうなのだが……。
 それはそれ、これはこれ、というらしく、そういう便利乗り物は、ゲームにも、そして、この世界にも存在しない。

 鳥に使用されている魔精石は、とても小さなサイズで、大量の魔力を含む純度の高いものらしい。
 そのような魔精石はびっくりするくらい高額で、産出量も少ないらしい。

 外側だけは作れても、それを動かすことができるだけの動力源――魔精石――が手に入らない、存在すらしていないから実用化は不可能ということなんだろう。

 なので、あの鳥もすぐに壊れてしまいそうな玩具っぽく見えるけど、めっちゃくっちゃ高額で貴重な魔導具なのだ。

 なので、急ぎでもない場合や、一般の人などは、人力……ようは、飛脚だったり、荷馬車だったりでやりとりする。

 入手困難な人気魔導具なので、登録しておいた相手に手紙を運ぶという本来の機能以外にも、盗難防止機能やら攻撃に対する反撃機能なども備えている。
 よって、さらに値段は高くなるし、魔精石も高品質な物が必要となってくる。

 王家はもちろんだけど、アドルミデーラ家を始めとする上級貴族たちが使用している機械仕掛けの鳥は、そこらの騎士よりも強い戦闘力を持ち、機密文書をやりとりしているという、なんとも奇妙で矛盾した世界設定となっていた。

「デイラル先生にお祖母様の様子を伝えておいた。すぐに駆けつけてくださって、適切な処置をしてくださるだろう」

 鳥が戻って来られるように窓は開けたままの状態で、ライース兄様はあたしの隣に座る。ゆっくりとあたしの頭を撫でる。

「大丈夫。デイラル先生は名医だ。今まで、たくさんの病気を治してこられたかただ。先生さえ来てくだされば、お祖母様は大丈夫だ」

 ライース兄様は自分自身に言い聞かせるかのように何度も何度も「大丈夫だ」を繰り返す。

 あたしの胸がズキンと痛む。

 ライース兄様だけじゃない。
 カルティだけじゃない。
 この屋敷にいる使用人たちはみんな、お祖母様が回復されることを願っている。
 もちろん、あたしもだ。

 この世界が本当に『キミツバ』の世界であるならば、願うだけでは死亡イベは回避できない。
 行動を選択しないといけない。
 でも、それでも、やっぱり、願わずにはいられない。

(お祖母様は元気になる。お祖母様は大丈夫だ)

 あたしとライース兄様はソファに座り、デイラル先生が到着するのをひたすら待ち続けたのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

何やってんのヒロイン

ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。 自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。 始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・ それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。 そんな中とうとうヒロインが入学する年に。 ・・・え、ヒロイン何してくれてんの? ※本編・番外編完結。小話待ち。

モブとか知らないし婚約破棄も知らない

monaca
恋愛
病弱だったわたしは生まれかわりました。 モブ? わかりませんが、この婚約はお受けいたします。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。 ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。 小説家になろう様でも投稿しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...