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Mission3 お祖母様を救え!
113.溺れた少女の記憶
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「カルティ! 火だ! もっと火をおこせ!」
「は、はいっ」
「毛布はこれだけか? 着替えはないのか?」
「はい。申し訳ございません。まさか、このようなことになるとは思ってもいなかったので、お着換えまでは……」
「そうだよな。まさか、こんなことになるなんて……。くそっ! とにかく、火だ!」
「薪をくべろ!」
ライース兄様の怒鳴り声と、カルティの焦ったような声が聞こえる。
寒い。
とても寒い。
寒くて、寒くて……なにも考えたくない。
ライース兄様とカルティの声が遠くで聞こえるが、なにを話しているのかよく聞き取れない。
「レーシア! レーシア! しっかりしろ! 目を覚ませ!」
「若様! わたしの外套をお嬢様に」
「ああ。ありがとう」
「薪が足りません。捜してきます」
「頼む!」
「レーシア! レーシア!」
狂ったようにあたしの名を呼ぶ声が、頭の中で反響する。
手や足の先がどんどんしびれ、冷たくなっていく。
寒い。寒い。
どうしてこんなに寒いのだろう。
暖かい場所を必死に捜す。
それはすぐ近くにあるというのに、うまくつかみとることができない。
だめだ。ひきずりこまれる……。
ゆっくりと、ゆっくりと……あたしの意識は底の方へと落ちていった。
「まだ寒いですね――」
ひょろりと背の高い男性が、私に微笑みかける。
優しそうな眼差しに見つめられ、私の中にほんわりとしたものが広がる。
眼差しだけでなく、外見も、気質の方も優しくて穏やかな人物だと思う。
メールや電話、リモートでの打ち合わせばかりで、こうして実際に会うことは珍しい。
私は少し緊張していた。
「ええ。寒いですね」
私はそう答えながら、彼にぎこちない微笑みを向ける。
冷たい空気に触れて、頬がつっぱったような感覚を覚える。
暦の上ではそろそろ春だというのに、まだまだ夜は冷え込む。
吐く息が白かったのには驚いた。
さっきまで温かかった店内で食事をしていたので、この温度差は身体にこたえる。
冷たい風が頬を撫で、私は思わず震えあがった。
「本日はごちそうさまでした」
彼が私に向かって丁寧に頭を下げる。
アルコールは苦手なんですよ、と言って、二杯目を断った彼の顔は、ほんのりと赤らんでいる。
彼は自分にかまわず飲んで欲しいと言ったが、それを「はいそうですか」と真に受けて酒をぐいぐい飲むほど私は若くない。
純粋に料理と会話を楽しむ、穏やかな時間になった。
まあ、会話といっても、ふたりの共通点といえば仕事になるので、会話のほとんどが彼に発注した仕事の反省会みたいな状態になってしまった。
仕事の延長みたいな状態で、いきなり趣味の話とか、互いのプライベートの探り合いとかはやりたくない。
共通の仕事で共有できる話題。
その中には苦い思い出もあり、というか、ほとんどが苦々しい、苦労話や愚痴になってしまった。アルコールの力を借りずとも、ここまで話が盛り上がるとは……。どれだけ彼に迷惑をかけていたんだ、と私は反省してしまう。
「いつも、いつも無理を言って助けてもらっているのに……。たいしたお礼もできずに申し訳ございません」
私は深々とお辞儀をする。心から謝罪する。反省もしてます。
ただ、改善できるかどうかは、上司と会社の方針なので、私としては心苦しいばかりだ。
そう、仕事で困ったとき、例えば、納期が短いとか、予算が少ないとか、トラブルが発生したとか……例をあげたらきりがなかったが、そういう『困った』ときに遭遇すると、私は彼に仕事を依頼するようになっていた。
「は、はいっ」
「毛布はこれだけか? 着替えはないのか?」
「はい。申し訳ございません。まさか、このようなことになるとは思ってもいなかったので、お着換えまでは……」
「そうだよな。まさか、こんなことになるなんて……。くそっ! とにかく、火だ!」
「薪をくべろ!」
ライース兄様の怒鳴り声と、カルティの焦ったような声が聞こえる。
寒い。
とても寒い。
寒くて、寒くて……なにも考えたくない。
ライース兄様とカルティの声が遠くで聞こえるが、なにを話しているのかよく聞き取れない。
「レーシア! レーシア! しっかりしろ! 目を覚ませ!」
「若様! わたしの外套をお嬢様に」
「ああ。ありがとう」
「薪が足りません。捜してきます」
「頼む!」
「レーシア! レーシア!」
狂ったようにあたしの名を呼ぶ声が、頭の中で反響する。
手や足の先がどんどんしびれ、冷たくなっていく。
寒い。寒い。
どうしてこんなに寒いのだろう。
暖かい場所を必死に捜す。
それはすぐ近くにあるというのに、うまくつかみとることができない。
だめだ。ひきずりこまれる……。
ゆっくりと、ゆっくりと……あたしの意識は底の方へと落ちていった。
「まだ寒いですね――」
ひょろりと背の高い男性が、私に微笑みかける。
優しそうな眼差しに見つめられ、私の中にほんわりとしたものが広がる。
眼差しだけでなく、外見も、気質の方も優しくて穏やかな人物だと思う。
メールや電話、リモートでの打ち合わせばかりで、こうして実際に会うことは珍しい。
私は少し緊張していた。
「ええ。寒いですね」
私はそう答えながら、彼にぎこちない微笑みを向ける。
冷たい空気に触れて、頬がつっぱったような感覚を覚える。
暦の上ではそろそろ春だというのに、まだまだ夜は冷え込む。
吐く息が白かったのには驚いた。
さっきまで温かかった店内で食事をしていたので、この温度差は身体にこたえる。
冷たい風が頬を撫で、私は思わず震えあがった。
「本日はごちそうさまでした」
彼が私に向かって丁寧に頭を下げる。
アルコールは苦手なんですよ、と言って、二杯目を断った彼の顔は、ほんのりと赤らんでいる。
彼は自分にかまわず飲んで欲しいと言ったが、それを「はいそうですか」と真に受けて酒をぐいぐい飲むほど私は若くない。
純粋に料理と会話を楽しむ、穏やかな時間になった。
まあ、会話といっても、ふたりの共通点といえば仕事になるので、会話のほとんどが彼に発注した仕事の反省会みたいな状態になってしまった。
仕事の延長みたいな状態で、いきなり趣味の話とか、互いのプライベートの探り合いとかはやりたくない。
共通の仕事で共有できる話題。
その中には苦い思い出もあり、というか、ほとんどが苦々しい、苦労話や愚痴になってしまった。アルコールの力を借りずとも、ここまで話が盛り上がるとは……。どれだけ彼に迷惑をかけていたんだ、と私は反省してしまう。
「いつも、いつも無理を言って助けてもらっているのに……。たいしたお礼もできずに申し訳ございません」
私は深々とお辞儀をする。心から謝罪する。反省もしてます。
ただ、改善できるかどうかは、上司と会社の方針なので、私としては心苦しいばかりだ。
そう、仕事で困ったとき、例えば、納期が短いとか、予算が少ないとか、トラブルが発生したとか……例をあげたらきりがなかったが、そういう『困った』ときに遭遇すると、私は彼に仕事を依頼するようになっていた。
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