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Mission3 お祖母様を救え!
117.がんばるカルティ
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この理不尽な状況にひとり悶々としていると、カルティがあたしたちの方にやってきた。
「若様、青いバーニラーヌの花は、これくらいでよろしいでしょうか?」
カルティが持っていた麻袋を差しだすと、中には青い花の植物が十数本入っていた。
そ、そうだった。
ドキドキイベントですっかり吹っ飛んでしまったけど、あたしたちは青い『バーニラーヌ』の花を探しに来たんだった。
あたしは青い『バーニラーヌ』をぶちっと引き抜いたが、カルティは土ごと採取したようだ。
働き者のうえ、仕事が丁寧だ。
土の匂いに混じって、とても甘い香りがする。
というか、ついにカルティは青い『バーニラーヌ』の存在を認めたようだ。
「そうだな。とりあえず、これだけ持ち帰ってみよう。根こそぎ採取などはしていないよな? 青い『バーニラーヌ』の株はまだ残っているよな?」
「はい。若様のご指示どおり、残しております。咲き終わったものもありましたが、蕾状態の株もまだありました」
蕾の花もあるということは、最低でも青い『バーニラーヌ』の花は、数日間は採取可能ということか。
「カルティは屋敷に戻って、青い『バーニラーヌ』の花をデイラル先生に渡してくれ」
「わかりました」
「おれとレーシアは……服が乾いたら……戻る」
あの微妙な間は、「この状態で服は乾くのだろうか」と思ったんだろうね。
あたしも思ったよ。
しかし、ライース兄様、カルティができる子だからって、まだ八歳の男の子になかなか過酷な命令をだすよね。
この夜道をひとりで屋敷に戻れって……。
目印があるから、迷わず戻れるとでも思っているのだろうか。
そして、カルティもカルティで、なんの疑問も持たずに頷いているよ。
このふたり、やっぱり、只者じゃない。
「……戻ってきましょうか?」
声にはだされなかったが、頭には「着替えの服を持って」とあったにちがいない。
カルティは屋敷に戻って、さらにここに戻ってくるつもりらしい。
いやいや。
八歳男児のするお仕事じゃないよ。
「いや。ゲインズに事情を説明して、別の者を迎えによこしてくれ」
よかった、ライース兄様もそこまで鬼じゃなかったよ。
爺やに任せておけば大丈夫だろう。
「カルティはレーシアの部屋のゴミ箱から、デルディアモンドを速やかに回収してくれ」
「わかりました!」
あ、デルディアモンドか。
忘れてた。
たしか、一粒が、爺やの三か月分の給料だったよね。
カルティは真剣な表情で頷くと、屋敷に戻る準備を始めた。
ここに残るあたしとライース兄様が困らないように、薪もさらに集め、必要な荷物もここに置いていく。
「若様、お嬢様。それでは、お先に失礼します」
自分が着ていた外套をまとい、支度を終えたカルティがあたしたちに一礼する。
「気をつけるんだぞ」
「はい。若様もお気をつけて。獣避けの香を焚いてはいますが、絶対ではありませんから」
「わかっている」
心配しているカルティを安心させるかのように、ライース兄様は側に置いている剣に手を伸ばす。
「カルティ……まっくらな道です。きをつけてください。ぶじにもどって、青い『バーニラーヌ』の花を、デイラル先生にわたしてください」
「お嬢様、お任せください」
カルティはセンチュリーに跨ると、もときた道を戻りはじめた。
目印の光る布が見えているのか、カルティの背中に迷いはなかった。
荷物が減って身軽になったセンチュリーは、疲れなど全く見せずにずんずんと進み、あっという間に森の奥へと消えていった。
静かだ。
白いバーニラーヌの花畑を眺めながら、あたしはカルティの無事を祈る。
「大丈夫だよ。カルティは幼いが、責任感のあるしっかりした子だ。お祖母様を助けたいという気持ちはもしかしたら、おれたち以上に強いかもしれない」
「はい。そうですね」
離れて暮らしていたあたしやライース兄様よりも、カルティの方がお祖母様といた時間は長いだろう。
それに、あたしは、ゲームの内容を知っている。
どれだけカルティがお祖母様を慕っていたか。
ライース兄様が、ぎゅっとあたしを抱きしめる。
「大丈夫だ。きっと大丈夫だ。レーシアが、がんばって見つけた花は、お祖母様の病気を治してくれる。デイラル先生を信じよう」
「はい。デイラル先生はすごいお医者さまです」
あたしの言葉に、ライース兄様の抱きしめ攻撃がさらに激しくなる。
ライース兄様も心配なのだろう。
ゲームの設定どおりなら、青い『バーニラーヌ』の花で氷結晶病は治るだろう。
それとも、ゲームのシナリオどおりに、お祖母様は死んでしまうのだろうか。
あたしみたいに死亡イベントを回避することができるのだろうか。
わからない。
心臓の鼓動が激しくなる。
「お祖母様は大丈夫だから、レーシアは眠りなさい」
ライース兄様の優しい声が耳元で聞こえた。
その言葉に安心したのか、六歳児の体力限界に到達したのか、あたしの意識はゆっくりと沈んでいった。
「若様、青いバーニラーヌの花は、これくらいでよろしいでしょうか?」
カルティが持っていた麻袋を差しだすと、中には青い花の植物が十数本入っていた。
そ、そうだった。
ドキドキイベントですっかり吹っ飛んでしまったけど、あたしたちは青い『バーニラーヌ』の花を探しに来たんだった。
あたしは青い『バーニラーヌ』をぶちっと引き抜いたが、カルティは土ごと採取したようだ。
働き者のうえ、仕事が丁寧だ。
土の匂いに混じって、とても甘い香りがする。
というか、ついにカルティは青い『バーニラーヌ』の存在を認めたようだ。
「そうだな。とりあえず、これだけ持ち帰ってみよう。根こそぎ採取などはしていないよな? 青い『バーニラーヌ』の株はまだ残っているよな?」
「はい。若様のご指示どおり、残しております。咲き終わったものもありましたが、蕾状態の株もまだありました」
蕾の花もあるということは、最低でも青い『バーニラーヌ』の花は、数日間は採取可能ということか。
「カルティは屋敷に戻って、青い『バーニラーヌ』の花をデイラル先生に渡してくれ」
「わかりました」
「おれとレーシアは……服が乾いたら……戻る」
あの微妙な間は、「この状態で服は乾くのだろうか」と思ったんだろうね。
あたしも思ったよ。
しかし、ライース兄様、カルティができる子だからって、まだ八歳の男の子になかなか過酷な命令をだすよね。
この夜道をひとりで屋敷に戻れって……。
目印があるから、迷わず戻れるとでも思っているのだろうか。
そして、カルティもカルティで、なんの疑問も持たずに頷いているよ。
このふたり、やっぱり、只者じゃない。
「……戻ってきましょうか?」
声にはだされなかったが、頭には「着替えの服を持って」とあったにちがいない。
カルティは屋敷に戻って、さらにここに戻ってくるつもりらしい。
いやいや。
八歳男児のするお仕事じゃないよ。
「いや。ゲインズに事情を説明して、別の者を迎えによこしてくれ」
よかった、ライース兄様もそこまで鬼じゃなかったよ。
爺やに任せておけば大丈夫だろう。
「カルティはレーシアの部屋のゴミ箱から、デルディアモンドを速やかに回収してくれ」
「わかりました!」
あ、デルディアモンドか。
忘れてた。
たしか、一粒が、爺やの三か月分の給料だったよね。
カルティは真剣な表情で頷くと、屋敷に戻る準備を始めた。
ここに残るあたしとライース兄様が困らないように、薪もさらに集め、必要な荷物もここに置いていく。
「若様、お嬢様。それでは、お先に失礼します」
自分が着ていた外套をまとい、支度を終えたカルティがあたしたちに一礼する。
「気をつけるんだぞ」
「はい。若様もお気をつけて。獣避けの香を焚いてはいますが、絶対ではありませんから」
「わかっている」
心配しているカルティを安心させるかのように、ライース兄様は側に置いている剣に手を伸ばす。
「カルティ……まっくらな道です。きをつけてください。ぶじにもどって、青い『バーニラーヌ』の花を、デイラル先生にわたしてください」
「お嬢様、お任せください」
カルティはセンチュリーに跨ると、もときた道を戻りはじめた。
目印の光る布が見えているのか、カルティの背中に迷いはなかった。
荷物が減って身軽になったセンチュリーは、疲れなど全く見せずにずんずんと進み、あっという間に森の奥へと消えていった。
静かだ。
白いバーニラーヌの花畑を眺めながら、あたしはカルティの無事を祈る。
「大丈夫だよ。カルティは幼いが、責任感のあるしっかりした子だ。お祖母様を助けたいという気持ちはもしかしたら、おれたち以上に強いかもしれない」
「はい。そうですね」
離れて暮らしていたあたしやライース兄様よりも、カルティの方がお祖母様といた時間は長いだろう。
それに、あたしは、ゲームの内容を知っている。
どれだけカルティがお祖母様を慕っていたか。
ライース兄様が、ぎゅっとあたしを抱きしめる。
「大丈夫だ。きっと大丈夫だ。レーシアが、がんばって見つけた花は、お祖母様の病気を治してくれる。デイラル先生を信じよう」
「はい。デイラル先生はすごいお医者さまです」
あたしの言葉に、ライース兄様の抱きしめ攻撃がさらに激しくなる。
ライース兄様も心配なのだろう。
ゲームの設定どおりなら、青い『バーニラーヌ』の花で氷結晶病は治るだろう。
それとも、ゲームのシナリオどおりに、お祖母様は死んでしまうのだろうか。
あたしみたいに死亡イベントを回避することができるのだろうか。
わからない。
心臓の鼓動が激しくなる。
「お祖母様は大丈夫だから、レーシアは眠りなさい」
ライース兄様の優しい声が耳元で聞こえた。
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