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10.山の中で
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馬で旅というのもかなり大変だった。田舎からの移動は道の整備がされていないから、道幅のない馬車では通れない道でも馬なら通れるので贅沢は言っていられない。
大切な馬を痛めないように、水と餌、適度な休息は必要だった。ミリー達は経験者なので、とても頼りになる。貴重な大陸の地図を持っているので見せてもらう。地図の見方や悪路を避けて行く術を教わる。
修道院からは聖騎士避けのペンダントだけでなく認識阻害の指輪も貸してもらっている。どちらもお金には換算できないほど高価らしいので大切に扱わなくちゃいけない。神殿からお借りしているそうだ。
年若い女子供だから旅の途中で悪い輩に目をつけられない様にという配慮だった。一人だけでなく纏まって三人が着けているため、広範囲に効いてくれるらしい。
それに近頃では魔物の数が増えはじめたとの噂もあるので、どのルートを選んで旅をするか宿場で情報集めも大切だ。そんな風に注意しながら今の所順調に進んでいる。一応、どうしても宿屋に泊まることが出来なかった時にそなえて一人用の携帯テントをそれぞれが持たされていた。
困るのは雨で、身体を冷やし病気になるのは困るので、その時は雨が止むまで待つ事にした。
今も雨が降っていて、山の中だったため、木々の枝葉が重なり、雨の届かない場所で休憩をした。まだ乾いた地面がありほっとする。馬を木に繋いで近くの小川で水を汲み、馬の好きな根菜類と角砂糖を少し与えてあげる。
私はグリーンの身体を撫でて、ブラシも当ててあげる。ピルプルと喜んでくれたけど、私の三つ編みの毛先を齧ろうとしたのでサッと避けると不満そうだ。私は髪を伸ばしていたので邪魔にならないように二つのおさげにしていた。髪を切るのも面倒なのでおさげにしたまま伸びると毛先を切るといった事を繰り返していた。
「だーめこれは藁じゃないのよ、齧っちゃだめ」
修道院では身体を動かし、規則正しい生活と、バランスの良い食事を摂っていたので体力もある。旅に出て四日が過ぎていたけど、わりと元気だ。昔はパサパサだった髪の毛にもちゃんと艶がある。修道院でも珍しい色で綺麗だと褒めてもらえた。子供の頃は嫌いだったけど、今は自分でも好きになった。
ミリーが腰を下ろしていた木の根からそっと立ち上がった。スワンも動きを止めて何かの気配を探るように目を閉じた。
「魔物の気配だ。二月程前に近くの村の家畜が襲われたと聞いたが、やはりいるようだ」
「います。雑魚ですが複数いる気配がします」
ミリーの言葉にスワンが答える。二人とも短棒を手にしていた。
「ラムリースは馬の傍にいて下さい。あとは私達の援護をお願いします」
「うん、分かった」
私も短棒を手にする。
実は私は魔物を見た事も戦った事もないので、ちょっと怖かった。前の村で最近魔物が増えてきているのは聖女様がお歳を召して、その力が弱くなってきているのだろうという話をしているのを聞いた。
皆不安そうな顔をしていて私も不安になった。周りの不安な気持ちが自分に押し寄せてくるような気がする。
するとスワンが傍に来て手をそっと片手を握ってくれ、ミリーは背中を何度か慰めるように撫でてくれた。温かい体温を感じるとほっとした。
「一人ではない。私達がいる」
ミリーの声がじんわりと心に浸み込んできた。
人の心の不安を聖女は感じ取る能力をもっている。覚醒が近づくとだんだん敏感になるのだと後日教えてもらった。
大切な馬を痛めないように、水と餌、適度な休息は必要だった。ミリー達は経験者なので、とても頼りになる。貴重な大陸の地図を持っているので見せてもらう。地図の見方や悪路を避けて行く術を教わる。
修道院からは聖騎士避けのペンダントだけでなく認識阻害の指輪も貸してもらっている。どちらもお金には換算できないほど高価らしいので大切に扱わなくちゃいけない。神殿からお借りしているそうだ。
年若い女子供だから旅の途中で悪い輩に目をつけられない様にという配慮だった。一人だけでなく纏まって三人が着けているため、広範囲に効いてくれるらしい。
それに近頃では魔物の数が増えはじめたとの噂もあるので、どのルートを選んで旅をするか宿場で情報集めも大切だ。そんな風に注意しながら今の所順調に進んでいる。一応、どうしても宿屋に泊まることが出来なかった時にそなえて一人用の携帯テントをそれぞれが持たされていた。
困るのは雨で、身体を冷やし病気になるのは困るので、その時は雨が止むまで待つ事にした。
今も雨が降っていて、山の中だったため、木々の枝葉が重なり、雨の届かない場所で休憩をした。まだ乾いた地面がありほっとする。馬を木に繋いで近くの小川で水を汲み、馬の好きな根菜類と角砂糖を少し与えてあげる。
私はグリーンの身体を撫でて、ブラシも当ててあげる。ピルプルと喜んでくれたけど、私の三つ編みの毛先を齧ろうとしたのでサッと避けると不満そうだ。私は髪を伸ばしていたので邪魔にならないように二つのおさげにしていた。髪を切るのも面倒なのでおさげにしたまま伸びると毛先を切るといった事を繰り返していた。
「だーめこれは藁じゃないのよ、齧っちゃだめ」
修道院では身体を動かし、規則正しい生活と、バランスの良い食事を摂っていたので体力もある。旅に出て四日が過ぎていたけど、わりと元気だ。昔はパサパサだった髪の毛にもちゃんと艶がある。修道院でも珍しい色で綺麗だと褒めてもらえた。子供の頃は嫌いだったけど、今は自分でも好きになった。
ミリーが腰を下ろしていた木の根からそっと立ち上がった。スワンも動きを止めて何かの気配を探るように目を閉じた。
「魔物の気配だ。二月程前に近くの村の家畜が襲われたと聞いたが、やはりいるようだ」
「います。雑魚ですが複数いる気配がします」
ミリーの言葉にスワンが答える。二人とも短棒を手にしていた。
「ラムリースは馬の傍にいて下さい。あとは私達の援護をお願いします」
「うん、分かった」
私も短棒を手にする。
実は私は魔物を見た事も戦った事もないので、ちょっと怖かった。前の村で最近魔物が増えてきているのは聖女様がお歳を召して、その力が弱くなってきているのだろうという話をしているのを聞いた。
皆不安そうな顔をしていて私も不安になった。周りの不安な気持ちが自分に押し寄せてくるような気がする。
するとスワンが傍に来て手をそっと片手を握ってくれ、ミリーは背中を何度か慰めるように撫でてくれた。温かい体温を感じるとほっとした。
「一人ではない。私達がいる」
ミリーの声がじんわりと心に浸み込んできた。
人の心の不安を聖女は感じ取る能力をもっている。覚醒が近づくとだんだん敏感になるのだと後日教えてもらった。
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