泣き虫聖女は聖騎士樣が大嫌い

吉野屋

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16.バルサへ行く理由

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「この舟は・・・バルサに向かっているの?」

「よく分かったな。その通りだ、国境も無事越える事が出来た。聖女のおかげだな」

 今は船室の丸窓から夕陽がオレンジ色の光となってチロチロと床を照らしている。

 私はあれから部屋へと戻り、リノの運んできてくれた食事を摂った。

 食事と言っても胃に負担をかけないようにと野菜がとろとろに煮込まれたスープを少し頂いた。それから舟の酔い止めの薬をもらって飲んだらなんだか眠くなり少し眠ってしまったようだ。

 目が覚めると、あの小さい丸窓から夕日が差し込んでいた。するとノックがあり、リノが話をするために入ってきたのだった。

 リノの話だと、聖女の結界を越える事は彼女の協力なしには出来ないらしい。見えない強力な壁として国を守っているのが聖女の結界だから。

 

「どうして聖女様は私を?」

 お身体の調子は大丈夫なのだろうか?

「――――世界の安定を考えての事だろうな」

「世界の安定?」

「現聖女が身罷り、聖女の力がお前に移った時に、力と共に聖女として生きる為に必要な幾らかの『聖女の記憶』が渡されるという話を聞いた。お前も知っていると思うが、聖女はこの世界の何処かに現れるという天からの祝福とされている。だがある時を境に、同じ国にしか現れなくなった。そして、その事が世界を不安定にし、徐々に崩壊へと導いているそうだ」

「私、自分の住んでいた国の事もよく知らなかったの。他の国の事はもっと何にも知らない。そんなに他の国の状態は悪いの?」

「天災、飢饉、魔物との闘い。僅かな食糧を争っての戦争や小競り合いが起こっている」

「じゃあ私がバルサ国に向かっているのは、聖女様のお考えなの?」

「それは違う。聖女は協力してくれただけに過ぎない。今はまだハッキリとは言えないけど、お前が聖女になった時に、これからやらなければならない事も自ずと分かると思う」

「貴方には分かっているの?」

「そうだな・・・今は理解できないだろうけど、聖騎士の覚醒と共に、今の俺ではない誰かの記憶や考えが流れ込んできている。前世の記憶というものらしい。お前が聖女になった時にもそんな感じじゃないのかと思う」

「前世の記憶?・・・そんな事あるの??」

「世の中にはそういう者もいると聞いた。そう考えれば納得できた。初めは混乱したが」


 その時になってみないと分からないやつだろうか、今は聞き流すしかない事に思えた。今のリノは、昔のいじめっ子のリノではない。知らない別人の様だった。

「なんでかは分からないが、お前との縁が必然なら、とにかく前に進んでみるしかないと思った。お前は嫌かも知れないが・・・。まあ、それだけ俺の今までの人生はお前に縛られていた。あ、お前のせいじゃないけどな」

 彼の方からすれば、そうなのかもしれない。もし全部私の所為だと言われると理不尽だと即答で答えるだろうけど、そうは言われなかった。

 だけど、『聖女』に関係する役回りの者は皆、自分の意志に関係なくその大きな渦に巻き込まれてしまうのだと感じた。

「バルサの港に着いたら、あの二人が後を追って来るのを待って四人で目的地へ出発するつもりだ」

「二人って・・・もしかして」

「ミリーとスワンと言ったか、あの二人だ。俺達より少し遅れてから聖女が送り出してくれる手筈だ」

 国を出てしまったのなら、お別れだと思っていた私は、また会えるのだと知ってとても嬉しく思った。






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