神を穿つ剣士

Lukia

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四騎

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タカタカタカタカ!!!

グロウの耳が、何かが走り迫る音に反応する。
勇敢で殺意のあるその音は次第に大きく、素早くなる。
なのにグロウは剣を振ろうとしない。
確実に迫る敵は、姿が全く見えないのだ。

だが、神を殺すために生きているグロウにとって、ここで捕まるわけにはいかない。
そもそも捕まってしまう程度の実力じゃ、神を殺すことなんてできない。
だから、街を壊してでも、無関係な人を殺してでも、突き進んで行くしかない。

「お覚悟を!」
シャキン、と剣が鞘から出される。
もうグロウのすぐそこまで近づいたのだろう。
この兵士は、足を止めない。例え目の前の男が高ランク指名犯の『人斬り』だろうと。無抵抗だろうと。

言葉を聞いた直後。
「ふは!」
漆黒の剣が強く握られる。
「何がお覚悟だぁ?」

白い歯を強く、強く食いしばる。
グロウは覚悟を決めたあの日を思い出していた。
友を、家族を失ったあの日を。
鮮烈に焼き付いているあの日を。


刃の先を後ろにし、背中を大きく前へ出す。
足を大きく広げ、肩を上げる。

(何をする気ですか…)
それを見ても、兵は足を止めない。
ただ、まっすぐにグロウを突き刺しに、走る。

「覚悟なんてなぁ…」
(死ね!人斬り!!)
兵は銀色の剣を、僅かに見える首に伸ばしたが

「もうしてんだよ」

ガシュン!!
瞬間、高い音が響き、
グシュン!!
柔らかい何かがえぐれるような音が続いた。

ドサ、と何かが倒れた。
走る音は、もう聞こえない。
そして、音の直後に、胴体と下半身が分かれた男が現れた。
切れ目からは乱れた小腸と大腸がもれていて、真っ赤な鮮血とドス黒い血液が吹き出ていた。
特に小腸は、あまりにもの威力でエグれていて、丸めたティッシュのようにグシャグシャに潰れていた。
思わず手で鼻を抑えたくなるくらいの匂いがただよう。
さらに、グロテスクな静止画が映ることもあり、気持ち悪さはただ増すばかり。

「お、お主、なんじゃ今の音は」
身をかがめて震える店主が聞く。
「あぁ、意外と強そうだと思ったけど、俺の間違いだったわ」
「……殺したのか?」
「あぁ」
それでも冷静な声で、グロウは返事をした。

「ジジィ。アンタ寝てろ」
「へ?」
「寝たふりでもいい。そうでもしねぇと国防庁に捕まるぞ」
国防庁とは、ベルサイルの治安維持や国家防衛などを任された一つの「組織」である。
一般的に兵士という役割を持つ者はそこに所属する。

「あ、あぁ」
「じゃあ。また明日来るからな」
今度こそ、店を立ち去った。
すぐそこの道に入ると、グロウは風のように駆け抜ける。
次に向かう場所があるというのもあるが、何より広場周辺にいると間違いなく見つかるからだ。
グロウ一人でも国防庁に所属する兵士は全員倒せるだろうが、数で圧倒されると流石に難しい。

「ヤベェな。これじゃぁ牡蠣買ってやれねぇかもな」

しばらく目立たない道を走っていると、
『…聞こえる?』
頭に直接音が伝わる。
あの少女からの白魔術伝心テレパシーだ。
「なんだ」
口を閉じたまま、しかし言葉を伝える。


『今すぐそこから逃げて』










続く


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