神様になった私、神社をもらいました。 ~田舎の神社で神様スローライフ~

きばあおき

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神威の応用編

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 村長の妻は完全に夢のお告げを信じ、山の神神社へ足繁くお参りをするようになった。

井戸端会議的な情報網があるのか、徐々に村人の参拝者も増えていった。

元々いたはふりの宮司は呼び戻せなかったが、妻が私財をはたいて境内に小さな社務所を建てた。

そして月に一度、街の宮司に兼務して貰うことになった。

「よーし。神社らしくなってきた。きりはどう? 仕事大変じゃ無い?」

「もちろんお任せください。ちゃんと参拝者のお祈り記録取ってます」

「実はそれがどんな役に立つのかわからないんだけどね」

「えっ? ゆかりさんだって神様なんだから、お願い事をちゃんと聞いてあげなきゃだめですよぅ」

「私にそんな力があるとでも? 人の夢に入り込むだけだよ。できるのは」

「そうなんですか」

「あーきりを幸せにすることはできるよぉぉ、好き好き好き、いいこでちゅねぇ」

「あっあの、人の姿の時はちょっとなんていうか、恥ずかしいのでやめてくださいよぅ」

「もうっ、そんなこといっちゃってぇ、こいつめこいつめ」

「うーむ。山の神様、『夢見』でなんか叶えられることもあるんじゃないですかねぇ」

「おぅわ! 見てた?」

「あぁ、はい」

ジト目でこっちを見ている獣姿の獅子。

「ごほん。山の神様のお仕事は山神様のお目付役のはずなんだけどなぁ」

「そういやぁ前の山の神様はもっといろんな神威を持ってましたな」

「へぇ? どんな」

「交通安全のお祈りをしてきた人間のお子さんには通学路の横断歩道で待ち構えて旗振りとかしてましたぜ」

「それ親切な地元のおじいさんがやってること! 神威関係ないし」

「鉄砲水が起きないように近くの山登って小川の点検なんかもしてましたわ。ははは」

「はぁぁ、神様の仕事ってなんなんだろなぁ」

前任者はひとりで村の面倒もみてくれていたのだ。

やはりあの神、いい神様だったんだと再認識し、自分も少しは地域の役に立ちたいものだ。

とはいえなにができるのだろうか?

「しかしですよ、さっきも言ったとおり、夢見の神威はなかなか凄い力だと思いますがね」

「うーん。使い道がわからないけれど、たしかに特別な力だよね。

ちょっと考えてみる。

きりたぁん、参拝者の願い事書いた台帳みせてくれるかなぁ?」

「はい。こちらに。

わたし思うんですけど、実際に夢が叶っちゃうことなんてめったに無いじゃ無いですか」

「うん」

「それで、わたしが前にびょうきしてたときに見た夢が、ほんとにわたしがやりたかった事を叶えてくれたような夢でとても嬉しかったんです」

「え? なにそれ聞きたい。どんな夢見てたの?」

「わたしがすっごく元気で、ゆかりさんと一緒に草原を走って、二人ですっごく美味しいちゅーるを食べるんです。でも、いくら食べても無くならないの」

「ぐはっ! かわいすぎるっ助けて、尊すぎる猫の夢」

「またぁ、だから、そんな夢を見た次の朝はなんだか気持ちも身体も軽くて元気がでたんですよって話です」

「そっか、わかったよきり。おまえの言いたいこと。

実際に叶わなくても、夢見が現実味を持っていれば起きた後にも繋がると」

私はきりが書いた村民の願い事を読んだ。

「あぁ、これなんかいいかも。きりが夢見の可能性を広げてくれたよ。

ありがとうねぇ」


 私はその夜、村人の女子高生、沢田涼子ちゃんの夢に入った。

そこは学校の教室だった。

「おはよう涼子、さっきさ、健司君に挨拶しちゃった」

教室の席に座っている涼子ちゃんの隣に座り、話し掛けた。

彼女は一瞬不思議そうな顔をして答える。

「おはよう。って、あれ? 誰だっけ?」

「なに言ってるの。ゆかりでしょうが、健司君かっこいいよねぇ」

夢補正ですんなりと涼子ちゃんの親友、ゆかりと認められたようだ。

「そうかな。私はなんとも思わないけど」

「ふうん。じゃ健司君に告白しちゃってもいいよね」

「勝手にすれば」

「あれ、涼子って前から健司君の事大好きだって言ってたじゃない。

どうしちゃったの」

「そんなこと言ってないよ」

彼女は健司君の事がまったく眼中にないことが分かる。

「言ってたよ。サッカーしてるときの一生懸命な姿がかっこいいとか、荷物持ってくれて優しいところもあるとか。

授業中も気になってしょうがないって」

「そうだったかな? でも、そうだったのかも」

「そうだよ、健司君もあなたのことが好きだって噂を聞いたからちょっと悔しくてさ」

「えっ? そうなの? それほんと?」

ブルースクリーンのように青一色だった窓の外が校庭の風景に変わり、サッカーをしている男子達がボールを追っている姿が見える。

「うん。男子が話してるの聞いちゃった」

「たぶん聞き間違いだよそんなの~」

涼子は目覚まし時計を止めた。

ぱっちりと目覚めてはいたが、布団を掛けたまま天井を見つめてため息をついてしまう。

彼女は胸の奥に生まれたうずきを押しとどめるように、自分の身体を抱きしめていた。

「さぁてどうなりますかね。

健司君のお願い、『涼子ちゃんと恋人同士になれますように』ってやつ。

くぅぅぅ、甘酸っぺぇぜ!」

「ゆかりさん、どんな手を使ったのですか」

「まぁ、しばらく待ってみようよ」

半月ほどして当の健司君が神社へやってきた。

なんとお賽銭は千円である。

「神様ありがとうございます。

涼子ちゃんに告白したらオーケー貰えました! 神様のおかげです! 

本当にありがとうございます」

「やりましたね! ゆかりさん。凄いですよ! 大成功じゃ無いですか」

「ふふん。これぞ神威ってやつですかね。えへん」

「でもどうやったらうまくいったんですか?」

「たぶん今のままじゃ健司君が告白しても失敗してた。

でも涼子ちゃんの夢で健司君の話が出たら、深層心理に健司君のことが好きだったからあんな夢見たんだっていうイメージが残るでしょ。

そしたらその先は健司君が気になって仕方なくなるはず。

恋愛なんて生理的に合わない場合を除いて、ちょっとしたきっかけで成立しちゃうものなのよ」

「なるほど。ゆかりさんと生理的に合う人がいなかったんですねっ」

素直で可愛いきりは私のことを知りすぎている。

無垢な目をしてど真ん中ストレートなセリフを言われると大ダメージだ。

「ま、まぁ、私のことはともかく、以前にね、どうでもいいテレビのアイドルと一緒に呑む夢見てからその人が好きになっちゃったことがあるんだよ。

楽しい飲み会だった」

「一緒に呑むと惚れちゃうんですか?」

「酒量による」

「そういうことですか。ゆかりさんと同じペースで呑む人なんてなかなかいないって言ってましたもんね。

でも、ゆかりさんが女子高生の衣装になったとき、びっくりしましたよ」

「私だってびっくりだよ。涼子ちゃんに二十七才ってバレなかった」

「へー。でも良かったですね健司君。じゃ、このお願いは済っと」

「他はどれがいいかな。

お金持ちになりたいってやつは軒並み夢で叶えておこうか。

お金に埋めつくされる夢なんてなにが楽しいのか知らないけれど」

神様にお願いするなら、お金を目的とするよりそのお金でどんな未来を夢見ているのかを話す方が重要だと思う。

もとよりお金を目的にしたいならそれを入手するための行動が成功するように祈るべきだ。

神様はいちいちあんたの夢から連想して最高の未来まで導いたりできないのだから。

「美女とHなことしたいってやつは却下ね。ん? こいつ世界平和を願った青年団だ!」

それからたった一ヶ月で参拝する村人が増え、神社には活気が戻り始めた。

清涼な空気と山の神神社に対する信仰力のようなものが混じり合い、大きな神社に引けを取らない立派な神域の雰囲気となっていった。


 街から来た兼業の宮司は、簡単な仕事だと思い仕事を引き受けた。

しかし週末ごとに参拝者が増え、今やお守り制作販売、御朱印書き、賽銭やらの経理処理と、思ったより忙しくなったことに驚いていた。

無名の山の神がなぜこうも霊験あらたかなのか。

一体、村人に何が起きているのか。

『夢のお告げ』の噂も聞いていた。

山の神神社への興味は大きくなり、神の存在を実感できるこの仕事を受けて良かったと感じていた。
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