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メガソーラー計画を阻止せよ
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「山神様!!! ちょっとお伺いしたいことが!」
「なんじゃ、奴との馴れ初めでも聞きたいのか?」
「ノーセンキューです、昨日言ってましたよね、この山は人が造ったって」
「あぁ言った。昔の人間は大きなものを造りたがったものじゃ」
「その証拠ってなにかありませんか? 昔から残っているものとか」
「あれじゃな」
それはこの山に初めて前任の山の神と来たときに見た菱形の巨石だった。
「わしが見たときはこれが立っていた。その上に山の形をしてぴかぴか光る岩が乗っていたな。
まぶしいから払い落としてやったが、まだそこらにあるじゃろう」
どうやら御山は古代の建造物のようだった。
光る石と言えば、鏡石、もしくはピラミッドの太陽石の可能性だってある。
「その落ちた石の場所、思い出してくださいっ」
「無茶を言うな。いったいいつの話だと思っておる」
「いや、絶対探します」
「捜すなら夜にせい。あの石からも地力が湧き出しておった。
どこかの斜面に転がっているじゃろ」
夜になり、私は頂上から裾へ向かってぐるぐる回りながら地力の光を探し回った。
光が出ていれば簡単に見つかるだろうと考えていたが、なかなか見つからない。
山裾まで降りてもとうとう発見出来なかったが、これで諦めるわけにはいかない。
今度は木々をすり抜け、山体すれすれを飛び、舐めるように探し回った。
みかねた獅子と狛犬、きりも探索に加わり、捜索は一気に早まった。
そして三日後の夜、きりが私を呼ぶ。
「ゆかりさぁーん! 来てくださぁーい!」
「あったの?」
「これ、もしかしてそうじゃないですか」
樹齢数千年と思われる巨大なヒノキの根元にこんもりと生えた苔の隙間からうっすらと光が漏れ出ている。
山に生えている樹木の中で、この木だけが異様な成長ぶりを見せている。
おそらく地力を得ているのだ。
「これだね。でも根っこの下に埋まってるのかぁ。うーん。取り出せるわけ無いか」
きりの声を聞いたのか、山神が現れた。
「どれ、見つかったのか? おお、これじゃこれじゃ。
しかしまぁ、よく残っておった」
「でも取り出せそうに無いのですよ」
「そうか。まぁ見ておれ」
山神は巨大な幹に手の平を当ててつぶやく。
「すまんが足もとの石を出してくれんか」
すぐに反応があった。巨木は幹を揺らし、葉を落としながら動き出した。
根元の土が盛り上がり、みごとな四角錐の石が土から湧き上がってきた。
「な、なんじゃこりゃぁぁ」
それは石と呼ぶには大きすぎた。
一辺が三メートルはあるだろう。ちょっと見た感じ公衆トイレの屋根サイズだった。
そして岩の頂点から細いが力強い光柱が立ちあがっていた。
ともかく、こんな大きなものを掘り出してくれたヒノキに向かって礼を言った。
「ありがとうございます。これで山を護れます」
巨木は一度幹を揺らし、また静かになった。
「山神様、凄いです! おかげさまで鏡石を発見出来ました」
「そんなものが役に立つのか?」
「おそらくは」
私は岩に触れず、そのままにしておいた。
そして急いで拝殿に戻ると女神服に変わり、ある人物の夢に入っていった。
――おぬしの夢を叶えよう
御山に登れ
一番大きなヒノキの根元にそれはある
おぬしならばそれがなにか分かるはずじゃ
急げ
そして工事を止めよ
ゆめゆめうたがうことなかれ――
翌朝一人の青年が御山に入り、一日中捜し物をしている姿があった。
二日目の陽が沈む前に、その青年は山を駆け下り、その勢いのまま家へ戻っていった。
二日後。
「教授、この山です。現場は少し登るのですが大丈夫でしょうか?」
「あぁ、もちろんだ青山君。考古学はフィールドワークだよ。
このくらいの山なんて楽なもんさ。
それにしても、この山、見れば見るほど怪しい形をしているじゃないか。
もし、それが本物であれば、キミの大発見となるよ。
教え子が卒業してからも研究を続けて成功してくれたら嬉しいよ」
「もし本物であれば、本格的な発掘調査に掛かりますよね。
実はこの山、これから大きな工事が入ってしまう予定なのです」
「なんだって、ううむ。とりあえずは調査をしなくては。
キミの言うものが確かならば、ほとんど完全な形での鏡石発見ということになる。
工事なんかやらせてたまるものか」
(青山君、フットワーク軽いなぁ。こんなに早く調査隊が来るなんてね。
あとは先生がうまく動いてくれれば流れが変わる)
きりが記帳したお願い事ノートには青山君の事が書かれていた。
“世紀の大発見をして考古学者として成功したいです”
それから先は早かった。
教授が教育委員会と協議し、発掘調査の許可が出た。
発掘で山全体が遺跡であることが分かれば工事を中止するしかないのだ。
私は工事を止めさせるために文化財保護法を利用したのだ。
とはいえ、分の悪い賭けだった。
神代からこの場所を知っている古き神、山神がいたから可能性を手繰れたのだ。
「さぁて、発掘前には宮司さんに現場の安全祈願と山神様へのお礼の祝詞を上げて貰わなきゃね」
ところが発掘調査の一週間前、真夜中に作業服姿の男達が御山に登ってゆくのを狛犬が発見した。
「なんじゃ、奴との馴れ初めでも聞きたいのか?」
「ノーセンキューです、昨日言ってましたよね、この山は人が造ったって」
「あぁ言った。昔の人間は大きなものを造りたがったものじゃ」
「その証拠ってなにかありませんか? 昔から残っているものとか」
「あれじゃな」
それはこの山に初めて前任の山の神と来たときに見た菱形の巨石だった。
「わしが見たときはこれが立っていた。その上に山の形をしてぴかぴか光る岩が乗っていたな。
まぶしいから払い落としてやったが、まだそこらにあるじゃろう」
どうやら御山は古代の建造物のようだった。
光る石と言えば、鏡石、もしくはピラミッドの太陽石の可能性だってある。
「その落ちた石の場所、思い出してくださいっ」
「無茶を言うな。いったいいつの話だと思っておる」
「いや、絶対探します」
「捜すなら夜にせい。あの石からも地力が湧き出しておった。
どこかの斜面に転がっているじゃろ」
夜になり、私は頂上から裾へ向かってぐるぐる回りながら地力の光を探し回った。
光が出ていれば簡単に見つかるだろうと考えていたが、なかなか見つからない。
山裾まで降りてもとうとう発見出来なかったが、これで諦めるわけにはいかない。
今度は木々をすり抜け、山体すれすれを飛び、舐めるように探し回った。
みかねた獅子と狛犬、きりも探索に加わり、捜索は一気に早まった。
そして三日後の夜、きりが私を呼ぶ。
「ゆかりさぁーん! 来てくださぁーい!」
「あったの?」
「これ、もしかしてそうじゃないですか」
樹齢数千年と思われる巨大なヒノキの根元にこんもりと生えた苔の隙間からうっすらと光が漏れ出ている。
山に生えている樹木の中で、この木だけが異様な成長ぶりを見せている。
おそらく地力を得ているのだ。
「これだね。でも根っこの下に埋まってるのかぁ。うーん。取り出せるわけ無いか」
きりの声を聞いたのか、山神が現れた。
「どれ、見つかったのか? おお、これじゃこれじゃ。
しかしまぁ、よく残っておった」
「でも取り出せそうに無いのですよ」
「そうか。まぁ見ておれ」
山神は巨大な幹に手の平を当ててつぶやく。
「すまんが足もとの石を出してくれんか」
すぐに反応があった。巨木は幹を揺らし、葉を落としながら動き出した。
根元の土が盛り上がり、みごとな四角錐の石が土から湧き上がってきた。
「な、なんじゃこりゃぁぁ」
それは石と呼ぶには大きすぎた。
一辺が三メートルはあるだろう。ちょっと見た感じ公衆トイレの屋根サイズだった。
そして岩の頂点から細いが力強い光柱が立ちあがっていた。
ともかく、こんな大きなものを掘り出してくれたヒノキに向かって礼を言った。
「ありがとうございます。これで山を護れます」
巨木は一度幹を揺らし、また静かになった。
「山神様、凄いです! おかげさまで鏡石を発見出来ました」
「そんなものが役に立つのか?」
「おそらくは」
私は岩に触れず、そのままにしておいた。
そして急いで拝殿に戻ると女神服に変わり、ある人物の夢に入っていった。
――おぬしの夢を叶えよう
御山に登れ
一番大きなヒノキの根元にそれはある
おぬしならばそれがなにか分かるはずじゃ
急げ
そして工事を止めよ
ゆめゆめうたがうことなかれ――
翌朝一人の青年が御山に入り、一日中捜し物をしている姿があった。
二日目の陽が沈む前に、その青年は山を駆け下り、その勢いのまま家へ戻っていった。
二日後。
「教授、この山です。現場は少し登るのですが大丈夫でしょうか?」
「あぁ、もちろんだ青山君。考古学はフィールドワークだよ。
このくらいの山なんて楽なもんさ。
それにしても、この山、見れば見るほど怪しい形をしているじゃないか。
もし、それが本物であれば、キミの大発見となるよ。
教え子が卒業してからも研究を続けて成功してくれたら嬉しいよ」
「もし本物であれば、本格的な発掘調査に掛かりますよね。
実はこの山、これから大きな工事が入ってしまう予定なのです」
「なんだって、ううむ。とりあえずは調査をしなくては。
キミの言うものが確かならば、ほとんど完全な形での鏡石発見ということになる。
工事なんかやらせてたまるものか」
(青山君、フットワーク軽いなぁ。こんなに早く調査隊が来るなんてね。
あとは先生がうまく動いてくれれば流れが変わる)
きりが記帳したお願い事ノートには青山君の事が書かれていた。
“世紀の大発見をして考古学者として成功したいです”
それから先は早かった。
教授が教育委員会と協議し、発掘調査の許可が出た。
発掘で山全体が遺跡であることが分かれば工事を中止するしかないのだ。
私は工事を止めさせるために文化財保護法を利用したのだ。
とはいえ、分の悪い賭けだった。
神代からこの場所を知っている古き神、山神がいたから可能性を手繰れたのだ。
「さぁて、発掘前には宮司さんに現場の安全祈願と山神様へのお礼の祝詞を上げて貰わなきゃね」
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