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神々しい神社の写真
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取材に来て貰う来週までに『稲荷神社の良いところ』を見つけなくてはならない。
「なんでこんな忙しいことになっちゃうのかなぁ。
私は自分の神社でのんびり暮らすはずだったのにー」
「ゆかりさん、それじゃほかのサボってる神様と一緒ですよ」
「きりがこんなに真面目な子だとは思わなかったぁ。
私と一緒にずっとゴロゴロして暮らすのが幸せだと思っていたのにびっくりだよ」
「わたしだって猫の時はそう思ってましたけど、神使の仕事を貰ってからわたしがちゃんとしなきゃって。
前に八十七社の神使にバカにされてからゆかりさんが立派な神様になれるようにお手伝いするって決めたんですから」
「おまえには苦労かけるねぇ。ヨシヨシ」
きりの決意を無駄にしないためにも、稲荷神社のウカ様と地域の活性化に協力して、神と人との相互発展の手がかりを掴みたい。
仕方なく始めた神様家業だけれど、私の役目というものを果たしてからのんびり暮らしたいのだ。
変な期待されているようだし。
「そうだ、写真なんかどうかな、よく、この光の帯は龍です、この神社には龍神様がいますなんてのが神々しい写真として紹介されてたりするじゃない。
せっかくホンモノのウカノミタマノカミ様が居るんだから、その実在証明写真とか撮れたらすごいことじゃない?」
拝殿で朝の祝詞が終わった葉介は、少し考えてから答える。
「わかりました、今日の昼まで時間があるので、現地の下見に行きます。
そのとき父からちゃんとしたカメラ借りて写真を撮ってみますよ」
「私も行くよ」
「えー」
葉介君が運転す乗用車で街にある彼の実家に行き、クルマを停めた。
「父さん、クルマ置かせてください」
「葉介か、わかった。ん? あーーっ!」
宮司さんが私を見て声を上げる。
「しっ、失礼しました。白蛇山大神様でございますね。
わたくし、初めてお目にかかります」
「宮司さん、いつもお世話様です。夢以外では初めてでしたね。
絶対秘密ですよ!」
葉介がなにを今更といった目で見ている。
いいのだ、私は人と神の架け橋、ハイブリッド神様なのだ。
そういえば神話の時代の神様ってこうだったよなと思い出した。
神話の神々は人の前に現れ、人と結婚し、その子供達はのちにヤマトの重鎮となっていった。
「これからも葉介君にはお世話になります。宮司さんもまた神社にいらしてくださいね。
あの神社を持ち直すのに宮司さんの協力が無かったら大変でしたよ。
山神比売も喜ぶと思うので、是非。
あと、日本酒の『まんさくの花』を久しぶりに呑みたいんだけど、代引きが使えなくて。
手に入ったら買っておいてくださいませんか」
「はいっ! 宮司を務めてこれほど嬉しいことはございません。
ありがたき幸せ。奉納酒もお任せください」
「さて、葉介君カメラ借りて行くわよ」
「はい、父さん、一眼レフを貸してください。
稲荷神社のイメージ写真を撮りに行ってきます」
「あぁ、そうだった、あちらさんに不敬の無いようにな。
それと、稲荷神社の由緒書きがあるから持って行きなさい」
「ありがとうございます」
私達は手土産のいなり寿司を持って稲荷神社を訪れた。
「ウカ様、白蛇山神社のゆかりです」
「こんにちは、今日はどうしたの?」
宇迦之御魂神、ウカ様が姿を見せた。
後ろに八重も立っている。
「これ、手土産です。どうぞ」
「あー、ありがとう。みんなで頂くわ。このいなり寿司美味しいよねぇ」
「あ、ああ、このお方が……」
葉介はうろたえていた。
神道を学んだだけに、これほど高位の神を直接見てしまうことがどのような意味を持っているかわかっている。
ウカ様の美しさ、神々しさ、尊さ、神の圧力は人間に耐えられるものだろうか。
葉介は小声で祝詞を唱えていた。
「うちの葉介君をご紹介します。
稲荷神社の宮司も務めている方の息子さんで、白蛇山神社の神職として今は『なんでも屋』やってもらっています」
「ゆかりさんっ、僕はなんでも屋だったんですか」
「くすくす、葉介さん、そんなに畏まらなくてもあなたの言葉は届きましたよ。
ゆかりさんの神社に居ると勉強になるでしょう?」
葉介はガチガチに緊張していて、私に子犬のような瞳でタスケテタスケテと訴え掛けている。
「ウカ様、葉介君は神々も視えるのです。
私ならともかく、ウカ様ほどの神様は光にしか視えないかと思ってたけど。
どうやら直接視ちゃったようね」
「ゆかりさん、どうしましょう、宇迦之御魂神ですよ、本当の神ですよ」
「わたしはニセモノかいっ」
「直接お話してよいものなんですか?」
「葉介さん。大丈夫よ、心配しないでね。
ところでゆかりさん、今日は葉介さんのご紹介にいらしたの?」
「あ、ウカ様、実は相談があるのですよ。
自分の神社をほっといて、ウカ様のお社に口を出すというのも憚られるのですが。
こんど稲荷神社が取材されるんです」
「取材? わたしの社が?」
ウカ様は小首をかしげて可愛らしい。
「そうです。誌面に載って全国にこのお社を紹介して貰えそうなんですよ」
「あぁ、季刊・高天原みたいなやつね」
(あるんかい)
私は心の中でツッコミを入れた。
私は稲荷神社の広告戦略が葉介のツテでおこなえること、でも稲荷神社の何を大きな特徴として記事にしてもらえば効果的なのかを考えていると話した。
「そうねぇ、この社は特別製ってわけでもないし、しいて言うなら分霊の私がちゃんと祭神として仕事してるってことかな」
「恐れながら、そのとおりでございます。
宇迦之御魂神に直接祈りを捧げられるお社であるというのは、他の社と大きく違うのです。そこで……」
葉介がまた私を見て本題に移って欲しそうだ。
「神の存在を感じられる神社として記事を書いて貰うつもりなんです。
それで、失礼ながらお社の写真を撮らせて頂いて、そのとき少しだけ映り込んで欲しいなぁと」
高貴な神に対して人がカメラを向けるなど、恐れ多い行為だが、ここはウカ様のお許しを頂ければ可能だろう。
「全然いいわよ、そのカメラで撮るのね。
八重、ちょっとわたしの隣に立って。写真撮ってくれるって」
「わたくしなどが神と並び立つなど恐れ多くて……」
「いいのよ、ささ、撮ってみてくださらない」
葉介が数歩下がり、恐る恐るカメラのレンズを向ける。
「はい、それでは撮らせて頂きます」
シャッターを切り、モニターに映った映像を見た葉介が目を見開いて微動だにしない。
「どう? ウカ様のお姿が光とかになって映り込んでくれたら成功でしょ?」
私は動かない葉介に近寄り、モニターをのぞき込む。
「うッ!!」
「どう? 綺麗に撮れた? わたしにも見せて見せて」
ウカ様も頭を突っ込んでモニターをのぞき込んでくる。
なんといういい香り……。
「わぁ、ほらほら、八重もご覧なさい、綺麗に撮れてる。
今はすぐに見られるのねぇ。便利だわぁ」
あってはならない写真が撮れてしまった。
稲荷神社の前に八重の肩を抱き寄せてニコニコ笑っているウカ様がまるでアイドルのスチール写真のようにクッキリと写っていた。
「よ、葉介くんが撮ったからだよ。神様って写真に撮っちゃだめだわやっぱ」
「僕、この写真欲しい……。あ、いや、だめだっ、神の御姿は残しちゃダメだ」
「何でよぅ、これ大きくして社に張り出したら参拝者が増えるんじゃない?」
「ぜーったいだめぇぇぇ」
「絶対だめでございますぅぅ」
私と葉介は慌ててウカ様の提案を却下させていただいた。
「なんでこんな忙しいことになっちゃうのかなぁ。
私は自分の神社でのんびり暮らすはずだったのにー」
「ゆかりさん、それじゃほかのサボってる神様と一緒ですよ」
「きりがこんなに真面目な子だとは思わなかったぁ。
私と一緒にずっとゴロゴロして暮らすのが幸せだと思っていたのにびっくりだよ」
「わたしだって猫の時はそう思ってましたけど、神使の仕事を貰ってからわたしがちゃんとしなきゃって。
前に八十七社の神使にバカにされてからゆかりさんが立派な神様になれるようにお手伝いするって決めたんですから」
「おまえには苦労かけるねぇ。ヨシヨシ」
きりの決意を無駄にしないためにも、稲荷神社のウカ様と地域の活性化に協力して、神と人との相互発展の手がかりを掴みたい。
仕方なく始めた神様家業だけれど、私の役目というものを果たしてからのんびり暮らしたいのだ。
変な期待されているようだし。
「そうだ、写真なんかどうかな、よく、この光の帯は龍です、この神社には龍神様がいますなんてのが神々しい写真として紹介されてたりするじゃない。
せっかくホンモノのウカノミタマノカミ様が居るんだから、その実在証明写真とか撮れたらすごいことじゃない?」
拝殿で朝の祝詞が終わった葉介は、少し考えてから答える。
「わかりました、今日の昼まで時間があるので、現地の下見に行きます。
そのとき父からちゃんとしたカメラ借りて写真を撮ってみますよ」
「私も行くよ」
「えー」
葉介君が運転す乗用車で街にある彼の実家に行き、クルマを停めた。
「父さん、クルマ置かせてください」
「葉介か、わかった。ん? あーーっ!」
宮司さんが私を見て声を上げる。
「しっ、失礼しました。白蛇山大神様でございますね。
わたくし、初めてお目にかかります」
「宮司さん、いつもお世話様です。夢以外では初めてでしたね。
絶対秘密ですよ!」
葉介がなにを今更といった目で見ている。
いいのだ、私は人と神の架け橋、ハイブリッド神様なのだ。
そういえば神話の時代の神様ってこうだったよなと思い出した。
神話の神々は人の前に現れ、人と結婚し、その子供達はのちにヤマトの重鎮となっていった。
「これからも葉介君にはお世話になります。宮司さんもまた神社にいらしてくださいね。
あの神社を持ち直すのに宮司さんの協力が無かったら大変でしたよ。
山神比売も喜ぶと思うので、是非。
あと、日本酒の『まんさくの花』を久しぶりに呑みたいんだけど、代引きが使えなくて。
手に入ったら買っておいてくださいませんか」
「はいっ! 宮司を務めてこれほど嬉しいことはございません。
ありがたき幸せ。奉納酒もお任せください」
「さて、葉介君カメラ借りて行くわよ」
「はい、父さん、一眼レフを貸してください。
稲荷神社のイメージ写真を撮りに行ってきます」
「あぁ、そうだった、あちらさんに不敬の無いようにな。
それと、稲荷神社の由緒書きがあるから持って行きなさい」
「ありがとうございます」
私達は手土産のいなり寿司を持って稲荷神社を訪れた。
「ウカ様、白蛇山神社のゆかりです」
「こんにちは、今日はどうしたの?」
宇迦之御魂神、ウカ様が姿を見せた。
後ろに八重も立っている。
「これ、手土産です。どうぞ」
「あー、ありがとう。みんなで頂くわ。このいなり寿司美味しいよねぇ」
「あ、ああ、このお方が……」
葉介はうろたえていた。
神道を学んだだけに、これほど高位の神を直接見てしまうことがどのような意味を持っているかわかっている。
ウカ様の美しさ、神々しさ、尊さ、神の圧力は人間に耐えられるものだろうか。
葉介は小声で祝詞を唱えていた。
「うちの葉介君をご紹介します。
稲荷神社の宮司も務めている方の息子さんで、白蛇山神社の神職として今は『なんでも屋』やってもらっています」
「ゆかりさんっ、僕はなんでも屋だったんですか」
「くすくす、葉介さん、そんなに畏まらなくてもあなたの言葉は届きましたよ。
ゆかりさんの神社に居ると勉強になるでしょう?」
葉介はガチガチに緊張していて、私に子犬のような瞳でタスケテタスケテと訴え掛けている。
「ウカ様、葉介君は神々も視えるのです。
私ならともかく、ウカ様ほどの神様は光にしか視えないかと思ってたけど。
どうやら直接視ちゃったようね」
「ゆかりさん、どうしましょう、宇迦之御魂神ですよ、本当の神ですよ」
「わたしはニセモノかいっ」
「直接お話してよいものなんですか?」
「葉介さん。大丈夫よ、心配しないでね。
ところでゆかりさん、今日は葉介さんのご紹介にいらしたの?」
「あ、ウカ様、実は相談があるのですよ。
自分の神社をほっといて、ウカ様のお社に口を出すというのも憚られるのですが。
こんど稲荷神社が取材されるんです」
「取材? わたしの社が?」
ウカ様は小首をかしげて可愛らしい。
「そうです。誌面に載って全国にこのお社を紹介して貰えそうなんですよ」
「あぁ、季刊・高天原みたいなやつね」
(あるんかい)
私は心の中でツッコミを入れた。
私は稲荷神社の広告戦略が葉介のツテでおこなえること、でも稲荷神社の何を大きな特徴として記事にしてもらえば効果的なのかを考えていると話した。
「そうねぇ、この社は特別製ってわけでもないし、しいて言うなら分霊の私がちゃんと祭神として仕事してるってことかな」
「恐れながら、そのとおりでございます。
宇迦之御魂神に直接祈りを捧げられるお社であるというのは、他の社と大きく違うのです。そこで……」
葉介がまた私を見て本題に移って欲しそうだ。
「神の存在を感じられる神社として記事を書いて貰うつもりなんです。
それで、失礼ながらお社の写真を撮らせて頂いて、そのとき少しだけ映り込んで欲しいなぁと」
高貴な神に対して人がカメラを向けるなど、恐れ多い行為だが、ここはウカ様のお許しを頂ければ可能だろう。
「全然いいわよ、そのカメラで撮るのね。
八重、ちょっとわたしの隣に立って。写真撮ってくれるって」
「わたくしなどが神と並び立つなど恐れ多くて……」
「いいのよ、ささ、撮ってみてくださらない」
葉介が数歩下がり、恐る恐るカメラのレンズを向ける。
「はい、それでは撮らせて頂きます」
シャッターを切り、モニターに映った映像を見た葉介が目を見開いて微動だにしない。
「どう? ウカ様のお姿が光とかになって映り込んでくれたら成功でしょ?」
私は動かない葉介に近寄り、モニターをのぞき込む。
「うッ!!」
「どう? 綺麗に撮れた? わたしにも見せて見せて」
ウカ様も頭を突っ込んでモニターをのぞき込んでくる。
なんといういい香り……。
「わぁ、ほらほら、八重もご覧なさい、綺麗に撮れてる。
今はすぐに見られるのねぇ。便利だわぁ」
あってはならない写真が撮れてしまった。
稲荷神社の前に八重の肩を抱き寄せてニコニコ笑っているウカ様がまるでアイドルのスチール写真のようにクッキリと写っていた。
「よ、葉介くんが撮ったからだよ。神様って写真に撮っちゃだめだわやっぱ」
「僕、この写真欲しい……。あ、いや、だめだっ、神の御姿は残しちゃダメだ」
「何でよぅ、これ大きくして社に張り出したら参拝者が増えるんじゃない?」
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