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1章 断罪回避
25 イザークの正体
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白いシャツに黒のズボン、というシンプルな格好だ。
なのに顔が美しすぎて、着飾った貴族より輝いて見える。
イザークはドアを閉めると、綺麗な姿勢でお辞儀をした。
「陛下が『アナベルと昼食を共にしろ』と仰せです。僭越ながら同席いたします」
「ああ、うん……私が頼んだの。イザークを呼んでって」
「アナベル様が?」
「うん。都合、悪かった?」
「いえ、問題ありません」
「そ、そっか。じゃあ、こっちの椅子にどうぞ」
私がテーブルの椅子を引くと、イザークはなぜかもう一つの椅子のそばへ歩いていった。
その椅子を引き、座るのかと思ったら、立ったまま私を見つめてくる。
「アナベル様が先におかけください」
「えっ、イザークが先に座りなよ」
「私は平民です。アナベル様を立たせたまま、席に着くわけにはまいりません」
本当は平民じゃないでしょ──という言葉を、私は飲み込んだ。
「……じゃあ、お先です」
私がイザークに近づくと、彼は私の手を取り、席の前に誘導してくれた。
私が座るのに合わせて、椅子が押される。
あまりにも自然なので、恥ずかしいとも思わない。
心地良いとすら感じる。
さすが、元王子。
向かいの椅子にイザークが座ると、見張りの兵士が食事を運んでくる。
(私、失言してたなあ……王子っぽいとか、色々。イザーク、嫌だったよね)
テーブルに並ぶお皿を見つめながら、申し訳なさにため息をつく。
──城に戻る前、イザークにしがみついていたことを謝りそびれた。
そのことに気付いて「話す時間を作ってくれない?」とレオナルドに頼んだ時。
レオナルドは困惑しながらこう言った。
『いいけど、イザークを王子っていうの、やめてやってくれないか?イザークは……本当に王子だったんだ、外国の。あまり公にしてないから、言い回らないでくれよ』
王子が他国で処刑人になる──一体、何があったのか。
聞かなくても、波瀾万丈の日々があったと想像できる。
(イザークにしてみたら、私に会うのも苦痛だったりして……でも、レオナルドに『ちゃんと食事してるのか確認してくれ』って頼まれたし)
あとは、あまり男にベタベタ触るなよ、とも言ってたっけ。
失礼な。人を接着剤みたいに。
(まあ、チラ見はしちゃうかもだけど)
そう思いつつイザークを見ると、彫りの深い顔が、まっすぐ私の方を向いていた。
「アナベル様」
感情は読めないけど、冷たくもない声。
以前より優しい気がして、ドキッとしてしまう。
「な、何?」
「なぜ、私を同席させるのですか」
「え」
そこを突っ込まれるとは予想外だった。
どう答えよう。
「……一人でご飯を食べるのが、寂しくなっちゃって!」
思いついたままを口にしたけど、悪くないと思う。
孤独でも不自然じゃない。
だって死刑囚だもの。
しかし、イザークは無表情で追求してきた。
「陛下にそうお伝えすればよろしいのでは?」
「いや、王様が囚人と食事するわけにはいかないでしょ」
「でしたら、ギデオン様やエリオット様、ルーク様なら融通がきくのでは?もしくは見張りの兵士か」
イザークは、お皿を並べ終えて出ようとする中年の兵士──見張りのジョルジュさんに視線を向ける。
「たしかにジョルジュさんとはよく喋るけど、昼休憩は取ってもらいたいよ。ジョルジュさん、食事の支度ありがとう」
私が手を振ると、ジョルジュさんは済まなさそうに部屋を出ていった。
見張り交代の気配を感じながら、私は白いふわふわパンを手に取る。
「それに、いくら仲が良くても、普通は死刑囚と食事なんて嫌でしょ」
と、温かいパンを口に近づけたところで、慌てて付け加えた。
「私と食事してくれる人は、普通より断然優しいってこと!」
「もしくは異質な者ですか。私のように」
イザークはスプーンを手に取り、無表情で続けた。
「国王陛下から、私の素性を聞かれたそうですね。かつて王子だった処刑人は、珍しいでしょう」
なのに顔が美しすぎて、着飾った貴族より輝いて見える。
イザークはドアを閉めると、綺麗な姿勢でお辞儀をした。
「陛下が『アナベルと昼食を共にしろ』と仰せです。僭越ながら同席いたします」
「ああ、うん……私が頼んだの。イザークを呼んでって」
「アナベル様が?」
「うん。都合、悪かった?」
「いえ、問題ありません」
「そ、そっか。じゃあ、こっちの椅子にどうぞ」
私がテーブルの椅子を引くと、イザークはなぜかもう一つの椅子のそばへ歩いていった。
その椅子を引き、座るのかと思ったら、立ったまま私を見つめてくる。
「アナベル様が先におかけください」
「えっ、イザークが先に座りなよ」
「私は平民です。アナベル様を立たせたまま、席に着くわけにはまいりません」
本当は平民じゃないでしょ──という言葉を、私は飲み込んだ。
「……じゃあ、お先です」
私がイザークに近づくと、彼は私の手を取り、席の前に誘導してくれた。
私が座るのに合わせて、椅子が押される。
あまりにも自然なので、恥ずかしいとも思わない。
心地良いとすら感じる。
さすが、元王子。
向かいの椅子にイザークが座ると、見張りの兵士が食事を運んでくる。
(私、失言してたなあ……王子っぽいとか、色々。イザーク、嫌だったよね)
テーブルに並ぶお皿を見つめながら、申し訳なさにため息をつく。
──城に戻る前、イザークにしがみついていたことを謝りそびれた。
そのことに気付いて「話す時間を作ってくれない?」とレオナルドに頼んだ時。
レオナルドは困惑しながらこう言った。
『いいけど、イザークを王子っていうの、やめてやってくれないか?イザークは……本当に王子だったんだ、外国の。あまり公にしてないから、言い回らないでくれよ』
王子が他国で処刑人になる──一体、何があったのか。
聞かなくても、波瀾万丈の日々があったと想像できる。
(イザークにしてみたら、私に会うのも苦痛だったりして……でも、レオナルドに『ちゃんと食事してるのか確認してくれ』って頼まれたし)
あとは、あまり男にベタベタ触るなよ、とも言ってたっけ。
失礼な。人を接着剤みたいに。
(まあ、チラ見はしちゃうかもだけど)
そう思いつつイザークを見ると、彫りの深い顔が、まっすぐ私の方を向いていた。
「アナベル様」
感情は読めないけど、冷たくもない声。
以前より優しい気がして、ドキッとしてしまう。
「な、何?」
「なぜ、私を同席させるのですか」
「え」
そこを突っ込まれるとは予想外だった。
どう答えよう。
「……一人でご飯を食べるのが、寂しくなっちゃって!」
思いついたままを口にしたけど、悪くないと思う。
孤独でも不自然じゃない。
だって死刑囚だもの。
しかし、イザークは無表情で追求してきた。
「陛下にそうお伝えすればよろしいのでは?」
「いや、王様が囚人と食事するわけにはいかないでしょ」
「でしたら、ギデオン様やエリオット様、ルーク様なら融通がきくのでは?もしくは見張りの兵士か」
イザークは、お皿を並べ終えて出ようとする中年の兵士──見張りのジョルジュさんに視線を向ける。
「たしかにジョルジュさんとはよく喋るけど、昼休憩は取ってもらいたいよ。ジョルジュさん、食事の支度ありがとう」
私が手を振ると、ジョルジュさんは済まなさそうに部屋を出ていった。
見張り交代の気配を感じながら、私は白いふわふわパンを手に取る。
「それに、いくら仲が良くても、普通は死刑囚と食事なんて嫌でしょ」
と、温かいパンを口に近づけたところで、慌てて付け加えた。
「私と食事してくれる人は、普通より断然優しいってこと!」
「もしくは異質な者ですか。私のように」
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「国王陛下から、私の素性を聞かれたそうですね。かつて王子だった処刑人は、珍しいでしょう」
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