絶望のカナタに

ポロすけ

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第一章

ステータスチェック

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チュンチュン

   王宮の窓で朝を知らせるように鳥のさえずりが聞こえる。

   召喚の翌朝、カナタ達は起床時間後に昨夜の食堂に集合していた。

   事前の説明によると今からこの世界でのカナタ達の【ステータス】とやらを確認するらしい。

   そんな異世界ならではのイベントを前に勇者様一行は、

「「「「「眠い……。」」」」」

   綺麗なハモリだった。

   急展開で全員文句ナシの徹夜を完遂した結果、全員の瞼の下に濃いクマが出来ている。

   そんな彼等を差し置き、宮廷メイドがカナタ達一人ずつに銀製の板が配られる。

「それはステータスシートと言われる魔法具だ。登録が完了すれば自分のステータスを見れたり身分証明書にもなる。さっそくステータスシートで自分のステータスを確認してくれ。」

   カナタ達はラキナスに言われるままに登録を済ませ自分のステータスを確認した。

   周りの反応を見る限り固有のスキルや身体能力が浮かび上がるらしい。

   昨日とは打って変わって、皆魔力などの文字を見て盛り上がり始めた。

「確認した者はバーロスにシートを見せてステータスを報告してくれ。作戦の立案にも重要だからな。」

   ラキナスが頃合いを見て指示を出すと生徒達が騒ぎながらステータスを見せ合いながらバーロスのいる奥の机に集まっていった。

(あんまし…自分のステータスとか見られたくないなぁ。少し危険な気もするし。)

そして、カナタのステータスはこうだ。

―――――――――――――――――――
神原カナタ(16) Lv 1
〇称号【終焉者】
〇身体能力
・パワー・・・50
・俊敏・・・70
・体力・・・55
・耐久・・・80
・精神・・・80
・魔力・・・**********
〇スキル
・言語理解
・魔力放射
<エクストラスキル>
[厄災]
―――――――――――――――――――

(なんだこの魔力の欄…!?バグってんのか…?そもそもこの世界にバグとかあんのか?

最後のスキルは……よく分かんないな。誰かに聞くしかないか……。出来ればバーロスさんとかには聞きたくないないんだが…。)

   ステータスを上から順になぞる。その中で魔力の欄だけ、うまく表示されていなかった。

   それに加え最後の

《エクストラユニークスキル》[厄災]

   という文字も意味不明だ。

  右も左も分からない異世界で不明な点を明らかにしない訳にも行かない。

  そこで、他の生徒が知り合いと盛り上がっている中、カナタは自分と同じく一人でいる男子に聞いてみることにした。

「あの……ちょっと聞きたいことがあるんだが…あ、俺神原カナタです。よ、よろしく。」

(ぐっ!友達がいないと挨拶も出来ないのか……!?)

「ん?俺に用?あ、俺は如月レオな!よろしくな!!」

   カナタのコミュ障気味な挨拶にその男子は、

   如月レオだ。

   レオは背丈こそカナタと対して変わらない程だが、明るく気さくで二カッと笑った顔はなんとも愛嬌があり爽やかでもあって、一瞬回りが明るく見えるように錯覚してしまう。

   そんな太陽みたいな男だった。

   カナタと真逆な存在みたい、というのは言ってあげないでおこう……。

   そして、この頃からカナタとレオはお互い遠慮なく話ができる親友になっていき、次第にカナタの中で如月レオという存在がカナタに深く刻み込まれていく事になる。良くも悪くも。

  それはともかく、

「お、おう。よろしく如月。」

「ははっ、レオでいいって!」

「そうか…?じゃあ俺のこともカ、カナタでいい。」

「おう!これからよろしくなカナタ!」

   その笑顔にカナタも少し照れ笑いをこぼす。

   カナタはこの時初めて"友達"といえる存在ができたような気がした。

  "異世界に来て良かったかも……"

  少しだけそんなふうに思えたのは気のせいじゃないだろう。

「それで、聞きたいことって?」

  ここでカナタが内なる世界から覚める。

「そうだった。この魔力のステータスなんだが、なんだか表示がおかしい気がするんだが。きさ…レオの魔力はどうなってるんだ?」

「俺は特に普通だと思うぞ、これ。」

(おぉ…ナチュラルに個人情報を開示か…。)

   レオのステータスはこうだ。

――――――――――――――――――
如月レオ(16) Lv1
〇称号【炎帝】
〇身体能力
・パワー・・・60
・俊敏・・・65
・体力・・・70
・耐久・・・50
・精神・・・55
・魔力・・・80
〇スキル
・言語理解
・火攻強化
・火耐強化
――――――――――――――――――

   カナタのステータスは魔力欄の表示の異常や《エクストラユニークスキル》の欄が無い事以外はカナタとは大差はない。

   スキルの欄を見るとレオは火属性の魔術や耐性に適正があるようだ。

  なお言語理解に関しては先程バーロスから全員が持っていると説明があった。

「カナタのと違ってエクストラスキルみたいなのは無いみたいだけど、おかしいとこはない?と思うぞ。」

「うーむ、そうか…。やっぱりバーロスさんに確認した方が良さそうだなぁ…。超話しかけたくない…。」

「あー…やっぱりカナタもそう思うよなぁ。あのバーロスとか言うじぃさん、なんか違和感っていうか変っていうかな…。」

    バーロスの纏う謎の違和感についてはカナタ含め、生徒の誰もが感じ取っていた。

   カナタは他の何人かの生徒も先程話しているのを見た。

   カナタもバーロスには何となく狂気じみたものを感じていた。王の間で発狂してカナタ達の召喚の成功を喜んでいたのを差し置いても、だ。

   時々不気味な笑みを浮かべたり、何かうわ言のようにブツブツと囁いている。

   それを見ているからこそ"ただ変なだけのおじいさん"とは思えないのである。

   噂をすれば奥の机から"ただならぬ変なおじさん"の例の狂気的な声が聞こえきた。

   周りからも、おぉー!と声があがる。

「おお!!柏崎様と言うのですか!!称号【勇者】を持つ者がぁ!!本当におられるとはぁぁ!!ああ!ララティエ様ぁぁぁ!!」

  どうやらユウトが【勇者】の称号を持っていたことにバーロスが大興奮してしまったららしい。

   目が血走っていて、鼻水やら感動の涙やら出て見られたものでは無い。

   バーロスにステータスを見せに行った生徒はもちろん、護衛の騎士まで若干顔が引きつっている。

「ほらまたやってるよ。すんげぇ気持ちわりぃな……。どうやらユウトが勇者だったらしいな。リーダーって感じだもんなぁ。」

「そうだな。頭良くて運動も出来ればそりゃ勇者様だよな、だいたい予想してた……。」

   遠目でユウトを見るレオは微かに俯く。まるでユウトではなく他の何かを見ているような。

   明るいレオらしくない弱々しい眼差しだった。

「そうだよな……」

「どうしたレオ?  今何か言ったか?」

「…!?  いや、なんでもない」

  カナタは一瞬訝しむが、結局気にせず話を続けることにした。

   そんなユウトは大興奮のバーロスを無視して女子達とイチャイチャしている。勇者というくらいならカナタのような謎のエクストラなスキルもあるのだろうか。

   それにしても、

「レオ、さっきバーロスが言ってたララティエって……。」

   バーロスが先程叫んでいた"ララティエ"なる人物。これまでで一番光悦とした表情かつ放送出来ない表情で叫んでいるのをみると、

   やはり、

「あぁー…あれね。まあ分かるだろ?」

「やっぱり…神国教会が崇めてる"神さま"ってやつか。」

   神国教会 ───

    神大陸及びその広大な大陸全土を神の国への扉とする唯一神、

   «ララティエ»

   そのララティエを盲信的に崇め、レスティーレ全土の無数の教徒で構成されているレスティーレ最大の宗教団体。

   数千万人にも及ぶ全ての神国教徒を統率する最高権力者たる«教皇»の下にその教皇との対話を許されたわずか五人の上位教徒の«子皇»がいる。

  さらにその下位教徒の一般教徒がいるという構成だ。

   バーロスは上位教徒の«子皇»の一人。

   それ故にこのガルフレア魔術公国でも国王のラキナスに次ぐ権力を持っている。

   このことだけでも国が神国教会からの影響を大いに受けていることがわかる。

「そうそう。あんま関わりたくはねぇな。」

   実際、レオの思うように神国教徒ではない者と教徒との個人個人の溝は深い。それ故にこの両者では生活スタイルも大きく異なっているようだ。

   このガルフレア魔術公国は魔術に傾倒する者が多いためか、他国に比べて教徒の数はかなり少ないようだ。

   そうこう考えていると、変なおじさんからまたも歓声(絶叫)が上がる。

「全く…うっさいわね……」

「ちっ…くだらねぇ」

   おぅ!おぅ!とセナとリョウマに向かって喚き散らしている。どうやらこの二人も強力な称号を持っているようだ。

   バーロスはセナとリョウマのステータスを見て大興奮。

   リョウマは汚物を見るような目でバーロスを睨み、セナはバーロスからステータスシートを奪い返して、既にその場に居ない。

  セナの振り返りざまに、一瞬目があっただけで男子達がなにか叫びながら泣いているが知らないったら知らない。

   バーロスのお友達か?とかカナタは思ってしまった。

   そして3人のステータスはこうだ。

――――――――――――――――――
柏崎ユウト(16) Lv1
〇称号【勇者】
〇身体能力
・パワー・・・80
・俊敏・・・75
・体力・・・90
・耐久・・・80
・精神・・・70
・魔力・・・85
○スキル
・言語理解
・全(攻)強化
・全(耐)強化
・成長促進
・回復強化
<エクストラスキル>
[英雄]
――――――――――――――――――

――――――――――――――――――
高梨セナ(16) Lv1
〇称号【奏者】
〇身体能力
・パワー・・・55
・俊敏・・・60
・体力・・・70
・耐久・・・60
・精神・・・95
・魔力・・・80
〇スキル
・言語理解
・心操(攻)強化
・心操(耐)強化
・超速思考
<エクストラスキル>
[軍勢]
――――――――――――――――――

――――――――――――――――――
葛城リョウマ(16) Lv1
〇称号【戦帝】
〇身体能力
・パワー・・・90
・俊敏・・・55
・体力・・・85
・耐久・・・70
・精神・・・65
・魔力・・・45
〇スキル
・言語理解
・剛体
・物理(攻)強化
・物理(耐)強化
<エクストラスキル>
[修羅]
――――――――――――――――――

   見たところ多少のスキルの適正による影響はあるものの、個々人にステータスの差はほぼないようだ。

   スキルも様々で、経験を積んでいけば多種多様な"派生スキル"が出現するそうだ。

   そして例の«エクストラユニークスキル»

  これに関してはユウト、セナ、リョウマのステータスを見た後にバーロスから説明があった。

   バーロスが感動の涙はこれに依る所が大きいだろう。ガルフレア魔術公国に、前回の異世界者の召喚時から語り継がれてきた異世界者達の中でも他の追随を許さない存在がもつ強力無比の力。

   ユウト達のステータスを見た後にバーロスの説明か入った。

   <エクストラスキル>とは、

   曰く、
   
    この特殊スキルは持ち主の元の世界での特徴や立場が大きく関わってくるスキルらしい。

   ユウトはその恐ろしいまでの―<カリスマ>

   セナは天才的な―<頭脳>

   リョウマは圧倒的な―<身体能力>

   エクストラユニークスキルの持ち主文句無しの化け物揃いだ。

   しかし、そのスキルの能力や効果は[英雄]以外は、一つとして同じものは無く、発動させない事には何が起こるか謎らしい。

   それ故に発動の際には最大限の注意を払う必要があるようだ。

   またこのスキルは"条件起動式"。

   つまり、一定の条件下でないと発動することは適わないものなので、いつ何が起こるか分からない。という事だそうだ。

   そして、その特殊能力を持つ人物がもう一人。

   [厄災]の神原カナタは驚愕していた。

「なんで俺まで、そのエクストラスキルとか言う特殊能力の持ち主なんだよ…??」

(俺は柏崎とかとは違ってなんの特徴もなかったはずだけど…はぁ…嫌な予感しかしない……)

「ま、説明があっただけいいんじゃね?」

   レオの言う通り、エクストラスキルというものが何か分かったのは良かったが、分かったが故に余計と見せたくないのだ。

   しかし、魔力欄の異常のこともあり見せずにいる方がよっぽど厄介そうだと思った。

なので現在。

  カナタは深い、それはもう深い溜め息一つ吐き、長蛇の列に並んでいる。

  半分ほどの生徒の確認がおわったようだ。列はゆっくり進んでいる。そこに、

「よう!レオ!久しぶりじゃん!!」

  話しかけてきたのは勇者ユウトだった。

 レオが一瞬ビクッと肩を震わせる。

「お…おう!!ユウト!本当に久しぶりに話す気がするぜ!!」

   レオの声は少し震え気味だ。

   そんなレオの様子に気づいた素振りもなくユウトが話を進めた。

「レオの方はステータスどうだったんだ?俺は勇者?ってやつらしいんだけど今いち実感ないっていうかな~。」

   口ぶりからするとユウトは、セリフとは裏腹にかなり喜んでいるようだ。

   カナタはユウトのカリスマオーラに少し苦手意識を感じ苦笑いを浮かべながら半歩下がる。

   そして、レオもユウトに返した。

「い、いや~!ユウトは昔からすげぇよ!いっつもみんなのリーダーだもんなぁ!」

   やはりレオの様子は少しおかしい。

   カナタはレオの様子が気になり、ここで話を切りにかかる。

「あ、ごめん柏崎、そろそろ順番みたいなんだ…」

「ん?  ああ、分かったよ!またな!」

   カナタが一芝居打つとユウトは、上機嫌に女子達と列から離れていった。

「なぁ、柏崎と何かあったのか…?」

「え、いや……なんもねぇ……それよりもうそろそろ俺らの順番が来るぞ」

  嫌なことでも思い出したのだろうか。レオが苦虫を噛み潰したような表情で答える。

   カナタもそれ以上は詮索しなかった。

(これから知っていけばいいか。友達?なんだしな…。)

   それから数分。

   何気なく雑談をするうちに二人の順番が来た。

   騎士の合図でカナタが正面の壇上に上がる。バーロスの手には生徒達のステータスを記録するための水晶のような魔術具が握られている。

「では、失礼しますぞ。」

「は、はい……。」

   若干引き気味なカナタを差し置きバーロスがステータスを確認し始めた。

「ふむ、カンバラカナタ様、ですか。称号は……なっ…!  【終焉者】ですと…?  いや……そんなまさか…!  有り得ん……!」

  現場の雰囲気が一瞬にして変わる、カナタも動揺を隠せない。

(なんだ…!?  そんなにやばいもんなのか!?  これ?!)

   レオもバーロスの反応の異常さを察して、固唾を飲んで見守る。

   バーロスの額に大量の汗が滲み、ブルブルと震えている。明らかに平静じゃない。

   ユウトやセナ、リョウマのステータスを見た時とは全く違う反応に、周りの騎士達やバーロス達の様子を見ていた生徒達にも微かに緊張が走る。

   すかさず騎士達が声をかける。

「バーロス様!?如何なされましたか!?」

   しかし、バーロスには全く聞こえていないようだ。

「ああぁああぁ!!  馬鹿な!  そんなことがあるはずがない!」

  変態などという呼び名では生ぬるい。

  まさに狂信者と呼ぶべき姿。脂汗や涎を撒き散らして文字通り狂ったように虚空に叫ぶ。

   カナタはその姿に本能的な恐怖を感じて思わず「ひっ…」などと漏らし後ずさる。

   膝はガクガクと震えて上手く立てず、へたり込む。

   そして額に青筋を立てたバーロスの叫びはだんだんと怒気を帯びていゆき、身を乗り出しカナタに掴みかかろうとする。

「貴様ァァァァ!!」

「うぁ……ぁ……」

   カナタは恐怖で身を守ることすら出来ず、ただ硬直し震えるだけだ。

   そして今にもバーロスがカナタに掴みかかるそのわずか一瞬。


   瞬間 ──────

   ドクンッ

「う……!?」

   心臓から全身に駆け巡る覚えのあるフワフワした感覚。
   
   しかし前回とは別物かと思うほどの巨大な感覚のうねり。そしてそれは壮絶な痛みを伴いながら膨れ上がり続ける……<魔力>

「うっっぐぁぁぁああぁああぁぁぁぁぁぁぁああぁああぁぁぁぁああぁぁあああ!!」

  木霊する人外な絶叫。

   そして、

……カチッ

世界に絶望が降り注ぐ ────
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