【完結】華麗に婚約破棄されましょう。~卒業式典の出来事が小さな国の価値観を変えました~

ゆうぎり

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8 閑話 王太子妃になった元男爵令嬢の一人言

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私が一番幸せだったのは学園の卒業式典だった。

王太子が高らかに「結婚する」と言ってくれた。
私は有頂天になった。
だってそうでしょう?
愛されて将来王妃になるのよ。
でもここが私の幸せの最終地点だった。

王太子妃の教育は難しく失敗してばかり。
教育係のため息を聞きながらそれでも励んだわ。

そして、初めて王太子の婚約者としてお茶会を開く事になった。
同年代の女性に招待状をばらまいた。
そうしたら、全ての上位貴族からの返事は同じだった。

『お時間が御座いましたら、お伺いします』

私は男爵令嬢で、貴族の慣習は勉強中だったからそういうものかと思ったの。
教育係が青い顔をしていたのにも気づかなかった。

お茶会当時私はわくわくしながら待っていたわ。
淑女としては失格だけど初めて自らお茶会を開催したのよ。

だけど、開始時間になっても上位貴族は来なかった。
下位の以前より交流がある方がチラリほらりと訪れるだけ。
閑散としたお茶会の場で教育係が言ったわ。

「あの文面は本当にお忙しい方か、欠席を希望された方のものです」
「では、皆様お忙しいだけかもしれないわ」

あるはずのない希望を込めて言った言葉に教育係はただ首を横に振った。

後日上位貴族の一人が王宮に来ていたので聞いたの。

「何故お茶会に参加されなかったの?」

相手の女性は驚いた顔をして言ったわ。

「あら、お茶会が開催されましたの?てっきりお辞めになるものかと。お約束が守れない方ですもの」

意地悪な笑みを浮かべながら、最後に言われた言葉が胸に刺さった。

「あの様に公然と婚約破棄などはしたない事をする方のお茶会では、わたくしはどのようにして良いやらわかりませんもの」




あれからお茶会を開催したことはない。


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