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44 ヘインズ子爵から見たもう一つの出来事3
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私が養子縁組の事情や近隣貴族のあれこれを考えている間にも、バンデルン侯爵はロンバード男爵に詰問を繰り返す。
ロンバード男爵は全く頭が回らない様だ。
「そんな噂聞いた事がない。ナディオからも他の息子からも、近隣で親しくしている貴族からも聞いた事がない」
「この様な繊細で憶測と悪意を含んだ噂など、余程のお節介か親身になってくれる身内位しか本人達に伝えはしないだろう。ただロンバード男爵夫人の耳には入っていたと思うがな。どうせ貴様は夫人の言葉など無視したのだろう」
ロンバード男爵夫妻は政略結婚で、結婚当時夫人には恋人がいたらしい。
義務として子をなしたが、内心よく思っていないのだろう。
一時期夫人はよくこの地を訪れていた。
男爵も夫人は好みではないらしく、この地の代官を務めた事を幸いに王都に戻らず女を囲っている。
その女に色々貢いでいると鉱山夫の間で有名らしい。
当家の調査でも、不正の金の行先として証拠が上がっていた。
「女の言う事など、真に受ける必要を感じないだけです」
「この様な噂は女性の口から上る方が早いがな。男爵は情報を精査する事も出来ないようだ」
侯爵の馬鹿にした様な口調が部屋に響く。
「この地に引っ込んで耳が随分遅いのは理解した。今噂は貴様の耳に届いたがどうする?」
「えっ、どうすると言われても……」
全く頭になかった事は考えられないのか、また固まった。
「まあよい。今の話に直接関係ないからな」
その言葉を聞いて明らかに安堵したロンバード男爵に、侯爵は言葉を投げかけた。
「では、改めて不正と横領の説明を聞こうか。私が隣国へ行って少し経った頃から始まっているが、またクラーラのせいなど言わないだろうな。幼い娘にやり込められていたなど、どれだけ無能か告白している様なものだぞ」
確かに夜会デビューしたばかりなのだから、それ以前となると子供だ。
本来表情も変えず仕える使用人達が、噴き出すのを堪えていた。
「今度はだんまりか。随分と無能に成り果てたものだ。鉱山の発掘調査や事業開始時の情熱は消え失せたか。残念だ」
俯き黙り込んだ男爵に、侯爵は冷たい言葉を投げかける。
「…………かった」
どれ位の沈黙が流れた後か、ロンバード男爵がぽつりと一言零した。
「なんだ?」
「仕方なかった。鉄鉱石より硬い鉱石の鉱脈など探しても見つからない。後可能性のある場所は人跡未踏の険しい岩壁地帯。あの様な崖など渡れない。それなのに何故か何処からか見つかるんだ。鉄鉱石に紛れて現れる。訳が分からない」
鉱脈探しには絶対の自信があったのだろう。
プライドをかなぐり捨て、喚く鉱山技師の姿がそこにあった。
ロンバード男爵は全く頭が回らない様だ。
「そんな噂聞いた事がない。ナディオからも他の息子からも、近隣で親しくしている貴族からも聞いた事がない」
「この様な繊細で憶測と悪意を含んだ噂など、余程のお節介か親身になってくれる身内位しか本人達に伝えはしないだろう。ただロンバード男爵夫人の耳には入っていたと思うがな。どうせ貴様は夫人の言葉など無視したのだろう」
ロンバード男爵夫妻は政略結婚で、結婚当時夫人には恋人がいたらしい。
義務として子をなしたが、内心よく思っていないのだろう。
一時期夫人はよくこの地を訪れていた。
男爵も夫人は好みではないらしく、この地の代官を務めた事を幸いに王都に戻らず女を囲っている。
その女に色々貢いでいると鉱山夫の間で有名らしい。
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「この様な噂は女性の口から上る方が早いがな。男爵は情報を精査する事も出来ないようだ」
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「この地に引っ込んで耳が随分遅いのは理解した。今噂は貴様の耳に届いたがどうする?」
「えっ、どうすると言われても……」
全く頭になかった事は考えられないのか、また固まった。
「まあよい。今の話に直接関係ないからな」
その言葉を聞いて明らかに安堵したロンバード男爵に、侯爵は言葉を投げかけた。
「では、改めて不正と横領の説明を聞こうか。私が隣国へ行って少し経った頃から始まっているが、またクラーラのせいなど言わないだろうな。幼い娘にやり込められていたなど、どれだけ無能か告白している様なものだぞ」
確かに夜会デビューしたばかりなのだから、それ以前となると子供だ。
本来表情も変えず仕える使用人達が、噴き出すのを堪えていた。
「今度はだんまりか。随分と無能に成り果てたものだ。鉱山の発掘調査や事業開始時の情熱は消え失せたか。残念だ」
俯き黙り込んだ男爵に、侯爵は冷たい言葉を投げかける。
「…………かった」
どれ位の沈黙が流れた後か、ロンバード男爵がぽつりと一言零した。
「なんだ?」
「仕方なかった。鉄鉱石より硬い鉱石の鉱脈など探しても見つからない。後可能性のある場所は人跡未踏の険しい岩壁地帯。あの様な崖など渡れない。それなのに何故か何処からか見つかるんだ。鉄鉱石に紛れて現れる。訳が分からない」
鉱脈探しには絶対の自信があったのだろう。
プライドをかなぐり捨て、喚く鉱山技師の姿がそこにあった。
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