恋人だと思っていたのは私だけだったようです~転移先で女神から後付けでスキルを貰えたので、気分を切り替え何とかやっていきます

ゆうぎり

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街の外

1 街の外に出たのですが

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 朝早く私がこの街を出る際、街の門番は無関心に通してくれた。

「入るのはあんなに大変だったのに、出るのは一瞬だよね」

 苦労して小銭を稼いで、街に入ったのは一年と少し前。
 そこから一度も、街の外には出ていなかった。
 気軽に、出入り出来ない立場だったからね。

 以前門番に聞いたら、住人でもない身分証も持っていない私は、一度出ると次に入れる保証はないと言われた。

「確かこの辺りだったと思ったんだけど」

 キョロキョロと周りを見渡し、人がいる所に近づいては確認する。
 街に入れない人達が、無許可で生活している一帯に私は来ていた。
 いつもは朝食の時間のはずが、何故か皆荷物をまとめたりして、出立の用意をしている。

「あっ、いた」

 相手も私を見つけたのか、複雑そうな顔をしていた。

「カーリ、久しぶりだね。どうしたの?」
「街、出てきちゃった」
「……そうなんだ」
「レーナごめんね。入る時、あんなに協力してもらったのに」

 レーナは私がここにたどり着いて、最初に親切にしてくれた女の人。
 最初出会った時、私は歌い疲れて声がかすれていた。
 名前を聞かれたとわかって告げたけど、最初の「あ」が詰まったのか聞き取りづらかったのか。
 上手く伝えられなくて、呼び名が「カーリ」で定着した。

「また、戻るんだろう?」
「もう、戻らない」
「…………そう」

 私以上に沈ませてしまった、ごめんね。

「それより、皆荷物をまとめてどうしたの?」
「あぁ、街からお触れが出て、早急な立ち退きよ」

 話を聞くと、近く王族が来るから街近くにいるな、出ていけとの事らしい。
 道理で皆、出立の準備をしている訳だ。

「レーナは、街には入れないのでしょう?どこに行くのか決まっているの?」
「狩場の林に、皆で隠れる事になっている」
「私もついて行っていいかな?教えて欲しい事とかあって……」

 この国を出ていくにも、今の状況が分からない。
 街を出てこっそりこけしの頭を取り出したけど、返事は返ってこなかった。

 私が無理を言ったせいか、レーナに滅茶苦茶悩まれた。

「いいんじゃないか?連れて行っても」
「ヨハン、でもカーリは身を守れない」

 レーナの旦那さんのヨハンが、助け舟を出してくれた。
 狩場の林には、獣が出る。

 以前の私だったら、身を守る手段なんて一つも持っていなかった。
 でも、今は魔法が使える!

「ほら。これで少しは身を守れるよ」

 小さく、「火」と唱えて手のひらの上に出した。

「ほお、カーリは魔法が使えるのか?それじゃあ、どこかのギルドに入れたんだな」

 街を出る前にギルドに入って、身分証明書だけでも手に入れる事は出来たけれど、私は無視した。
 今更、囲い込まれても嫌だったもの。

「残念ながら、ギルドには登録しないで街を出たの。これは、まだ秘密なんだ。いざと言う時の切り札として隠してるの。この国を出たら、どこかで登録するつもりよ」

「分かった。しかし、折角こんなにスラスラとこの国の言葉が喋れるのに出るのか。勿体ないな」

「隣の国は違う言葉なの?この世界の共通言語だと思っていたけど」

 教会は、たしかそんな事を言っていた。
 魔法やスキルが増えても、私はこの世界の知識が足りない。

「カーリだって、話せなかっただろう?広く知られているが、全ての国で使われている訳ではないのさ」

 久々に再会したのだから一泊位はいいだろう、と先に寝床を確保していた他の人達とも合流した。

 まさか、この一泊があの様な事態に巻き込まれるなんて、その時は思いもしなかった。





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