恋人だと思っていたのは私だけだったようです~転移先で女神から後付けでスキルを貰えたので、気分を切り替え何とかやっていきます

ゆうぎり

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街の外

5 私の魔法はぽんこつだ

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 夕食は、昼食と同じ料理でレーナが手早く作った。
 私も手伝い、皆でさっと食べて洞に避難した。

 他の見廻りの人が、先遣隊が狩りをしている所を見ていたからだ。
 小さな獲物を弓や魔法で仕留めていたらしいが、周りを全く気にしていなかったんだって。

 住民ではない私達は、いないのと同じ事。
 面白半分にこちらに被害が出る前に、隠れようという事になった。

 ここで、ちょっと押し問答があった。
 クルトさんが、洞の前で火を焚くのを反対したのだ。
 結局「獣避けと暖房は必要だ」と言う意見が通り、たき火は使うことになった。

 まとめ役とはいえ、クルトさん一人の反対意見だった。
 殆どの人が求めた意見に対して、強くは出られない様だった。

 日が暮れ、何人かは火の番をする。
 これから数日かにかけ、順番に回すのだ。
 私の番はまだ先なので、今日は早々に就寝した。
 昨日から色々あって、疲れていたからね。

 夜中、誰かの声で目が覚めた。

「ベン、どうした?」
「ん……ちょっと用を足してくる。火ちょうだい」
「寝ぼけて落とすなよ」
「ん……」

 外は曇っているのか、月も星の光もない様だった。
 ベンは、この洞まで一緒に来た同じ位の歳の男の子。

「俺も早く小銭稼いで、街に入るんだ。お前と違って、街に住み続けるからな」

 そう言っては、ちょこちょこと私に絡んできていた。
 私はその都度、「街の人は冷たいよ」と答えている。
 少しして戻ってきたベンの手には、灯りがなかった。

「ベン、火はどうした?」
「ちょっと落としたら消えた。けど、周りの確認はしたからな。これ燃えかすは持って帰ってきてるし、大丈夫」
「……仕方ないな。ちょっと来い。俺も確認する」

 へぇ、確認に行くんだ。
 当たり前といえば当たり前か。

 この時期、木は乾燥していて火は燃え移りやすいとクルトさんから注意を受けていた。
 生木でも簡単に火がつく物があるんだって。

 すぐに二人は帰ってきたが、ベンはかなり渋い顔をしていた。
 行き帰りに、クルトさんの説教攻撃を受けたのかもしれない。

 ベンが横になったのと入れ違いに、私は起き上がった。

「クルトさん、私も少し外に出るね」
「分かった。火いるか?」
「大丈夫。私火魔法使えるようになったから」

 スタスタとクルトさんの隣を通り過ぎ、そう言って「火」と唱えた。

 私は、特に力を入れていない。
 ヨハンに見せたのと、同じ様にしただけだった。
 でも魔法の反応は全く違っていた。

 出てきた火は、林の木々より高く立ち昇った。
 ビックリして手を握ると、火は立ちどころに消えた。

「…………」

 私呆然、クルトさんは最初唖然としていたが、ツカツカと私に歩み寄り頭をグリグリした、痛い。

「な・に・を考えてる?」
「ちょっと失敗して……」

 ほんと、不可抗力だったんです。

「林の中では二度と使うな。二度とだ、分かったか!」
「は、はいぃ」

 私は火を受け取り、急いでその場を離れた。
 人が見てない所まで行って、こけしの頭に文句を言ってやる。

 反応がなくても、言ってやるんだから。




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