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第二章 運命のゲーム

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「じゃあ、さっそく始めましょうか。そっちのベッドに座ってくれる?」

 僕は言われた通り、部屋の隅に置いてあった簡易ベッドに腰掛けた。
 セリカは、コホン、と小さく咳払いすると、緑色の液体の入ったグラスを差し出した。

「これを飲むとしばらく意識を失うわ。そして目覚めた時にあなたは異世界にいる。オンラインRPGアナザーデスティニーに似た、剣と魔法が支配されたファンタジーな異世界によ」

 グラスを手に取って中身を確認する。
 見るからに怪しげな液体だ。
 いきなり飲むのにはさすがに躊躇ちゅうちょしてしまう。

「毒じゃないから大丈夫よ。ただの催眠導入剤みたいなもの。私があなたを異世界に飛ばすのに必要なプロセスと思って」

 もう深くは考えまい。
 ここまできて後戻りしたくないし、たとえこの薬が毒だとしてもそれはそれでかまわない。
 この世に未練なんてないのだから。

「わかった。飲むよ」

 そう言って、僕はその液体を一気に飲み干した。
 すぐに意識がもうろうとしてきて、頭がほわぁんとした感じになる。

「さあ、ベッドに横になって」
 セリカが言う。

 はいはい、仰せの通りに――
 と、夢見心地で、僕はベッドに仰向けに寝た。
 体を横たえただけで、なんだかとても気持ちいがいい。
 そしてものすごく眠い。

 その様子を見ていたセリカは、そんな僕に顔を近づけ、
「有川君、最後に一つだけ、ちょっとした質問をしていい?」
 と、耳元で囁いた。

「……うん」

「ねえ有川君。私たちがいるこの世界って、物質が先にあるから精神が存在するのだと思う? それとも精神が先にあるから物質が存在するのかな?」

「???」

 なんだその質問。
 まったく意味不明だ。

「私が何言ってるかわからないかな? ならごく単純に言い換えるね。あなたは体の方が大事ですか? それとも心の方が大事ですか?」

「ああ、それなら――」

 僕は薄れゆく意識の中で、なんとか答えた。

「――心かな」

「そう」
 セリカはまたにっこりと笑った。
「有川君は私の見込んだ通りの人のようね。大丈夫。あなたはきっと異世界でうまくやれるわ」

「……ありがとう」

「あなたが思えば、それはそこにある――じゃ、頑張って」

 その言葉を聞いたのを最後に、僕の意識は完全に落ちた。

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