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第七章 電話番号
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午後は、アズサと共に渋谷を散策することにした。都内住みであるため、渋谷には何度か足を運んだことがあるが、女の子と二人っきりで歩き回るのは初めてのことだった。
アズサとおしゃべりをしながらぶらつき、面白そうな店や話題の店を見つけたら入る。何の目的もない無為な時間。しかし、その時間は、この上もない至福を雅秀にもたらした。楽しくて堪らなかった。
雅秀は当初、例の黒ジャンパーの男を警戒していたが、姿はあれ以降、確認できなかった。それよりも、楽しさが上回り、やがては頭から男のことなど露のように消え去っていた。
楽しい時間は、すぐに過ぎる。人類が常に抱えている問題だが、雅秀もこれに憂いを覚えていた。アズサと離れたくない。その願望が、心の奥底で鎌首をもたげていた。
だが、いずれは離別の時はやってくる。太陽がビルの間に沈みいく中、雅秀とアズサは渋谷駅へと戻ってきていた。
「それじゃあ私、明日学校があるから」
アズサは、伏し目がちになりながら、そう言う。
「昨日家に帰らなかったけど、ご両親心配していないの? 連絡は?」
アズサは、肩をすくめる動作を取った。
「私、親から見捨てられているから、一日帰らないくらいじゃ連絡こないんだ。それでも帰ったら怒られはすると思うけど」
「……そう」
だったら、しばらくの間、うちに泊まらないか?
その言葉が、口から飛び出そうになって、雅秀は口をつぐんだ。
相手は未成年者。家に招いて宿泊でもさせようものなら、同意があろうと法律に触れるだろう。
おまけにこちらは寮なのだ。発覚は孤独死した場合よりも遥かに早いはず。自ら爆弾を抱えるに過ぎない所業だ。
ここで潔く、アズサと別れる他なかった。非常に残念だ。
雅秀は、思わず肩を落としてしまう。せっかく生きる楽しみを見出せたのに。また明日から孤独の中で、希死念慮を抱いて過ごすのだ。
雅秀が居住まいを悪そうにしていると、アズサはふっと微笑んだ。
そして、自分のスマートフォンを取り出して、操作をした後、画面をこちらに向けて突き出した。
アズサは言う。
「はい。これが私の連絡先」
雅秀は、はっとする。アズサの顔を見ると、彼女は少し気恥ずかしそうにしていた。
アズサは続ける。
「今まで連絡先は、SNSのアカウントだけだったけど、これで直接私のスマホに繋がるから」
雅秀の心臓が高鳴る。アズサのこの提案は、他でもない、こちらに気を許した証ではないのか。
急速に上昇する血圧と、胸のときめきを感じながら、雅秀は、自らもスマートフォンを取り出し、アズサと連絡先を交換した。
「これからよろしくね。雅秀」
アズサはニッコリと微笑んだ。さながらアフロディーテのように美しいと思う。
「う、うん。こちらこそよろしく」
雅秀は、どもりながら答えた。
渋谷駅はラッシュアワーに突入し、周囲は大勢の人々で騒々しかった。
沈みいく真っ赤な夕日が、雅秀とアズサ、そして二人の周辺を照らしている。
アズサの赤みがかった髪が、陽光を受け、まるで燃えているように煌いていた。
アズサとおしゃべりをしながらぶらつき、面白そうな店や話題の店を見つけたら入る。何の目的もない無為な時間。しかし、その時間は、この上もない至福を雅秀にもたらした。楽しくて堪らなかった。
雅秀は当初、例の黒ジャンパーの男を警戒していたが、姿はあれ以降、確認できなかった。それよりも、楽しさが上回り、やがては頭から男のことなど露のように消え去っていた。
楽しい時間は、すぐに過ぎる。人類が常に抱えている問題だが、雅秀もこれに憂いを覚えていた。アズサと離れたくない。その願望が、心の奥底で鎌首をもたげていた。
だが、いずれは離別の時はやってくる。太陽がビルの間に沈みいく中、雅秀とアズサは渋谷駅へと戻ってきていた。
「それじゃあ私、明日学校があるから」
アズサは、伏し目がちになりながら、そう言う。
「昨日家に帰らなかったけど、ご両親心配していないの? 連絡は?」
アズサは、肩をすくめる動作を取った。
「私、親から見捨てられているから、一日帰らないくらいじゃ連絡こないんだ。それでも帰ったら怒られはすると思うけど」
「……そう」
だったら、しばらくの間、うちに泊まらないか?
その言葉が、口から飛び出そうになって、雅秀は口をつぐんだ。
相手は未成年者。家に招いて宿泊でもさせようものなら、同意があろうと法律に触れるだろう。
おまけにこちらは寮なのだ。発覚は孤独死した場合よりも遥かに早いはず。自ら爆弾を抱えるに過ぎない所業だ。
ここで潔く、アズサと別れる他なかった。非常に残念だ。
雅秀は、思わず肩を落としてしまう。せっかく生きる楽しみを見出せたのに。また明日から孤独の中で、希死念慮を抱いて過ごすのだ。
雅秀が居住まいを悪そうにしていると、アズサはふっと微笑んだ。
そして、自分のスマートフォンを取り出して、操作をした後、画面をこちらに向けて突き出した。
アズサは言う。
「はい。これが私の連絡先」
雅秀は、はっとする。アズサの顔を見ると、彼女は少し気恥ずかしそうにしていた。
アズサは続ける。
「今まで連絡先は、SNSのアカウントだけだったけど、これで直接私のスマホに繋がるから」
雅秀の心臓が高鳴る。アズサのこの提案は、他でもない、こちらに気を許した証ではないのか。
急速に上昇する血圧と、胸のときめきを感じながら、雅秀は、自らもスマートフォンを取り出し、アズサと連絡先を交換した。
「これからよろしくね。雅秀」
アズサはニッコリと微笑んだ。さながらアフロディーテのように美しいと思う。
「う、うん。こちらこそよろしく」
雅秀は、どもりながら答えた。
渋谷駅はラッシュアワーに突入し、周囲は大勢の人々で騒々しかった。
沈みいく真っ赤な夕日が、雅秀とアズサ、そして二人の周辺を照らしている。
アズサの赤みがかった髪が、陽光を受け、まるで燃えているように煌いていた。
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