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ポテトのディップはケチャップで
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兄妹のヒューマン系よりの話。
皆様もご一緒にポテト、どうですか?
※一瞬ですが自〇表現があります。ご注意ください。
━━━━━━━━━━━━━━━
「ねぇー!お兄さーん!なにしてるのー?!」
そう声をかけた瞬間、知らない男の人は脚を滑らせて崖から落ちていった。
お兄さんは死ぬつもりだったらしい。 ……真実は分からないが、話しかけて崖の近くで気を反らせてしまったのは、たしかに私だった。
この事件は、深い傷を残したようでその日から発声が出なくなった。
※
あれから3年、わたしも中学生になった。 ……いまでも発声できないのは変わらない。
お母さんやお父さんは「あなたの調子でいいのよ?」というが、いつまでも話せない私への焦りが透けて見える。
同級生達は「かわいそう」と「悲劇のヒロイン乙」派閥にわかれ、たびたび喧嘩になっている。
「悲劇のヒロインぶってんなよ!」「うみちゃんがどれだけ辛いか知らないくせに!」
正直、誰の言葉もどうでもよかった。 ただ、すこしだけ静かにしてほしかった。
「もうやめて」、口に出したくても、喉が狭まり、かすれた音がもれるだけだった。
兄は言う 「たしかにお前は人生に1度あるかないかの大変な経験をした。俺は何も言わない。その代わり、1ヶ月に1度、ファミレスに行くぞ。」
なぜファミレスなのかは分からない。 ドリンクバーで粘り、たまにポテトを頼みつつ夕方まで過ごす。これだけ。謎である。 ………3年経った今も忙しいとき以外は、これを続けてくれている。もしかしたら励ましのつもりなのかもしれない。
「うみ、何食べる?」
私は紙にいつも通りポテト、と小さい文字を書いた。
ディップソースは兄のこだわりでケチャップのみ。理由はやすくてかならずうまいから。ケチである。
※
何回目が忘れたファミレスのある日、兄は私にこういった。
「兄ちゃんな、YouTuberで食っていこうと思う」
あまりにも唐突すぎて、飲んでいたコーラが逆流した。むせる私を見つつ、「あれ、ダメか」と兄はこぼした。
なんでも、最近できた友人に、びっくりするようなことを言えば、声が戻るかもしれない、と吹き込まれたらしい。……誰だその適当なこと吹き込んだやつ、出て来い。
「久しぶりにお前の笑顔が見たいと思ったけど、失敗したな」
睨みつつ、口の周りを吹いていると、また兄がなにか言おうとする。私はそれを手で征した。何度もコーラを吹き出させるようなことを言わないでほしい。
静止している手をどかし、兄は話す。
「兄ちゃんな、結婚を前提にお付き合いをしている人がいるんだ。」
また例の冗談かと思い、じとり、と見ると、まっすぐこっちを向いていた。
「良かったら、今度その人に会ってみないか?」
気が付いたら、私はカバンを勢いよく掴み店から飛び出していた。
あの冗談すら言えない兄が?彼女……意味がわからない! 私は、私のことは、どうでもいいの…?
頭の中で必死に叫んだ。……理解者ではないけれど、唯一私を対等にみてくれていた兄のあの告白に、私は、酷く取り乱していた。
そのあとは1人でゲームセンターに行って、ぬいぐるみを余計むしゃくしゃしながら、必死になって取ろうとした。結果は惨敗だった。
※
「こんばんは、あにちゃんねるです。これは俺、あに、と」「僕、吹き込みくん」「「でお送りしまーす!」」
あのあと兄は本当にYouTuberを始めたらしい。仕事の片手間だから本数は少ないわ、再生数も低いわで、本当にやる気があるのか分からない。
けれど、兄(あに)は動画の〆にいつもこう言う。 「妹が笑ってくれていたらうれしい、おーい、見てるかー?」
━━━━━━━━━━━━━━━
見てるかー?
ということで今回のお話はどうだったでしょうか。
コメント、♡、応援どれかひとつでもして下さると細井のやる気が出ます。
良かったらよろしくお願いいたしますー
皆様もご一緒にポテト、どうですか?
※一瞬ですが自〇表現があります。ご注意ください。
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「ねぇー!お兄さーん!なにしてるのー?!」
そう声をかけた瞬間、知らない男の人は脚を滑らせて崖から落ちていった。
お兄さんは死ぬつもりだったらしい。 ……真実は分からないが、話しかけて崖の近くで気を反らせてしまったのは、たしかに私だった。
この事件は、深い傷を残したようでその日から発声が出なくなった。
※
あれから3年、わたしも中学生になった。 ……いまでも発声できないのは変わらない。
お母さんやお父さんは「あなたの調子でいいのよ?」というが、いつまでも話せない私への焦りが透けて見える。
同級生達は「かわいそう」と「悲劇のヒロイン乙」派閥にわかれ、たびたび喧嘩になっている。
「悲劇のヒロインぶってんなよ!」「うみちゃんがどれだけ辛いか知らないくせに!」
正直、誰の言葉もどうでもよかった。 ただ、すこしだけ静かにしてほしかった。
「もうやめて」、口に出したくても、喉が狭まり、かすれた音がもれるだけだった。
兄は言う 「たしかにお前は人生に1度あるかないかの大変な経験をした。俺は何も言わない。その代わり、1ヶ月に1度、ファミレスに行くぞ。」
なぜファミレスなのかは分からない。 ドリンクバーで粘り、たまにポテトを頼みつつ夕方まで過ごす。これだけ。謎である。 ………3年経った今も忙しいとき以外は、これを続けてくれている。もしかしたら励ましのつもりなのかもしれない。
「うみ、何食べる?」
私は紙にいつも通りポテト、と小さい文字を書いた。
ディップソースは兄のこだわりでケチャップのみ。理由はやすくてかならずうまいから。ケチである。
※
何回目が忘れたファミレスのある日、兄は私にこういった。
「兄ちゃんな、YouTuberで食っていこうと思う」
あまりにも唐突すぎて、飲んでいたコーラが逆流した。むせる私を見つつ、「あれ、ダメか」と兄はこぼした。
なんでも、最近できた友人に、びっくりするようなことを言えば、声が戻るかもしれない、と吹き込まれたらしい。……誰だその適当なこと吹き込んだやつ、出て来い。
「久しぶりにお前の笑顔が見たいと思ったけど、失敗したな」
睨みつつ、口の周りを吹いていると、また兄がなにか言おうとする。私はそれを手で征した。何度もコーラを吹き出させるようなことを言わないでほしい。
静止している手をどかし、兄は話す。
「兄ちゃんな、結婚を前提にお付き合いをしている人がいるんだ。」
また例の冗談かと思い、じとり、と見ると、まっすぐこっちを向いていた。
「良かったら、今度その人に会ってみないか?」
気が付いたら、私はカバンを勢いよく掴み店から飛び出していた。
あの冗談すら言えない兄が?彼女……意味がわからない! 私は、私のことは、どうでもいいの…?
頭の中で必死に叫んだ。……理解者ではないけれど、唯一私を対等にみてくれていた兄のあの告白に、私は、酷く取り乱していた。
そのあとは1人でゲームセンターに行って、ぬいぐるみを余計むしゃくしゃしながら、必死になって取ろうとした。結果は惨敗だった。
※
「こんばんは、あにちゃんねるです。これは俺、あに、と」「僕、吹き込みくん」「「でお送りしまーす!」」
あのあと兄は本当にYouTuberを始めたらしい。仕事の片手間だから本数は少ないわ、再生数も低いわで、本当にやる気があるのか分からない。
けれど、兄(あに)は動画の〆にいつもこう言う。 「妹が笑ってくれていたらうれしい、おーい、見てるかー?」
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見てるかー?
ということで今回のお話はどうだったでしょうか。
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良かったらよろしくお願いいたしますー
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