出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに

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最終章

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 魔獣がいる場所から過ぎ去った馬車だったが、無論クーリアを置いていくという判断などできる訳が無い。

「ヴィクター!止めて!」
「無茶言うな!」
「こっちは制御するので精一杯だよっ!」

 当然だ。クーリアによる強化が施された馬車を、いきなり止めることなど出来ない。今現在でも、2人がかりでようやく制御出来ている程だ。
 さらに言えば、ここで止まれば他の魔獣に追い付かれる危険がある。止める訳には、いかない。

「あぁもうっ!あの子のバカっ!」

 馬車が止まれないならとサラが飛び降りようとする。
 ……しかし、外に出ることは叶わなかった。

「なっ!?」

 馬車をクーリアの防御魔法が未だ覆っていたのだ。それが壁となり、外に出ることが出来なかった。

「…これは、わたしでも壊せないわよ」

 ナターシャがその壁に触れ、そう呟く。
 クーリアの防御魔法は一層ではなく幾重にも重なり合っており、鉄壁であった。
 正直ナターシャが壊そうと思えば壊せなくはないものだったが、馬車そのものが吹き飛ぶ程の魔法が必要であった為に、壊せなかった。

「…恐らく、これはわたし達が王都に着くまで解除されないわ。展開している間、あの子に負担が掛かり続ける。わたし達が早く王都に着くことが、あの子の為になるわ」
「………」

 その言葉を聞き、サラが拳を固く握りしめる。
 ……だが、それはナターシャとて同じこと。本来ならば生徒であるクーリアを守らなければならない立場なのだ。それが、果たせない。

(……何が、冒険者よ。たった1人、守れないのに)

 その時、ナターシャが胸元から何かを取り出す。それは、小さな1枚の石版だった。

「…それは?」

 その存在に、リーフィアが気付いた。
 リーフィアの言葉に反応し、サラも顔を向けたが、それが何かを知っているようだった。実際、もう既に興味を無くし、馬車の後ろ…クーリアのいる方を見つめていた。

「これ?魔導石版っていう、連絡道具よ」

 魔導石版は実力が認められた冒険者に配られる連絡用の魔道具の一種。クーリアが持っている通信具とは異なり、これ一つで様々な場所と連絡を取ることが可能な代物だ。

「今の状況を伝える必要があるから」
「…なるほど」

 伝えるべきことはクーリアのこと……だけではない。王都近くに現れた、大型魔獣の存在も伝えなければならない。
 連絡方法は単純。魔力を流しながら耳に当てるだけだ。その連絡先は…

「………おじいちゃん」

 ナターシャの祖父。ドリトール・マクスウェルだった。



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