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105話
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結局広報になったのか、なっていないのか分からない配信を終えた数日後。瑠華は一人で榛名ダンジョンへと向かっていた。無論今回はちゃんと予約をした上で、だ。
「ふむ…」
目の前でのそのそと動くコガネンを見ながら、瑠華が思案する。わざわざ珍しく一人でダンジョンまで向かった目的は、このコガネンをどうにかして簡単に倒す方法は無いものか探す為であった。
「動きは鈍いが硬いのぅ…」
コンコンと軽く手で叩くと、硬質な音が返ってくる。硬いとはいえ瑠華が少し強く叩けば砕ける程度ではあるが、それがただの人間には難しい事である事は勿論理解している。
「魔法は―――」
以前倒した時と同じく焔の矢を放てば、コガネンの身体が一瞬にして燃え上がった。そしてその場に残ったのは、小さな魔核に焦げた装甲。
「むぅ…これでは素材にならん」
ゴミとなったそれをその辺に放り投げ、はぁ…と落胆した息を零す。火を使えば簡単に倒せるが、ドロップ品は魔核しか残らない。これでは簡単に倒せたとしても意味が無いだろう。……まぁ実際にはただ瑠華の火力が高過ぎるだけなのだが。
「要は危険性が無く安全に楽に倒せれば良いのじゃろう? ……無理では無いかのぅ?」
簡単にそんな事が出来るのなら、誰だってそうしているだろう。
折角わざわざそれを探しに一人で来たのに早々に頓挫し、瑠華が溜め息を吐く。
「隙間を刺しても斬るには相応の力が要るようじゃし」
ザクッと薙刀をコガネンの頭と胴体の繋ぎ目へと突き刺し、手応えを確認するように斬り裂く。“明鏡ノ月”を持ってしても少しの抵抗感を感じる程には硬い。
だからこそ素材に価値が出る訳ではあるが、これを楽に倒せるだけの実力があるなら他にもっとマシな素材を獲得する事が出来るのだ。
「結局、撒き餌で集めて無防備なところを倒すのが無難なのじゃろうな」
だがそれをした場合、予想以上の数が集まる可能性がある。なので基本ダンジョン内において、撒き餌等の行為は禁止されていたりする。
「儘ならんものじゃのぅ…」
いざ人間の立場に立って考えれば、様々な問題が見えてくる。それ自体は未知の領域である為楽しいものではあるが、今はそれが煩わしい。
解決出来ない問題は取り敢えず先送りにして、瑠華がダンジョンの奥へと歩みを進める。実は今回ダンジョンに来たのは、コガネンに関してだけでは無かった。
『要請:破損箇所の修復』
『要請:破損箇所の修復』
『要請:破損箇所の修復』
『要請:破損箇所の―――』
「分かった、分かったのじゃ。いい加減煩いぞ」
サナ達と共にこのダンジョンに訪れた時に感知されたのか、ここにいる間ずっと瑠華の視界の端にその様な文言が出続けていた。
無視する事は出来るが流石に瑠華もあの時はやりすぎた自覚があったので、致し方なくこうして足を運んでいる。
「ここじゃろ? あとは…」
『十七階層から二十五階層の通路にて多数の損傷、破壊を確認』
「……そんなに壊しておったかの?」
そこまで壊した自覚は無いが、無遠慮に魔法をばら撒いた記憶はある。本気には程遠いとはいえ、それでもダンジョンの内壁を破壊するには十分な威力があったのだ。
ダンジョン側の指示の元、破損箇所まで向かい魔力を流して自己修繕を促進する。その際不必要な変質を促さないよう、魔力の質を調整しておく事は忘れない。
「しかし何故修復がこうも進んでおらんのかと思うたが……妾の“龍氣”が邪魔をしておったのか」
魔力とは異なるその力は、瑠華が龍人形態の時に発する扱い切れなかった余分な力である。
根本から異なるその力は人間は勿論、ダンジョンや世界でさえも扱えない力だ。それが魔力の流れを阻害してしまっていた為に、破損箇所の修復が出来ないでいた。
「これで全てじゃな?」
『はい。レギノルカ様、御協力感謝致します。しかし今後はお控えください』
「うむ…ちょっとくらいならば良くないかえ?」
『駄目です』
「駄目か…」
少し落胆しつつ思ったよりも感情豊かな“世界”に内心驚くが、これ以上負荷を掛けるのも本望では無いので諦める。
(手加減のぅ…最近あまり上手く出来んのじゃよなぁ…)
今の所問題は特に起きていないが、コガネンの素材を焦がしてしまったことを考えるに魔法の手加減は大分怪しくなっているように思う。
「魔法を禁止…するよりかは、やはり制御を何とかするしか無いのじゃろうなぁ…」
その為には練習する為の場所が必要だが、ダンジョンからは拒絶されてしまった。しかし【柊】でするのは流石に危険過ぎる。
「…帰るか?」
一瞬その考えが頭を過ぎる。突拍子も無い考えかもしれないが、案外ありかもしれないなと思い―――すぐに頭を振って否定した。
「駄目じゃ。何時戻って来れるか分かったものでは無い」
こちらとあちらでは、時間の流れが違う。元々あちらの時間軸を基準として生きていた瑠華からすれば、そのズレが大きいものである事は理解出来た。
(最悪帰って来た時には、既に奏達が死んでいてもおかしくは無い。それだけは受け入れられぬ)
少しあちらで会話を交わしただけで数年、最悪数十年か数百年は経過してしまう可能性がある。そんな危険性を孕んでまで、戻りたいとは思えなかった。
「はぁ……下に憂さ晴らしのモンスターは居らんかのぅ…?」
『否定。該当無し』
「…答えたのはダンジョンの方か」
『肯定』
「素直じゃのぅ…ほんにおらんのかえ?」
『肯定。召喚は可能』
「……良いのか?」
『空間隔離。運用魔力流用可能。推定所要時間五分。可否』
「…ならばやってみるかの」
「ふむ…」
目の前でのそのそと動くコガネンを見ながら、瑠華が思案する。わざわざ珍しく一人でダンジョンまで向かった目的は、このコガネンをどうにかして簡単に倒す方法は無いものか探す為であった。
「動きは鈍いが硬いのぅ…」
コンコンと軽く手で叩くと、硬質な音が返ってくる。硬いとはいえ瑠華が少し強く叩けば砕ける程度ではあるが、それがただの人間には難しい事である事は勿論理解している。
「魔法は―――」
以前倒した時と同じく焔の矢を放てば、コガネンの身体が一瞬にして燃え上がった。そしてその場に残ったのは、小さな魔核に焦げた装甲。
「むぅ…これでは素材にならん」
ゴミとなったそれをその辺に放り投げ、はぁ…と落胆した息を零す。火を使えば簡単に倒せるが、ドロップ品は魔核しか残らない。これでは簡単に倒せたとしても意味が無いだろう。……まぁ実際にはただ瑠華の火力が高過ぎるだけなのだが。
「要は危険性が無く安全に楽に倒せれば良いのじゃろう? ……無理では無いかのぅ?」
簡単にそんな事が出来るのなら、誰だってそうしているだろう。
折角わざわざそれを探しに一人で来たのに早々に頓挫し、瑠華が溜め息を吐く。
「隙間を刺しても斬るには相応の力が要るようじゃし」
ザクッと薙刀をコガネンの頭と胴体の繋ぎ目へと突き刺し、手応えを確認するように斬り裂く。“明鏡ノ月”を持ってしても少しの抵抗感を感じる程には硬い。
だからこそ素材に価値が出る訳ではあるが、これを楽に倒せるだけの実力があるなら他にもっとマシな素材を獲得する事が出来るのだ。
「結局、撒き餌で集めて無防備なところを倒すのが無難なのじゃろうな」
だがそれをした場合、予想以上の数が集まる可能性がある。なので基本ダンジョン内において、撒き餌等の行為は禁止されていたりする。
「儘ならんものじゃのぅ…」
いざ人間の立場に立って考えれば、様々な問題が見えてくる。それ自体は未知の領域である為楽しいものではあるが、今はそれが煩わしい。
解決出来ない問題は取り敢えず先送りにして、瑠華がダンジョンの奥へと歩みを進める。実は今回ダンジョンに来たのは、コガネンに関してだけでは無かった。
『要請:破損箇所の修復』
『要請:破損箇所の修復』
『要請:破損箇所の修復』
『要請:破損箇所の―――』
「分かった、分かったのじゃ。いい加減煩いぞ」
サナ達と共にこのダンジョンに訪れた時に感知されたのか、ここにいる間ずっと瑠華の視界の端にその様な文言が出続けていた。
無視する事は出来るが流石に瑠華もあの時はやりすぎた自覚があったので、致し方なくこうして足を運んでいる。
「ここじゃろ? あとは…」
『十七階層から二十五階層の通路にて多数の損傷、破壊を確認』
「……そんなに壊しておったかの?」
そこまで壊した自覚は無いが、無遠慮に魔法をばら撒いた記憶はある。本気には程遠いとはいえ、それでもダンジョンの内壁を破壊するには十分な威力があったのだ。
ダンジョン側の指示の元、破損箇所まで向かい魔力を流して自己修繕を促進する。その際不必要な変質を促さないよう、魔力の質を調整しておく事は忘れない。
「しかし何故修復がこうも進んでおらんのかと思うたが……妾の“龍氣”が邪魔をしておったのか」
魔力とは異なるその力は、瑠華が龍人形態の時に発する扱い切れなかった余分な力である。
根本から異なるその力は人間は勿論、ダンジョンや世界でさえも扱えない力だ。それが魔力の流れを阻害してしまっていた為に、破損箇所の修復が出来ないでいた。
「これで全てじゃな?」
『はい。レギノルカ様、御協力感謝致します。しかし今後はお控えください』
「うむ…ちょっとくらいならば良くないかえ?」
『駄目です』
「駄目か…」
少し落胆しつつ思ったよりも感情豊かな“世界”に内心驚くが、これ以上負荷を掛けるのも本望では無いので諦める。
(手加減のぅ…最近あまり上手く出来んのじゃよなぁ…)
今の所問題は特に起きていないが、コガネンの素材を焦がしてしまったことを考えるに魔法の手加減は大分怪しくなっているように思う。
「魔法を禁止…するよりかは、やはり制御を何とかするしか無いのじゃろうなぁ…」
その為には練習する為の場所が必要だが、ダンジョンからは拒絶されてしまった。しかし【柊】でするのは流石に危険過ぎる。
「…帰るか?」
一瞬その考えが頭を過ぎる。突拍子も無い考えかもしれないが、案外ありかもしれないなと思い―――すぐに頭を振って否定した。
「駄目じゃ。何時戻って来れるか分かったものでは無い」
こちらとあちらでは、時間の流れが違う。元々あちらの時間軸を基準として生きていた瑠華からすれば、そのズレが大きいものである事は理解出来た。
(最悪帰って来た時には、既に奏達が死んでいてもおかしくは無い。それだけは受け入れられぬ)
少しあちらで会話を交わしただけで数年、最悪数十年か数百年は経過してしまう可能性がある。そんな危険性を孕んでまで、戻りたいとは思えなかった。
「はぁ……下に憂さ晴らしのモンスターは居らんかのぅ…?」
『否定。該当無し』
「…答えたのはダンジョンの方か」
『肯定』
「素直じゃのぅ…ほんにおらんのかえ?」
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