異世界転移は定員オーバーらしいです

家具屋ふふみに

文字の大きさ
18 / 130
第2章

ランク

しおりを挟む
 訓練場から出て、また受付に戻ってきた。

「じゃあ今からギルドカード作っちゃうから、待っててね」

「はーい」

 作るって言ったけど、魔法の適性とか見てないし、模擬戦もしてないけど、大丈夫なのかな?

「はい、出来たわよ」

「はや?!」

「ふふふっ。ここのギルドにはこれがあるからね」

 そう言って指さしたのは、四角い箱みたいなの。

「これに必要な情報を書いた紙をいれると、すぐに作ってくれるのよ」

 コピー機みたいな感じかな?

「じゃあこれがマリーナちゃんのギルドカードよ。無くさないようにね」

「はい!でも、もし無くしたらどうするんですか?」

「その時は再発行できるわ。ただし、金貨1枚かかるけどね」

 ふむふむ。要するに罰金みたいな感じかな。貰ったギルドカードは、免許証くらいのサイズ。だけど何も書かれていない。

「自分の魔力を流すと、文字が出てくるわ」

 そう言うので、魔力を流してみる。するとギルドカードが一瞬光り、文字が表れた。そこには名前、魔法適性、クラス…そして、Cランクと書かれていた。どれくらいなんだろ?

『Cランクは、上から4番目にあたります』

 え、高くない?!

『ランクは高い方から順に、S.A.B.C.D.E.Fまであります。なのでCは丁度真ん中のランクです』

 それは…どうなの?

「うん、大丈夫そうね。ランクに関しては、一気にそこまでしか上げることができないの。ごめんなさいね」

「え?!とんでもないです!むしろ高すぎるくらいです!」

「そう?マリーナちゃんの魔法を見る限り、BどころかAはありそうなんだけど…」

「そんなにないですよ」

『Sオーバーくらいですね』
  
 それもないわ!!

「うーん…まぁマリーナちゃんがそういうのなら、そういうことにしとくわ」

 しとくって…もう、訂正するのもめんどくさくなってきた…それでいっか。

「あ、ギルさんたちは?」

「ギルたちなら今ギルマスと話してるはずよ。それまでそこのソファで待つ?」

「はい、そうします」

 ギルさんたち、早くこないかなぁ~。

 ーーーーーーー

 俺たちはマリーナと別れ、ギルマスの部屋に向かっている。

「ねぇ?あれ、どう思った?」

「あれってなんだ?」

「マリーナちゃんの親のことよ。マリーナちゃん、目が覚めたら森にいたって言ってたでしょ?」

 そういえばそんなことも言ってたな。

「それがどうしたんだ?」

「もう!気づかないの?マリーナちゃんが、実はもう…って言ったのよ?つまり、親が亡くなっていることを知っているってことでしょ?」

「いや、マリーナはそれだけしか言ってないぞ?親が亡くなったとかは一言も言ってないじゃないか」

「あれ?そういえば…」

 そう、マリーナは一言も親が亡くなっているとは言っていない。数日過ごして分かったが、マリーナは5歳とは思えないほど頭がいい。知らないと答えるより、思わせぶりな言動をすることで紛らわしたんだろうな。

「その話は後にするぞ。今は報告だ」

 そう言って俺は、ギルマスのいる部屋のドアを開けた。

「おお、ギル!よく帰ってきたな!」

 出迎えたのはいつもみる、髭もじゃのじじぃだ。今はヨボヨボに見えるが、かつてSランクに上り詰めたこともある、凄腕の冒険者だ。

「して、報告とな?」

「ああ、とりあえず座っていいか?」

「おお、そうじゃった!ほれ、座れ座れ。今茶を出す」

 このギルマスとはよく酒を飲む仲だ。だからいつもこんな感じだ。

「報告となると…深淵の森に関してかの?」

「ああ、そうだ。俺たちの受けた依頼は、フォレストラビットだったろ?」

「そうじゃったの。それがどうかしたのか?」

「それがなぁ…全然出会わなかったんだよ」

「出会わなかったじゃと?そこまでレアな魔物ではあるまい?」

 深淵の森には、数多くの魔物が生息している。フォレストラビットのその内の一体だ。だから、深淵の森に入ったら、必ずと言っていいほど遭遇する。それなのに、遭遇することが出来なかったんだ。

「ああ。代わりにバレットラビットに遭遇した」

「バレットラビットじゃと!?一体どこまで行ったんじゃ?」

「そこまで深いところじゃない。本来バレットラビットは生息していなかったとこだ」

「なんじゃと?!」

 驚くのも無理はない。バレットラビットが生息するのは、深淵の森の最奥。最も魔素が濃く、強力な魔物がいる場所だ。そこに入るには、それこそSランクの実力が必要と言われるほどに。

「もしそれが本当なら…大変なことになるぞい…」

 本来弱い魔物が生息しているところに強い魔物が出てくると、無論弱い者は蹂躙される。そして、弱い魔物を求めてきた冒険者もだ。

「できる限り早く、情報を集めたほうが良いと思うぜ」

「ああ…分かった。じゃあ報告感謝する」

「またな」

 そう言って俺たちは、ギルマスの部屋を後にした。

 ーーーーーーー

 ソファでボケェ~ってしてると、ギルさんたちが受付のカウンターから出てきた。

「おかえりなさい!」

 私は満面の笑みで迎えた。

「おう、待ったか?」

「あんまり待ってないよ!」

「そうか。で、どうだった?」

 どうだった…模擬戦のことかな?

「模擬戦はしなかったよ」

「は?!ちょ、それどういうことだ?!」

 いや、そんなに詰め寄られても困るんだけど!?

「ギル、顔怖いわよ。マリーナちゃん、どういうこと?」

「なんか魔法適性を見るって言われて、水魔法使ったら、もういいって言われた」

「それ本当?」

「うん」

 そう言って頷くと、リナさんはカリナさんがいる受付に行ってしまった。なんかまずいこと言ったかな?

「その顔、なにも理解してないね~」

 バケットさんがそう言うけど…なんのことかさっぱりわかんない。

「どういうことなんです?」

「実はね、登録の時の模擬戦とかは、絶対にしないといけないって、決まりがギルドにはあるんだよ」

 え、まじですか?それならカリナさん職務怠慢みたいな感じになってるってこと?

「やっと分かったみたいだね~」

「そんなこと知りませんでした…あ!カリナさんは大丈夫なんでしょうか?」

「こんな時でも相手のことを考えるなんてお人好しだねぇ~。まぁ大丈夫だと思うよ。ほら」

 バケットさんが指さした先には、呆れた顔のリーナさんと苦笑するカリナさんがいた。あれ?あ、帰ってきた。

「マリーナちゃん…的を壊したみたいね?」

「うん、なんか壊れちゃって」

「はぁ…なら、カリナの模擬戦をしないっていうのは正しい選択だったかしらね」

「え?どういうことですか?」

「あの的はね?本来魔法の魔力を吸収する仕掛けがあるの。だから、魔法で壊れることはない…はずなのよ」

 ま、まじですか?!

「…やっちゃいましたか?」

「まぁそれだけで、マリーナちゃんが凄いってことが分かったのよ。だから模擬戦をしなかったのね」

 それは…なんかやだな。そんなに注目されたくないのに…

「今回のカリナの対応は理解できるわ(下手したらカリナが…)。だから、マリーナちゃんはなにも心配しなくていいからね?」

「…なんか私のせいでごめんなさい」

「マリーナちゃんのせいじゃないわ」

 そう言われてもなんか責任感じるなぁ…

「てことは、マリーナはDランクくらいか?」

「いえ、Cランクです」

「Cランクだと?!そんなことあるのか?」

 疑われたので、ギルドカードを出した。それを見てようやく納得したみたい。

「ほんとにCランクなんだな…」

「まぁ良かったじゃない!じゃあお祝いで食べに行きましょ!」

 ということで食事を食べに、ギルドを後にした。










 …その後ギルマスが組織した調査隊は、深淵の森で何も異常を見つけることができなかったらしい。元凶だった存在が森を去っていたので、生態系が戻っていたのだ。しかし、そのことに気づいた者は誰一人いなかった…本人を含めて。


──────────────────────────────────────────────

フィーナが全然でてきませんが、口数が少ないという設定です。本文に書くのを忘れてました...。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

処理中です...