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第2章
お食事事情
しおりを挟むリナさんがお祝いにご飯を食べようというので、ギルドを後にして、オススメだというお店へと足を運んだ。
「ここよ」
着いたのは人がいっぱいいる食堂みたいなところだった。
「ちょうどお昼時なのね。でも席はあるわね」
勝手に入って席に座るらしい。リナさんとともにお店に入って、席に座った。
「これがメニューね。お金は心配しなくていいわ。だから好きなの頼んでね?」
そう言われても、なんか遠慮しちゃうな…。どれを頼もうとメニューに目を通す。
「え?!」
そこに書かれていたのは、ステーキ、スープ、サラダだけだった。
「どうしたの?」
「…種類はこれだけなんですか?」
「そうだけど…少ない?」
いや、少なくない?3つって…
『この世界は地球ほど食文化が発展していません』
え、そうなの?!
『はい。逆に地球ほど食文化が発展している世界はあまりありません』
ま、まじかぁ~…
「ど、どうしたの?!」
衝撃すぎる事実にぼーっとしていると、リナさんが心配そうに覗き込んできた。
「…なんでもないです」
言える訳ないわ!
「そ、そう…それで決まった?」
いやぁ~決まったも何も選択肢ほぼないじゃん。
「じゃあステーキで」
「サラダはいる?」
「はい!」
リナさんが店員さんに注文してくれた。にしても食文化が発展してないとはなぁ~…
「あ、パンってあるんですか?」
「パン?あるが、あんなもん食うのか?」
え?あんなもんって?
「どんなのなんです?」
「うーん…非常食って感じね」
ひ、非常食…それってカチコチってことかな?
「あ、きたわよ」
その声とともに運ばれてきたのは、お皿に乗ったでっかいステーキだった。食べ切れるかな?それと木のボウルに入ったサラダ…だけど、ドレッシングはなかった。
「これで食べてね」
リナさんが渡してきたのはフォークとナイフ。早速切ってみるけど…
「か、硬い…」
「あ!マリーナちゃん!危ないから切ってあげるね」
リナさんの言葉に甘えることにした。するとさっき私が格闘していたステーキを、いとも簡単に切っていく。え、ナイフ違う?私、そんなスパスパ切れなかったんだけど?
「はい!これくらいなら食べられるわね」
御丁寧に1口サイズに切ってくれた。
「あ、ありがとうございます」
お礼を言って、ステーキにフォークを突き刺す。すると肉汁が切り口から溢れて、口に運ぶとさらに溢れだした。肉質はさっき切れなかったとは思えないほど柔らかかった。
「美味しい?」
「はい!」
薄い塩味かな。でもお肉の味もしっかりしてて、美味しい!ただ、やっぱりちょっと物足りない。ステーキソース欲しいなぁ…あと、ドレッシング。サラダはただの生野菜の盛り合わせだったからね。ある程度のソースやドレッシングのレシピは知ってるから、材料さえあれば作れるけど…こっちでの材料の名前が分からん。
『地球の情報との照らし合わせなら、可能です』
あ、ほんと?じゃあそのときになったらよろしく。
『はい』
「やっぱりここのステーキは美味いな!」
「ほんとにね~」
ギルさんやバケットさんもお気に入りらしい。私も食べるけど、さすがに多い。半分ほど残して、お腹いっぱいになってしまった。
「あら?マリーナちゃんもういいの?」
「はい!もうお腹いっぱいです!」
「そう。それなら良かったわ」
リナさんは…1枚どころか2枚食べてるよ。どこに入ってるの?フィーナさんは、洞穴で話してから、1度も声だしてないけど…サラダばっかり食べてる。お肉は好きじゃないのかな?
「フィーナ、ちょっとはステーキも食べなさいよ」
「…や。これがいい」
「まったく…」
なんかリナさん、お姉ちゃんみたい。私が残したステーキはギルさんが食べてくれた。
食事を終えて、食堂を後にする。
「さてと…これからマリーナはどうすんだ?」
ギルさんからそう言われたけど…どうしようかなぁ。
「今のところは決まってないです。でもお金は欲しいですね」
お金が無いとなにもできないからね。
「金かぁ…そういや、マリーナ収納魔法使えたな?」
無限収納庫のことは、ギルさん達には収納魔法と言ってある。無限収納庫との違いは、容量に限界があることと、時間がそのまま流れてしまうこと。無限収納庫は時間停止なんだよね。
で、なんで言わなかったって言うと……神様がステータス隠蔽してるんだから、言わない方がいいかなってね。
閑話休題。
「はい」
「それにジリル草は入ってないのか?」
「入ってますけど…それが?」
「そいつはポーションなんかには使えないが、滋養強壮の効果があるから、商業ギルドで高く売れるんだよ」
おー!そう言えばそんなことも言ってたね。ジリル草はもう数えきれない程あるし、時間は止まってるから新鮮だしね。高く売れるんじゃないかな?
「なるほど…じゃあ売ってみます!」
「まぁ待て。マリーナは常識ってもんを知らねぇからな。一緒に行くぞ」
私ってそんな常識知らずだと思われてたの?!心外なんですけど!?
そんな私の心の声が聞こえるはずもなく、ギルさんは歩き出してしまった。
「マリーナちゃん、そんなに気にしなくていいわよ!(常識は教えればいいし!)」
…リナさん、聞こえてます。みんなから常識知らずと思われてたのかぁ~…まぁ確かに、この世界についてほとんど知らないからね。そう言われればそうかも知んないけど…やっぱり傷つく。
私は少し落ち込みながら、ギルさんたちの後をついて行った。
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