異世界転移は定員オーバーらしいです

家具屋ふふみに

文字の大きさ
20 / 130
第2章

商業ギルド

しおりを挟む
 ギルさんの後をついて行くと、着いたのはさっききた冒険者ギルドだった。

「ここが商業ギルドなんですか?」

「いや、ここじゃねぇ。商業ギルドは冒険者ギルドの隣にあるとこだ」

 そう言われて隣を見てみると、冒険者ギルドと同じ規模の建物があった。これが商業ギルドだろうか?

「ほれ、行くぞ」

 ギルさんの後をついて行って、商業ギルドに入る。するとカウンターがあるのは冒険者ギルドと変わらないけれど、酒場みたいなのは無い。なんかスッキリとした感じだった。

 ギルさんが受け付けに向かう。

「買取をしてもらいたいんだが」

「はい。何を買い取るのですか?」

「ジリル草だ」

「じ、ジリル草ですか?!」

 なんか受け付けの人が驚いてるけど、そんなに驚くことなのだろうか?顔に出ていたのか、リナさんが説明してくれた。

「ジリル草は採取量が少なくて、希少性が高いの。だからそんなに頻繁に持ってくる人はいないのよ」

 な、なるほど…あの森には大量に生えてたけど、それは言わないほうがいいかもしれない…

「と、とりあえずどのくらいでしょうか?」

 受け付けの人がそう尋ねると、ギルさんは私に顔を向けた。

「マリーナ、どれくらいだせる?」

 どれくらい…

「うーん…百くらい?」

「ひ、百ですか?!」

 あら?かなり控えめに言ったつもりだったんだけど…

「(マリーナちゃん…本当はどれくらいだせる?)」

「(うーん…あと500以上は)」

「(…それ、言っちゃだめだからね?)」

「(は、はーい…)」

 リナさんと小声でそんな会話をしているうちに、ギルさんが話を進めてくれていたみたい。

「と、とりあえず応接室へ案内します…」

 なんか話が大きくなっちゃったよ…私はただお金が欲しいだけなのにね。

「マリーナ、行くぞ」

「はーい」

 トテトテとギルさんの後をついて行く。この体歩幅が小さいんだよね…
 どうやら応接室は2階にあるらしく、階段を登る。そして1つの部屋に入った。中は、テーブルとソファが2つあるだけのシンプルな部屋だった。

「こ、ここです。ギルマスがくるので、それまでお待ちください…」

 そう言って受け付けの人は部屋を出ていった。

「ったく。常識知らずだとは思ってたが、ここまでだとはな…」

「え?!私、そんな常識知らずですか?!」

「当たり前だ!ジリル草100本って、どんだけヤバいか知らないだろ!」

 うん、知りませんでした。だってそこら辺に生えてる雑草みたいに思ってたんだもん…

「まぁ金額の交渉は俺に任せとけ。吹っかけらねぇようにな」

「お、お願いします…」

 確かに私だったら、二束三文で売っちゃいそう…

 そんな会話をしていると、人の気配が部屋に近づいてくるのが分かった。その気配がドアの前で止まり、ドアが開いた。

「すいません、待ってもらって」

 そう言って入ってきたのは、ダンディーなおじいさんだった。

「いや、大丈夫だ。それで?買い取って貰えるのか?」

「ええ。無論です。にしてもジリル草が100本とは…にわかには信じ難いですね…」

「それは同感なんだがな…」

「どういうことです?ギルさんが持ってるんじゃないんですか?」

「いや、俺じゃあねぇ。マリーナが持ってる」

「マリーナとは…」

 部屋にいる人達を見回し、そして私に目を止めた。

「まさか…その女の子ですか?」

「ああ。その通りだ」

 ギルさんからそう言われて、改めて私を見つめる。ていうかギルさんと知り合いなのかな?なんか名前で呼んでたし。

「本当に…いや、収納持ち?」

 わぁお。ビンゴ。まぁ今私はジリル草を入れられるようなバックなんて持ってないから、そう思われるのは当然とも言える。

「うーむ…やはり信じ難いですが…現物を見せてくれますか?」

 ギルさんではなく、私に向かって言った。ギルさんを見ると頷いたので、出して大丈夫だろう。

「はい、これです」

 私は無限収納庫インベントリからジリル草を1本取り出し、ギルマスの人に渡した。

「やはり収納持ち…そしてこのジリル草は紛れもなく本物ですね…はい。ありがとうございます。ではこの箱に出してくれますか?」

 そう言って出したのは木でできた長方形の箱だった。ジリル草100本を入れても大丈夫そうな大きさだ。

「マリーナ、出していいぞ」

 ギルさんから許可を貰い、ジリル草を箱に出す。きっちり100本だ。すると箱の側面に【100】と数字が表れた。どうやら数を数える機能が付いてるみたい。便利だね!

「きっちり100本ですね。そして間違いなく全てジリル草ですね(まさか本当に持っていたとは…)」

 きっちり聞こえてます。絶対普通の人が聞こえないような小声まで聞こえるって、私の聴力ってどれくらいなんだろ?

『意識を集中すれば、1キロ先の針が落ちた音さえも拾うことが出来ます』

 なにそれ怖!地獄耳じゃん!

「ジリル草100本。しかも鮮度がSクラスだから…」

 うん?

「鮮度がSクラスってどういうことです?」

「鮮度がとてもいいってことですよ。冒険者のランクと同じような感じだと思っていただければいいかと」

 へー…

「その顔、どれだけ凄いことなのか分かってないわね…」

 え、あれ?凄いってだけじゃないの?
 そう思い首を傾げると、リナさんがため息をつきながら話してくれた。

「いい?鮮度がSクラスなんて、普通ありえないんだからね?」

「えぇ!?そうなんですか?」

「ええ。私も冒険者として長いけれど、Sクラスの鮮度なんて聞いた事ないわ」

 うわぁー…やらかしたっぽい。

「だからこのジリル草は高く売れます。そうですね…金貨300枚でどうでしょう?」

 どうだって聞かれても…助けを求めてギルさんを見る。

「はぁ…なんかこうなる予感はしてたがなぁ…」

 え、予想してたの?!

「マリーナ、安心しろ。この金額で問題ない。寧ろいい」

 ギルさんがそういうなら、いいのかな?

「ではお金を用意しないと…あ、マリーナさんは商業ギルドに登録していますか?」

「いいえ?冒険者ギルドだけですけど…」

「そうかですか、それなら話は早いです。ちょっとギルドカードを貸していただけますか?」

「いいですけど…なにするんです?」

「商業ギルドに登録するだけです。そうすればギルドカードにお金を入れて買い物もできるようになりますよ」

 ほぇー!電子マネーみたいに使えるのか。なら有難いかな。あ、一応ギルさんに確認…

「大丈夫だ。俺たちもしてるし、大半の冒険者は登録してる」

「そうなんですね。じゃあお願いします」

「では、早速お金はカードに入れておきますか?」

 うーん…そっちのほうがかさばらないけど、もしものために現金も欲しいよね。

「半分は現金で下さい」

「分かりました。ちょっと待っていてください」

 そう言って、ジリル草が入った箱も持って部屋を出ていった。

「まさか300とはな…」

「そんなに凄いんですか?」

「ああ。大抵ジリル草は1本で金貨1枚だからな。しかもそれは売値だ。つまり買い取り自体はもう少し安い」

 ほうほう。つまり約3倍の値段で買い取って貰えたのね。やばくない?

「一気にお金持ちになっちゃったわね」

 確かに、さっきまで無一文だったしね。

「まぁこれだけ貰って、使うのかは微妙なところですけどね」

「それもそうね」

 この世界での月収は金貨5枚ほど。なので300枚っていうのは、60ヶ月分に相当するわけだ。
 …使いきれるかな?

 そんな心配をしていると、ギルマスの人が帰ってきた。

「無事登録は完了です。あと、これが金貨150枚です。ご確認を」

 そう言って、ドンッと机の上に重そうな袋を置いた。こんなにあるの?!

「そして、ギルドカードはお返しします」

 渡されたギルドカードは、何も変わっていなかった。

「マリーナさんの魔力を流せば、残高が分かるようになっています」

 早速魔力を流す。するとうっすらと【150000】という数字が表れた。どうやらリシアで表示されるみたい。

「ちゃんと確認できましたね。商業ギルドにくれば、何時でもそこから出し入れできます。あとこのお金も」

「あ、ありがとうございます」

 危ない危ない、忘れるとこだったよ…

「袋ごと貰って大丈夫ですか?」

「ええ。大丈夫です」

 地球でいう封筒みたいな感覚なのかな?とりあえず袋ごと無限収納庫インベントリに収納した。

「では外まで送ります」

「あ、その前に名前を聞いてもいいですか?」

 そう言えば聞いてなかったんだよね。

「そう言えば言ってませんでしたね。私の名前はローランと言います」

 ローランさんにギルドの外まで送ってもらって、そのまま商業ギルドを後にした。













しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

処理中です...