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第3章

依頼【2】

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 走って無事に森に到着した。鬱蒼と木々が茂り、光が届かなくて少し薄暗い。

「さてと……って、何探すの?」

 薬草は薬草でも色々あるよね?
 ジリル草だって薬草の部類に入るだろうし……

「はぁ…聞いとけば良かった」

『お教えしましょうか?』

 あ、そうだった。ハクがいたんだった。じゃあ教えて?

『はい。今回採取すべき薬草はおそらくポーションなどに使われる薬草です』

 ふむふむ。

『ですので、〖ヒール草〗〖マナ草〗〖キュア草〗などが対象かと思われます』

 なるほど。どうやって見分けるの?

『……索敵スキルを応用すれば見つけやすいです』

 索敵スキルを?

『はい。索敵の対象をヒール草などに設定するのです』

 うーん……設定っていうのがよく分かんないけど、とりあえずやってみよう。

「えっとー…ヒール草を索敵」

 とりあえず言ってみる。すると、足元の草が光った。

「うわ!え、これ?」

 ビックリして思わず飛び退いたけど、多分これだと思う。
 早速鑑定。

 名前:ヒール草

 やった!これだ!
 だけど、どうやって取ろうかな?

『一般的にはナイフで切ります』

 ナイフ…持ってない。
  
『……持ってますよ』

 え?どこにあるの?

無限収納庫インベントリにナイフを確認しました』

 えっとー…何故に?

『グランドリア様が入れてくれたようです』

 あ、そういえばそんなこと言ってたね。早速無限収納庫インベントリを確認してみる。

「おー!なんか色々ふえて…る…」

 声がしりすぼみになっていく。

 ……うん。知ってた。ナイフだけじゃないんだろうなーって。

「……なんか色々と増えてる」

 食料はあまり増えてないけど……武器がなんか色々と増えてる。こんなに使わないからね?!
 ひとまずインベントリの整理なんかは後回しにして、目的のナイフを取り出した。

「お、綺麗」

 柄の部分に花の装飾が施された綺麗なナイフだった。

「えっと、どこから切るの?」

『地面から1センチほどの部分です』

 ハクに言われた通りの場所を切る。
 スパッと綺麗に切断できた。

「さすが神様のナイフ……」

 一瞬指が切れるイメージをしちゃったけど、切れても多分魔法で治せるから安心……うん、多分安心。

「とにかくいっぱい採ろう!」

 周りを見渡してみると、そこかしこで光っているのが分かったので、ひとまずヒール草をとりまくる。





『マリーナ様、そろそろお昼になります』

「え、もう?」

 ハクが言ってくれなかったら気づかなかったよ。思わず夢中になりすぎた。だってそこかしこにあるんだもの。

「うーん…周りに小さな反応はあるけど、無害な魔物ばっかりだね」

 索敵を切り替えて周りを警戒してみたけど、大して問題なさそう。ついでに人もいない。

「よし。だったらここで料理しちゃおう!」

 少し開けた場所を見つけて、無限収納庫インベントリからシステムキッチンを取り出す。

「うわぁー…森の真ん中にシステムキッチンがあるって物凄い違和感」

 そんなことを言いながら準備を始める。ちなみに鍋とかも作ってくれていた。ありがと!アニスお姉ちゃん。

 アニスお姉ちゃんに心の中で感謝を伝えながら着々と準備する。

「うーん…今からできるご飯……あ、お米」

 そうじゃん!今炊けるじゃん!
 土鍋はアニスお姉ちゃんが作ってなかったから、今作ることに。

「あ、そういえば魔法でゼロから作るのと、材料から作るのでは違うの?」

『違います。以前言ったように魔法で作ったものは時間経過、又は魔力を流すことで消滅しますが、材料から作れば、壊れない限り使えます。特に後者は錬金術に酷似します』

 酷似…ってことは、少し違うの?

『違うといっても、錬金術というスキルを使うかの違いです』

 なるほど。私は持ってな『持ってますよ』い…え?

『以前木刀を作った際に獲得しています』

 あ、そう……

「じゃあひとまず作ってみようかな」

 地面に手をついて目を閉じ、イメージを固めつつ魔力を流す。
 しばらく経つと、魔力が流れなくなった。これは完成したってこと。
 恐る恐る目を開けると……

「おぉ!できた!」

 目の前には見慣れた土鍋が出来ていた。向こうの家で使ってたやつ。

「ふふふっ。これでやっとお米が食べれる!!」

 土鍋の中に無限収納庫インベントリで脱穀した白米を入れ、水を計量カップで測って入れる。この計量カップも何故か無限収納庫インベントリに入ってた。多分作ってくれたんだと思う。絶対教会でお礼言わないとね。

 お米に水を吸わせる間に別の料理を作ることに。

「えっとー…今ある食材でご飯のお供になるやつ…野菜炒め?」

 なんかご飯のお供って感じしないけど、それくらいしか作れない……あー、醤油欲しい。
 まぁ無いものを言っても仕方ないので、ちゃっちゃと作る。調味料が足りないから、なんちゃって野菜炒めになるけどね。

 適当な野菜を適当な大きさに切り、オーク肉も切っておく。
 フライパンに油をしいて、まずお肉から炒める。すると辺りにいい匂いが漂い始める。

「うー、いい匂い」

 いい色になったら塩コショウを振り、一旦出す。その間に土鍋を火にかける。

「えっと、まず人参」

 硬い野菜から炒めていく。そしてしなってきたらお肉を投入。
 塩コショウで味を整えて……なんちゃって野菜炒めの完成!

「まだご飯は炊けてないから、一旦無限収納庫インベントリに入れとこう」

 入れておけば冷めないしね。なんちゃって野菜炒めを入れたところで、辺りから視線を感じた。
 思わず辺りを見渡す。すると、草の間から覗くつぶらな瞳と目が合った。

「あー、寄ってきちゃったか」

 よくよく考えればそうだよね。森の真ん中でこんな匂いを漂わせてたら来ちゃうよね。デカい魔物じゃなくてよかった……
 今もちょっとずつ小さな魔物が増えてる。

「ふふっ。おいで」

 ぴょこぴょこと草むらから覗く姿が可愛くて、思わず笑みが零れる。
 手招きをしてみると、恐る恐ると言った感じで、草むらから小さな魔物たちが姿を現した。










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