異世界転移は定員オーバーらしいです

家具屋ふふみに

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第3章

宿とお風呂

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 冒険者ギルドにて用事を済ませると、もう外は暗くなり始めていた。

「じゃあ帰りましょうか」

「はーい」

 冒険者ギルドから久しぶりの宿に戻ってくる。
 ダリオさんは元気にしてるかな。
 ……また師匠と呼ばれるのは御免だけど。

 人はそれをフラグという。


「師匠!!大丈夫だったのか!」

「……はぁ」

 いやまぁ予想はしてたよ。うん。
 でもさぁ。もうちょっと人がいない時にしてくれないかなぁ?

「大丈夫ですからちょっとこっちに…」

「うん?ああ」

 とりあえずダリオさんと共に厨房へ。

「やっぱり師匠ってやめません?」

 ダメ元で聞いてみる。

「いや、呼ぶ」

 ですよね。はぁ…

「じゃあせめて人前では呼ばないで下さい」

 それがギリギリのライン。もう師匠と呼ぶのをとめるのは諦めるけど、せめて人前で呼ばないで欲しい。

「……分かった」

 渋々といった様子で頷いてくれた。やっとだよ…

「じゃあ新しい料理教えますね」

「ほんとか!?」

「きゃ!?」

 いきなり肩を掴んできた。びっくりするからやめて!?

「あ、すまない…」

 痛くはなかったけどね。普通泣くよ?泣いていい?
 ……泣かないけど。

 ダリオさんに教えるのは餃子。
 リナさんに聞いたところ、醤油は知られているらしい。でも、使い方が分からず放置されたものなんだとか。
 だからそんなに売ってない。
 でも、私がレシピ登録をすれば商業ギルドが仕入れるようになるはず。なので供給は問題なくなるはずだ。

「なかなか難しいな」

 ダリオさんが苦戦したのは餃子を包む時。
 ダリオさんの大きな手では難しいみたい。

「じゃあこれ使います?」

 私が渡したのはある道具。
 餃子の皮とタネをセットしてその道具で挟むだけで餃子を簡単に包めるもの。よく百均とかで売ってたやつね。

「これは…やりやすい!ありがとう師匠!」

「どういたしまして」

 念の為土魔法で作っといて良かったよ。
 一通り作り終えたら紙に書いたレシピを渡して、私は厨房を後にした。

「私だって食べたい時、食べたくない時っていうものがあるんですから、前みたいに来ないで下さいよ?」

 最後にそう忠告することは忘れない。

「ああ。あの時は済まなかった。今後はしない」

 素直に頷いてくれたので、良しとする。


「これもマリーナちゃんの料理?」

「はい。試作なので感想を下さい」

 一応完成してはいるけど、少し材料が足りないから、ひとまずリナさん達に試食してもらうことにした。

「美味しいわ!これもレシピ登録しましょう!!」

 リナさんは物凄い乗り気だ。前もこんなテンションだったよね。

「はい。そのつもりです」

「じゃあ明日は商業ギルドか?」

「それと、教会ですね」

 来てと言われてたからね。

「そうか」

「ギルさん達はどうするんですか?」

「俺たちは…休みだ」

 休み?

「マリーナのことを探すってリナが聞かなくてな…」

 あぁー…なるほど。つまり探しまくって疲れていると。

「ご迷惑をおかけしたようで…」

「いや。何度も言うがこっちが勝手に心配したんだ。気にする事はない」

 そう言われると実はのうのうと料理してましたとは言えない…

「じゃあ今日はお風呂に入りましょうか」

 リナさんがいきなりそんなことを言い出した。

「お風呂?」

 あるの?

「まぁ久しぶりに入ってもいいか」

 この世界には魔法があるから、クリーンで済ませてしまう。だからお風呂はそこまで入らないそうだ。
 この宿にもお風呂はあり、宿代とは別料金になるらしい。

「マリーナちゃんはお金のこと心配しないでいいわ」

「でも、宿代払ってもらってますし…」

「それじゃあお祝いってことで」

「お祝い…?」

「そうそう。マリーナちゃんが帰ってきた記念」

 ……なんでそうなる。

「いやいやいや、そんなの記念にしてもらっても困ります!」

「いいからいいから。じゃあ行くわよ」

 リナさんに腕を掴まれ、引っ張られた。

「お風呂使わせて貰いますね」

「ああ。ゆっくりしておいで」

 カウンターでリナさんがお金を払い そのまま奥へと連れていかれた。


 着いたのは、脱衣場みたいな場所。人はいない。少し狭い。

「ここで脱ぐのよ」

 服を脱いでその隣りの扉を開ける。
 すると、湯気がぶわっと流れ込んできた。
 そして湯気が無くなると、中がよく見えるようになった。
 大きめの浴槽にシャワーらしきものが3つほどある。

「使い方は分かる?」

「えっと…分かりません…」

 いやボタンとか無いんだもん。なんかの石が乗っかってるだけ。

「ここに手を置いて、少し魔力を流せば出るわ」

 リナさんが見せてくれる。なるほど。乗っかってる石は魔石か。その魔石に微力の魔力を流すことで水が出るのね。
 やってみると簡単に出来た。

 備え付けの石鹸で洗う。シャンプーはあるけど、リンスは無かった。まぁいいけど。
  プレナは水が苦手らしいので、影に入っている。

 久しぶりのお風呂に浸かる。

「気持ちぃぃ…」

「ふふっ。溶けそうね」

 クリーンで綺麗にするのとは違う。精神的なものだね。

「マリーナ、顔赤い」

「あらほんと。早く上がりましょ」

 強制的にお風呂から出される。そんなに赤かったかな。ちょっとボーッとしたけど。

「はい。髪拭いてあげるわ」

 タオルでリナさんが私の髪を拭いてくれた。

「はい。出来たわ」

「ありがとうございます」

 服をクリーンで綺麗にして、着る。
 カウンターでお風呂から上がったことを伝えて部屋に戻る。

「どうだった?」

「とても気持ちよかったです」

 やっぱりお風呂は大切だね。

「そう。よかったわ。それじゃ寝ましょうか」

「はーい」

 ベットに寝転がると、久しぶりのお風呂でリラックスできたのか、直ぐに眠りについた。
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