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第3章
マリーナ、商売を始める
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次の日。朝から餃子を食べた。
前みたいにダリオさんが来ることはなかったけど、無言の圧力を感じたから。
…怖いよ。人がメニュー見てると遠くからずっと見てくるんだもん。
だから餃子を頼んだ。その時のダリオさんの嬉しそうな顔……うん。忘れよう。
「マリーナちゃんは教会に行くのよね」
「そうですけど、その前にレシピ登録をしに行きます。色々と話さないといけないこともあるので」
特に醤油。それと小麦粉だね。
餃子の皮を作るには、混ざりもののない小麦粉の方がいい。でも、街で見た限り、それが無かった。もしこの街では取り扱ってなくて、他の所にあるのならば、取り寄せてもらう必要がある。じゃないとダリオさんが作れないからね。
という訳で商業ギルドへ。リナさんは付いてくるかと思ったけど、付いてこなかった。意外だ。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご要件でしょうか」
子供の私をみても対応を変えない受付カウンターのお姉さん。さすがです。
「レシピ登録をしに来たんですけど…」
「レシピ登録ですか…失礼ですが、名前をお聞きしても?」
「マリーナといいます」
「まぁ、あなたがあのマリーナさん?」
「あのっていうのが分かりませんけど、多分私です」
なんでこの人が知ってるの?私ってそんなに有名?
「あのロールハーキュは美味しかったわ!」
あ、なるほど。レシピで知ったのね。
ローランさんには、極力私の名前は出さないように伝えていたけど、ギルド職員にはバレちゃうよね。
「じゃあギルドマスターを呼びますので、こちらに」
そう言って案内されたのは前にも来た部屋。
「しばらくお待ちください」
お姉さんは頭を下げて部屋を出ていった。
なんか…嬉しいね。私の料理ではないけれど、喜んでくれたのは。
「すいません。お待たせしました」
しばらくして、ローランさんが入ってきた。
「レシピ登録で間違いないですか?」
「はい。お願いします」
「ちなみに今回はどんな?」
その質問は来ると思っていたので、餃子を出す。
「この醤油に付けて食べてください」
「醤油…ですか。また珍しいものを…」
そんなに珍しいのだろうか?
ローランさんは1口食べると、目を見開いた。
「これは……美味しいです」
そう言ってパクパクと5個あった餃子を食べてしまった。
「レシピ登録出来ますか?」
「はい。もちろんです。少々お待ちを」
棚を漁って紙を取り出してきた。前回と同じように工程と材料などを書き記していく。
「あ、それで相談なんですけど。醤油って取り扱いしてます?」
「今はほとんどしていないですが、この料理には必要そうなので、取り寄せておきます」
「ありがとうございます。それと……」
私は無限収納庫から薄力粉と強力粉をそれぞれボウルに入れて出す。
「これは?」
「これは小麦粉なんですけど、これくらい不純物がない小麦粉ってあります?」
「ちょっと失礼します」
ローランさんが小麦粉を見て、触って確かめている。
「確かにあります。ですが、かなり高級なものです」
やっぱりそうなんだ。
「となると…餃子の皮を一般家庭が作るのは…」
「難しいでしょうね」
私が書いたレシピを見ながらローランさんが言う。でも、これは想定済みだ。
「なら、餃子の皮自体を売り物に出来ませんか?」
「餃子の皮を?」
問題は粉の量なのだ。小麦粉は細かいグラム単位で買えない。だから決まった量になり、餃子の皮1枚を作るのにそこまで粉は要らないのに高くなってしまう。ならば、商業ギルドで大量に作ったものを売ればいい。いわゆる、薄利多売だ。
「餃子の皮1枚にかかる小麦の価格や、販売価格は安いですが、皮は基本大量に売られます。なので1個1個が安くても回収可能です」
儲けようとは思っていない。なので、そこでお金が回ればそれでいい。
「なるほど……それはいいですね。でも、そうなるとレシピ登録に餃子の皮は一緒に載せないほうがいいのでは?」
ローランさんが言いたいことは分かる。独占販売だ。商人としてはそれで正しいのかも知れない。
「私は、なにも儲けようと考えている訳ではありません。美味しい食事でみんなが笑顔になればそれでいい。笑顔は、お金では買えませんから」
私がそう言うと、ローランさんは目を丸くしていた。商人の考え方ではないから、ね。
「そうですか……しかし、いい言葉ですね。笑顔は、お金では買えない。どうも利益のことばかり考えてしまいます」
苦笑を浮かべる。
「それでいいんだと思いますよ。考え方は人それぞれですから」
「ええ、まったくです。では、レシピ登録をしてしまいましょうか」
ミニチュアの神様の像の前でお祈りをする。レシピ登録してください!
すると案の定、またしても[任せなさい!]というアニスお姉ちゃんの声が聞こえた。レシピ登録はアニスお姉ちゃんの仕事なのかな?
「また光りましたね…」
ローランさんはなにかもう諦めたような顔をしている。なんで?
「では皮の話をしましょうか」
そこで決まったこと。
まず工場にて人を10人ほど雇い、餃子の皮を作らせる。小麦粉は高いが、大量買いすると安くしてくれる伝手があるそうなので、お願いしておく。
作った皮は冷蔵庫にて保管。冷蔵庫は氷の魔石を利用しているらしい。
餃子の皮は10枚1セット。価格は400リシア。銀貨4枚。ギリギリ利益を回収できる価格だと言う。
そして私には売り上げの3割がギルドカードに振り込まれる事となった。正直要らないと思ってしまったけど、断ることは出来なかった。
そしてレシピの販売に関しては、2種類になった。
皮の作り方が載っているものと載っていないもの。
載っていないほうが安くなる。価格は800リシアと1000リシア。
「はい。これで完了です。工場が動くのは1週間後ほどでしょうか」
「そうですか。分かりました」
私は必要書類に目を通して、サインしておく。それと、私が持っておかなければならない書類は全て無限収納庫へ。フォルダ分けができたので、仕事というフォルダに入れておく。
「今日はありがとうございました」
「いえ。こちらこそ新しい商売の話をありがとうございました。また来てください」
「はい。では」
私は最後に頭を下げてから、商業ギルドを後にした。
次は教会……の前にお昼かな。
前みたいにダリオさんが来ることはなかったけど、無言の圧力を感じたから。
…怖いよ。人がメニュー見てると遠くからずっと見てくるんだもん。
だから餃子を頼んだ。その時のダリオさんの嬉しそうな顔……うん。忘れよう。
「マリーナちゃんは教会に行くのよね」
「そうですけど、その前にレシピ登録をしに行きます。色々と話さないといけないこともあるので」
特に醤油。それと小麦粉だね。
餃子の皮を作るには、混ざりもののない小麦粉の方がいい。でも、街で見た限り、それが無かった。もしこの街では取り扱ってなくて、他の所にあるのならば、取り寄せてもらう必要がある。じゃないとダリオさんが作れないからね。
という訳で商業ギルドへ。リナさんは付いてくるかと思ったけど、付いてこなかった。意外だ。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご要件でしょうか」
子供の私をみても対応を変えない受付カウンターのお姉さん。さすがです。
「レシピ登録をしに来たんですけど…」
「レシピ登録ですか…失礼ですが、名前をお聞きしても?」
「マリーナといいます」
「まぁ、あなたがあのマリーナさん?」
「あのっていうのが分かりませんけど、多分私です」
なんでこの人が知ってるの?私ってそんなに有名?
「あのロールハーキュは美味しかったわ!」
あ、なるほど。レシピで知ったのね。
ローランさんには、極力私の名前は出さないように伝えていたけど、ギルド職員にはバレちゃうよね。
「じゃあギルドマスターを呼びますので、こちらに」
そう言って案内されたのは前にも来た部屋。
「しばらくお待ちください」
お姉さんは頭を下げて部屋を出ていった。
なんか…嬉しいね。私の料理ではないけれど、喜んでくれたのは。
「すいません。お待たせしました」
しばらくして、ローランさんが入ってきた。
「レシピ登録で間違いないですか?」
「はい。お願いします」
「ちなみに今回はどんな?」
その質問は来ると思っていたので、餃子を出す。
「この醤油に付けて食べてください」
「醤油…ですか。また珍しいものを…」
そんなに珍しいのだろうか?
ローランさんは1口食べると、目を見開いた。
「これは……美味しいです」
そう言ってパクパクと5個あった餃子を食べてしまった。
「レシピ登録出来ますか?」
「はい。もちろんです。少々お待ちを」
棚を漁って紙を取り出してきた。前回と同じように工程と材料などを書き記していく。
「あ、それで相談なんですけど。醤油って取り扱いしてます?」
「今はほとんどしていないですが、この料理には必要そうなので、取り寄せておきます」
「ありがとうございます。それと……」
私は無限収納庫から薄力粉と強力粉をそれぞれボウルに入れて出す。
「これは?」
「これは小麦粉なんですけど、これくらい不純物がない小麦粉ってあります?」
「ちょっと失礼します」
ローランさんが小麦粉を見て、触って確かめている。
「確かにあります。ですが、かなり高級なものです」
やっぱりそうなんだ。
「となると…餃子の皮を一般家庭が作るのは…」
「難しいでしょうね」
私が書いたレシピを見ながらローランさんが言う。でも、これは想定済みだ。
「なら、餃子の皮自体を売り物に出来ませんか?」
「餃子の皮を?」
問題は粉の量なのだ。小麦粉は細かいグラム単位で買えない。だから決まった量になり、餃子の皮1枚を作るのにそこまで粉は要らないのに高くなってしまう。ならば、商業ギルドで大量に作ったものを売ればいい。いわゆる、薄利多売だ。
「餃子の皮1枚にかかる小麦の価格や、販売価格は安いですが、皮は基本大量に売られます。なので1個1個が安くても回収可能です」
儲けようとは思っていない。なので、そこでお金が回ればそれでいい。
「なるほど……それはいいですね。でも、そうなるとレシピ登録に餃子の皮は一緒に載せないほうがいいのでは?」
ローランさんが言いたいことは分かる。独占販売だ。商人としてはそれで正しいのかも知れない。
「私は、なにも儲けようと考えている訳ではありません。美味しい食事でみんなが笑顔になればそれでいい。笑顔は、お金では買えませんから」
私がそう言うと、ローランさんは目を丸くしていた。商人の考え方ではないから、ね。
「そうですか……しかし、いい言葉ですね。笑顔は、お金では買えない。どうも利益のことばかり考えてしまいます」
苦笑を浮かべる。
「それでいいんだと思いますよ。考え方は人それぞれですから」
「ええ、まったくです。では、レシピ登録をしてしまいましょうか」
ミニチュアの神様の像の前でお祈りをする。レシピ登録してください!
すると案の定、またしても[任せなさい!]というアニスお姉ちゃんの声が聞こえた。レシピ登録はアニスお姉ちゃんの仕事なのかな?
「また光りましたね…」
ローランさんはなにかもう諦めたような顔をしている。なんで?
「では皮の話をしましょうか」
そこで決まったこと。
まず工場にて人を10人ほど雇い、餃子の皮を作らせる。小麦粉は高いが、大量買いすると安くしてくれる伝手があるそうなので、お願いしておく。
作った皮は冷蔵庫にて保管。冷蔵庫は氷の魔石を利用しているらしい。
餃子の皮は10枚1セット。価格は400リシア。銀貨4枚。ギリギリ利益を回収できる価格だと言う。
そして私には売り上げの3割がギルドカードに振り込まれる事となった。正直要らないと思ってしまったけど、断ることは出来なかった。
そしてレシピの販売に関しては、2種類になった。
皮の作り方が載っているものと載っていないもの。
載っていないほうが安くなる。価格は800リシアと1000リシア。
「はい。これで完了です。工場が動くのは1週間後ほどでしょうか」
「そうですか。分かりました」
私は必要書類に目を通して、サインしておく。それと、私が持っておかなければならない書類は全て無限収納庫へ。フォルダ分けができたので、仕事というフォルダに入れておく。
「今日はありがとうございました」
「いえ。こちらこそ新しい商売の話をありがとうございました。また来てください」
「はい。では」
私は最後に頭を下げてから、商業ギルドを後にした。
次は教会……の前にお昼かな。
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