異世界転移は定員オーバーらしいです

家具屋ふふみに

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第4章

護衛依頼【6】

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 サーニャさんはずんずん森の奥へと進んでいく。
 その後ろを私が、さらに私の後ろをフィーナさんとバケットさんがついて行く。

 索敵はしてるんだけどねぇ…まぁ見事にいないよ。
 昨日はビックボアが来たり、寝てるときだけどフォレストウルフが来たりしたから、今日も来るかなって思ってたんだけど、全くいない。
 いやまぁありがたいけどね?ただ……このままだと護衛依頼の意味無いなぁーと。

「サーニャさん、目指す場所があるんですか?」

 ちょっと気になったので尋ねてみた。もし手当り次第に探すつもりなら、ちょっと無理があるからね。

「竜霊草は魔素の濃い場所に生えるので、とりあえず魔素が濃い方へ進んでいます」

 なるほど…?でも、魔素が濃いって分かるの?

『これは感覚が頼りになります。マリーナ様からすれば、魔素が濃い場所は居心地がいいので、その感覚がする方が魔素が濃い、ということになります』

 ふむ。とすると、聖域は魔素が濃いってこと?

『その認識で間違いないですが、正確に言えば、聖域は"清らかな"魔素が濃いです』

 うーん。よく分からないけど、別に重要そうではないし、そういうものって理解すればいっか。

 その後しばらく歩いたけど、一向に見つからない。ついでに魔物もいない。
 奥に行けば行くほど木々が鬱蒼としていて分かりにくいけど、日はおそらく既に真上。

「お昼食べます?」

「そう、ですね。そうしましょう」

 サーニャさんが立ち止まったので、私は簡単に作っておいたサンドイッチを無限収納庫インベントリから取り出す。さすがに森の真ん中でテーブルを広げる訳にはいかないからね。手軽に食べれるよう作っておいた。

「どうぞ」

「ありがとう、ございます…」

 恐る恐る私からサンドイッチを貰うサーニャさん。昨日よりもちょっとぎこちない。やっぱり私のせいだよね…

『それは仕方の無いことです』

 それはそうかもしれないけどさぁ。

「マリーナちゃん。俺もいい?」

「あ、いいですよ。どうぞ」

 ギルさんとフィーナさんにも渡し、私もサンドイッチを1つ食べる。
 うむ。上出来。

「ふかふかで美味しいですぅ…」

 そうでしょうとも。このパンにはこだわったからね。

「サーニャさん。今日中に見つかりそうですか?」

「えっと…難しいかと……ただでさえ貴重な薬草ですから」

 まぁそうだと思う。今いる場所は私からしたら少し居心地がいいので、おそらく魔素が濃いんだろう。それでも、魔素が濃いからって竜霊草があるとは限らない。まだまだかかりそうだな……

 休憩を終えて、また歩き出す。私も目を凝らして探すけど、赤い薬草はない。目立つ色だと思うんだけどなぁ…

「……っ!あれはっ!」

 サーニャさんがいきなり駆け出した。って速いな!?さすがハーフ…って、そんなこと考えてる場合じゃない!私から離れたことで、サーニャさんの周りに魔物が集まり始めちゃってる!

「サーニャさんっ!」

 私も急いでサーニャさんのもとへと駆け寄る。

「ちょっ!はやっ…!」

 後ろでなんか言ってるけど気にしない!

「ありました!」

 サーニャさんが手に持っていたのは、赤い薬草。ほんとに赤いな!

「サーニャさん、あまり離れないで下さい!」

「ご、ごめんなさい…つい」

 私が近づいたことで魔物は大方撤収したみたいだけど、それでもまだ残っているみたいだ。
 サーニャさんもそれに気づいたらしく、すこし顔が青ざめている。

「サーニャさん。どれくらい戦えます?」

 一応聞いておく。ハーフとはいえ、龍だし。

「えっと…すいません。あまり戦力には…」

 だと思ったよ!だって戦えるなら護衛依頼なんて出さないだろうからね。

「じゃあ動かないで下さいね」

 私はサーニャさんの周りを結界で覆う。これで大丈夫なはずだ。

「やっと追いついた…って、なんか魔物集まってない!?」

「ほんと……凄い数…」

 そうでしょうね。減ったとはいえ、30くらいの反応があるんだから。

「バケットさんとフィーナさんはサーニャさんを頼みます」

「えぇ!?こんな数だよ!?俺たちの助けを貰っても大丈夫だと思うよ?」

「大丈夫です。任せてください」

 私は背中から刀を抜いて、魔物が潜む森へと駆け出した。

「バケット。任せよう」

「あぁもう!気をつけてよ!?」

 バケットさん達なら大丈夫だろう。問題は私だ。

「乱戦ってやったことないんだけど…」

 魔法を使いたいんだけど、魔素が濃い場所で魔法を使うと、えげつない威力になるらしいので、使えない。刀だけでやるしかない。

「って、ワイバーンまでいる!?」

 空に見えたのは、ワイバーン三体。
 ワイバーンはドラゴンの亜種であるけど、魔法が使えないので私がいても襲ってくる。厄介以外の何物でもない!

「まずは1つ!」

 走りながらビックボアの首を切り落とす。
 すると横からフォレストラビットが飛んできたので、かわす。

「せい!」

 フォレストラビットの胸を突き刺し、魔石を破壊して倒す。

 ワォォン!!

 群れなすフォレストウルフ。10体。てか反応のほとんどこれだよね!?

「…っ!」

 連携が取れていて、かなり厄介。身を隠す場所はどこにでもあるので、どこから来るか分からない。

「でもっ!」

 連携するが故に10体全部ではなく、数体ずつしか出てこない。これならば一体ずつやればなんとかっ!

「えいっ!」

 正面から飛びかかってきたフォレストウルフの脳天を突き刺す。すると後ろからも襲いかかってきたので、刺さったまま刀を後ろへと振る。

 キャインっ!

 倒すことはできなくても、吹き飛ばすことはできたので問題ない。
 それが原因なのかフォレストウルフの動きが鈍くなり、連携が乱れたので、そこから確実に一体ずつ仕留めていった。

「ふぅ…」

 さすがにちょっと疲れた…けど、まだワイバーンが残ってる。

「……っ!血の匂いで…」

 辺りには血の匂いが充満してしまっているからか、魔物がまた集まりそうになっている。だけど、ワイバーンがこちらに来てくれた。
 とりあえず注意を引くため手頃な石をワイバーンへ投げつけ、これ以上こないように血の匂いを浄化する。

 グワァ!?

 ワイバーンに当たった!……って、あれ?



 ………えーっと。目がおかしくなったかな。ワイバーンの一体が落ちてきたんだけど?……しかも腹の部分に風穴を開けて。

 ズシンっと地響きを起こして、ワイバーンが地面に衝突した。
 近づいてみると、もう死んでいるっぽい?

「倒しちゃった?」

 あれだよね。この風穴ってわたしが投げた石だよね…?

『そうですよ?』

 ……私の力が人外だってこと忘れてたよ。はぁ…。

「…まぁ、他のワイバーンはおかげでどっかいったみたいだし、いっか」

 とりあえず軽く索敵して魔物がいないことを確認し、フォレストウルフやラビット、ビックボア、ワイバーンを収納して、私はサーニャさんのもとへと戻った。





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