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第4章
回復とお話
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とりあえずサーニャさんのお父さんのところへ来たはいいんだけど……
「……どうやって飲ませましょう?」
そうなのよねぇ。人だったら仰向けにして飲ませるとか出来るけど、今でっかい龍だからね。うーん…
「その万能薬って、胃まで行かないと効果ありませんか?」
「飲まないといけないはずですが、どうなんでしょうか……」
ふーむ。どうするか……
「まぁとりあえず口開けましょうか」
そこら辺に転がっていた木をもってきて、それをつっかえ棒にして口を開く。
……サーニャさんからのジト目を感じるけど、気にしない!
「とりあえず飲ませてみます」
サーニャさんが口の中へと入り、瓶の栓を開けて、中の綺麗な青い液体を流す。すると、液体は流れることなく、そのまま吸収されていった。
「あっ!?」
「どうやら大丈夫みたいですね」
ステータスを見てみると、状態:傀儡という文字の後ろに、治療中と出てきた。だからこれで大丈夫だろう。
「良かった…」
思わずといった様子でサーニャさんが呟いた。
「サーニャさんはここにいてください。いつ目を覚ますか分かりませんから」
「え、マリーナ様はどこにいくのです?」
「……ちょっと森を治しに」
「あぁー…分かりました。こちらは大丈夫です。どうぞ気にせず」
「はい。…っと、その前に」
サーニャさんのお父さんの口から木を引っ張り出す。起きた時にこんなんあったら混乱するだろうからね。ぽいっとそこら辺に投げておく。ここもだいぶ木が倒れちゃってるけど……サーニャさんのお父さんの体が邪魔だ。起きてから治そう。
「じゃあ、行ってきます」
「はい」
私は背中から翼をだして、森の修復へと向かった。
ーーーーーーー
行ってしまいましたね……本当に、あの方には感謝してもし切れませんね。
絶望の中、差し込んだ光。それがまさにあの方でしたから。
お父さんが傀儡薬を使われたということには、すぐにお父さん自身が気が付きました。でも、時すでに遅し。せめて人里離れたところへ、と。飛び去ってしまいました。
私はそれがたまらなく悔しかった。こんなことになってまで、何も出来ない自分が。だから私はお父さんを助けるために旅に出ることにしました。
その事をお母さんに話しましたが、案外あっさりと認めてくれました。
「私は、ここから動けないから。お父さんを、頼んだわよ」
お母さんは私の産後の肥立ちが悪く、ずっとベットに寝たきりになっています。だからこそ、私になんとかして欲しいと思ったのでしょう。
「それでね……あなたは、帰ってこないほうがいいわ」
「えっ!?」
私はお母さんに嫌われたのでしょうか…?
「違うわよ。あなたは私の大切な子。だけど、ここはあなたにとって居心地が悪いでしょう?」
「…………」
……悔しいですが、その通りでした。私はエルフと火龍の娘。異端な存在。しかもお母さんはエルフの族長の娘。だからここ、エルフの里で、私は肩身の狭い思いをしてきた。しかし、だからといってお母さんとお父さんを恨むつもりは毛頭ありません。ちゃんと、愛してくれるのですから。
「だから、お父さんを助けたとしても、助けられなかったとしても、あなたは帰ってこないほうがいい。……それにね、ちょっとした予感があるの」
「予感……ですか?」
「ええ。多分、あなたはこれから一生ついていたいと思える存在に出会える」
「それは……異性として、ですか?」
「うーん……それは分からないけれど、そんな存在に出会える気がするわ」
お母さんの予感はよく当たります。でも当時は本当に半信半疑でした。
……でも、今ではお母さんの予感は正しかったと、はっきり言えます。
とても強くて、とても優しくて。誰かが困っていたら迷わず手助けをして。例えそれが、自分を犠牲にしなければならないことでも、躊躇いなく。でも、だからとても危なっかしくて………ついていたいと。ついていなくちゃと思える。そんな方に出会えました。
「あの方は、一緒にいることを許してくれるでしょうか…」
おそらく、本当になんの根拠もありませんが、あの方ならば、きっと。
「ふふっ」
『うぅ……』
おっと。物思いに耽っていると、どうやらお父さんが目を覚ましたようです。綺麗な、マリーナ様と同じような金色の瞳が現れ、私に目線が向けられます。
『……サーニャか?』
「……はい。お父さん」
『……何故いる?いやまずここはどこだ?』
お父さんが首を持ち上げて、辺りを確認しようとします。けれど……
『動けない…?』
どうやらマリーナ様の結界が邪魔しているようで、動けないようです。しかし困りました。これではお父さんが動けません。
「あぁー!ごめんなさい!」
唐突にマリーナ様の声が響きました。一体どこから見てたのでしょうか?そもそもどうやって声を?
……だめです。あの方については諦めが必要です。マリーナ様だから、こんなことも出来てしまうのでしょう。
『今の声は……』
どうやらお父さんにも聞こえていたようです。
「お父さんを助けてくださったお方ですよ」
『私を?サーニャではなく?』
「私1人では到底不可能でした。あの方がいたからこそ、私はお父さんを助けることができました」
万能薬を作ったのは私ですが、その材料を提供してくださったのはマリーナ様です。マリーナ様の鱗がなくては、作れませんでした。
『そうだったのか……しかし、サーニャも尽力してくれたのだろう。ありがとう』
「いえ、私は…」
「感謝は素直に受け取っておくものですよー。事実サーニャさんがいなければ無理だったんですから」
……本当にどこから見てるんでしょうか。
『あなたは、今どこにいるのだ?』
「あーっと…ちょっと待ってて下さいね」
すると私のすぐ隣に魔力が集まり始めました。この魔力は…マリーナ様のものです。おそらく転移の魔法。本当に、いつ見ても無駄がない。綺麗とさえ思ってしまうほどの魔法です。
「ふぃー。なんとか終わりました」
そう言いながらマリーナ様がふわりと降り立ちました。なんとかって……そんなに範囲が広かったのでしょうか?
『あなたが……いや、まさかこれは…』
どうやら気付いたようです。私からしたらお父さんはとても強いです。ですが、マリーナ様は……比べることも出来ませんでした。あの美しいお姿。見ていたいと思うと同時に、心臓が張り裂けそうでした。それでも耐えられたのは、マリーナ様が私を襲うことはないと、心の底で理解していたからなのかもしれませんね。
「生憎私はサーニャさんのお父さんのことを名前で呼べないのですが……初めまして?マリーナといいます。まぁ、感じた通り神龍です」
名前を呼べない……あ、聞いたことがあります。高位の龍は、自分より下の龍に対して命令することができると。そのときに使われるのが名前。だからそう簡単にマリーナ様は呼ぶことができないのでしょう。……あれ?そう考えると私はどうなんでしょうか?
「あぁ、サーニャさんは純粋な龍ではないですからね。問題ありません」
そういうことですか……
『神龍殿でしたか……では、私めを消しますか?』
……え?消す…?どういうこと、ですか?
「……どうやって飲ませましょう?」
そうなのよねぇ。人だったら仰向けにして飲ませるとか出来るけど、今でっかい龍だからね。うーん…
「その万能薬って、胃まで行かないと効果ありませんか?」
「飲まないといけないはずですが、どうなんでしょうか……」
ふーむ。どうするか……
「まぁとりあえず口開けましょうか」
そこら辺に転がっていた木をもってきて、それをつっかえ棒にして口を開く。
……サーニャさんからのジト目を感じるけど、気にしない!
「とりあえず飲ませてみます」
サーニャさんが口の中へと入り、瓶の栓を開けて、中の綺麗な青い液体を流す。すると、液体は流れることなく、そのまま吸収されていった。
「あっ!?」
「どうやら大丈夫みたいですね」
ステータスを見てみると、状態:傀儡という文字の後ろに、治療中と出てきた。だからこれで大丈夫だろう。
「良かった…」
思わずといった様子でサーニャさんが呟いた。
「サーニャさんはここにいてください。いつ目を覚ますか分かりませんから」
「え、マリーナ様はどこにいくのです?」
「……ちょっと森を治しに」
「あぁー…分かりました。こちらは大丈夫です。どうぞ気にせず」
「はい。…っと、その前に」
サーニャさんのお父さんの口から木を引っ張り出す。起きた時にこんなんあったら混乱するだろうからね。ぽいっとそこら辺に投げておく。ここもだいぶ木が倒れちゃってるけど……サーニャさんのお父さんの体が邪魔だ。起きてから治そう。
「じゃあ、行ってきます」
「はい」
私は背中から翼をだして、森の修復へと向かった。
ーーーーーーー
行ってしまいましたね……本当に、あの方には感謝してもし切れませんね。
絶望の中、差し込んだ光。それがまさにあの方でしたから。
お父さんが傀儡薬を使われたということには、すぐにお父さん自身が気が付きました。でも、時すでに遅し。せめて人里離れたところへ、と。飛び去ってしまいました。
私はそれがたまらなく悔しかった。こんなことになってまで、何も出来ない自分が。だから私はお父さんを助けるために旅に出ることにしました。
その事をお母さんに話しましたが、案外あっさりと認めてくれました。
「私は、ここから動けないから。お父さんを、頼んだわよ」
お母さんは私の産後の肥立ちが悪く、ずっとベットに寝たきりになっています。だからこそ、私になんとかして欲しいと思ったのでしょう。
「それでね……あなたは、帰ってこないほうがいいわ」
「えっ!?」
私はお母さんに嫌われたのでしょうか…?
「違うわよ。あなたは私の大切な子。だけど、ここはあなたにとって居心地が悪いでしょう?」
「…………」
……悔しいですが、その通りでした。私はエルフと火龍の娘。異端な存在。しかもお母さんはエルフの族長の娘。だからここ、エルフの里で、私は肩身の狭い思いをしてきた。しかし、だからといってお母さんとお父さんを恨むつもりは毛頭ありません。ちゃんと、愛してくれるのですから。
「だから、お父さんを助けたとしても、助けられなかったとしても、あなたは帰ってこないほうがいい。……それにね、ちょっとした予感があるの」
「予感……ですか?」
「ええ。多分、あなたはこれから一生ついていたいと思える存在に出会える」
「それは……異性として、ですか?」
「うーん……それは分からないけれど、そんな存在に出会える気がするわ」
お母さんの予感はよく当たります。でも当時は本当に半信半疑でした。
……でも、今ではお母さんの予感は正しかったと、はっきり言えます。
とても強くて、とても優しくて。誰かが困っていたら迷わず手助けをして。例えそれが、自分を犠牲にしなければならないことでも、躊躇いなく。でも、だからとても危なっかしくて………ついていたいと。ついていなくちゃと思える。そんな方に出会えました。
「あの方は、一緒にいることを許してくれるでしょうか…」
おそらく、本当になんの根拠もありませんが、あの方ならば、きっと。
「ふふっ」
『うぅ……』
おっと。物思いに耽っていると、どうやらお父さんが目を覚ましたようです。綺麗な、マリーナ様と同じような金色の瞳が現れ、私に目線が向けられます。
『……サーニャか?』
「……はい。お父さん」
『……何故いる?いやまずここはどこだ?』
お父さんが首を持ち上げて、辺りを確認しようとします。けれど……
『動けない…?』
どうやらマリーナ様の結界が邪魔しているようで、動けないようです。しかし困りました。これではお父さんが動けません。
「あぁー!ごめんなさい!」
唐突にマリーナ様の声が響きました。一体どこから見てたのでしょうか?そもそもどうやって声を?
……だめです。あの方については諦めが必要です。マリーナ様だから、こんなことも出来てしまうのでしょう。
『今の声は……』
どうやらお父さんにも聞こえていたようです。
「お父さんを助けてくださったお方ですよ」
『私を?サーニャではなく?』
「私1人では到底不可能でした。あの方がいたからこそ、私はお父さんを助けることができました」
万能薬を作ったのは私ですが、その材料を提供してくださったのはマリーナ様です。マリーナ様の鱗がなくては、作れませんでした。
『そうだったのか……しかし、サーニャも尽力してくれたのだろう。ありがとう』
「いえ、私は…」
「感謝は素直に受け取っておくものですよー。事実サーニャさんがいなければ無理だったんですから」
……本当にどこから見てるんでしょうか。
『あなたは、今どこにいるのだ?』
「あーっと…ちょっと待ってて下さいね」
すると私のすぐ隣に魔力が集まり始めました。この魔力は…マリーナ様のものです。おそらく転移の魔法。本当に、いつ見ても無駄がない。綺麗とさえ思ってしまうほどの魔法です。
「ふぃー。なんとか終わりました」
そう言いながらマリーナ様がふわりと降り立ちました。なんとかって……そんなに範囲が広かったのでしょうか?
『あなたが……いや、まさかこれは…』
どうやら気付いたようです。私からしたらお父さんはとても強いです。ですが、マリーナ様は……比べることも出来ませんでした。あの美しいお姿。見ていたいと思うと同時に、心臓が張り裂けそうでした。それでも耐えられたのは、マリーナ様が私を襲うことはないと、心の底で理解していたからなのかもしれませんね。
「生憎私はサーニャさんのお父さんのことを名前で呼べないのですが……初めまして?マリーナといいます。まぁ、感じた通り神龍です」
名前を呼べない……あ、聞いたことがあります。高位の龍は、自分より下の龍に対して命令することができると。そのときに使われるのが名前。だからそう簡単にマリーナ様は呼ぶことができないのでしょう。……あれ?そう考えると私はどうなんでしょうか?
「あぁ、サーニャさんは純粋な龍ではないですからね。問題ありません」
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