異世界転移は定員オーバーらしいです

家具屋ふふみに

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第4章

召喚組6

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 ダンジョンを攻略した後に話し合った結果、俺達は別々に行動することにした。というのも、これから俺達は魔族を探す旅にでる必要がある。だが、全員が戦いたい訳では無い。なので戦いたくない人は城に残り、希望者だけ、旅に出ることになったのだ。
 俺か?もちろん旅に出る組だ。ツヨシやセイラ。ユイなども同じだ。
 ちなみに川辺先生はというと、いまだ松本さんを探している。だが、手がかりはないようだ。

「まぁ、心配なのは俺も同じなんだがな」

「なにが?」

 俺が思わず呟いた言葉を拾ったのか、セイラが問いかけてきた。

「ほら、川辺先生が探してる松本さんだよ」

「………え?マツモト?だれ、それ」

 俺は当然知っているだろうと話したのだが……どうやら忘れてしまったらしい。まぁ話した訳でもないから、当然っちゃあ当然だな。

「おいおい。セイラ、忘れたのか?」

「お、ツヨシは覚えてたか」

「当たり前だろ。あんな忘れられるかよ」

「……出来事?」

 転校してきたことか?確かに衝撃的ではあったが……

「あー!思い出した!あの子ね!転校そうそう交通事故にあった」

 ……ちょっと待て。交通事故だと?どういうことだ?

「おい、さっきから何言ってるんだ?」

「うん?ユウキが言い出したんじゃないか。マツモトさんのことだぞ?」

「いやそれは分かるが、交通事故?有り得ないだろ。確かあの人が転校してきて挨拶した瞬間、俺達はこっちに飛ばされたはずだよな?」

「え、何言ってるの?マツモトさんは転校してきて教室で挨拶して、その日に交通事故にあって亡くなってるよ?」

 ……どういうことだ。なぜ、話が噛み合わない?俺がおかしいのか……いや、そんなはずは無い。確かに転校してきて、挨拶をした直後だったはずだ。召喚されたのは。
 ………記憶が、改竄されている?だが、一体誰が……

「おいおい、大丈夫か?こんなことを忘れてるなんて」

 いや違う。忘れてなんかいない。そもそも、そんなことは無かったのだから。忘れること自体出来ない。

「大丈夫?今日は出発しないでおく?」

 ちょうど今日、俺達は旅に出ることになっていた。もう出発予定時間も迫っている。ちなみに他の班はもう既に出発していたりする。つまり、俺たちが最後の班だ。

「……いや、行こう」

「ほんとに大丈夫なんだな?」

「ああ。俺は勇者なんだ。みんなに迷惑はかけれねぇよ」

「おーい。みんなー」

 決意を新たにしていると、遠くから呼ぶ声が聞こえた。見ると、ユイがこちらへと走ってきていた。……すまん、ユイ。お前のことすっかり忘れてたわ。

「はぁはぁ…はいっ!これ!」

「なんだこれ?」

 ユイが手渡してきたのは、首からぶら下げられるようなストラップがついた、水晶の原石のようなものだった。

「間に合ってよかったよ」

 ユイのすぐ後ろから、ゾロディアさんが姿を見せた。間に合ってよかった…?ということは、これはゾロディアさんが作ったものなのか?

「前にユウキが言っていただろう。『魔結晶』を利用した、魔力バッテリーだ」

 そう言えば、前にそんなにことを言っていたような気がする。

「試行錯誤していたんだが、ユイの結界と組み合わせることで、形にすることができた」

「だからユイが一緒にきたのか」

「えへんっ!もっと褒めてもいいよ!」

 そんなことを言っているユイはスルーして、俺は魔結晶を首に通す。

「中々いいじゃないか。急造で申し訳ないがな」

「いえいえ!むしろ作ってくれてるとは思いませんでしたよ」

 俺自身すっかり忘れてたからな。

「それはサプライズになったようでよかったよ。余力があるときにでも込めておくといい。いざという時に役に立つだろう」

「はい。ありがとうございます」

「うぅ……見事にスルーされたぁ……」

 ユイが不貞腐れている。いや、悪いとは思ってるんだがな?それよりもはやくこれについて聞きたくてだな……ついスルーしてしまった。

「ごめんな、ユイ。それよりはやく知りたくてな」

「………いいもん。セイラちゃんに慰めてもらうもん」

 そう言ってセイラへと抱きついた。まぁ、セイラに任せておけば問題は無いだろう。

「じゃあ行ってきます」

「あぁ。気をつけてな。……ほんとはそんなもの渡したくないんだがな」

「?なにかいいました?」

「いや、なんでもない」

 確かになにか言ったような気がするんだが……気のせいか?

「おい。行くぞ」

「うん。ほら」

「はぁい…いきますよ」

 機嫌を直してくれたユイと共に、俺達は城を後にした。

 ◇◆◇◆◇◆◇

「行ってしまったか……」

 私は思わず呟いた。いくらだとはいえ、あんな子供に任せるなど……虫唾が走る。だが、それを止められない、言えない時点で、私は十分国の犬に成り下がってしまったようだな。

「……せめて、だけは言っておくべきだったか……」

 ユウキ達に持たせた魔結晶のネックレス。あれには、ある魔法が組み込まれている。
 ……私はその魔法が使われないことを願いながら、そして、言えなかった情けない自分を、国の犬に成り下がった自分を心の中で嘲笑しながら、ユウキ達の背中が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしたのだった。

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