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最終話 ざくろが出した答え
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ジルを視て、ざくろが出した答えは「ジルと椿を会わせること」だった。
そうすれば必ず事態は動くと踏んだ。
それには椿の行方を探すこと、椿をもとの家におびき寄せることが必要だった。
猫又青島の情報網で椿の行方はすぐにわかった。しかし、椿は母親に「一人で外出してはいけない。父親に会うのもいけない」ときびしく言われていて、瀬戸が何度も何度も誘い出そうとしたが登下校以外なかなか外出しない。
これ以上待つとジルの身体が持たない、と焦ったざくろはジルを逃がすことにしたのだ。
賭けだった。
ハツカネズミの竜眼をジルの元へ向かわせ、ハリネズミのヘイデン・パールの力も借りてジルの首輪を切り、ジルに「夜のうちにフルーツ公園へたどり着け。椿がきっとくる」と言ったのだった。
なんとか椿をジルに再会させたあとはざくろが予想した以上に椿が自分で動いたのだ。父と母を呼び、ジルをミキの病院へ連れていき、治療を受けさせた。
結果的にマンゴーの依頼どおり、ジルは失せモノ探し能力を取り戻したのだった。
※※※
「ジル~!」
ぶち模様の犬が少女の投げたボールを追いかけていた。
椿と再会して一か月。フルーツ公園にはすっかり元気になったジルが居た。
「先生、本当にお世話になりました。」
「サプリメントを2週間分と特別療法食をお入れしています。紹介状を書きましたのでむこうにつきましたら早い目に受診なさってください。」
「ありがとうございます。椿もジルも向こうの家を気に入ってくれるといいのですが」
「ご実家へはいつ?」
「来週伊豆へ発ちます。」
院長の佐伯は、やはりとてもとても優しい声で「お元気で」とひとことだけ言った。
堂島、福島が玄関までちやを見送ってくれた。
ちやは病院を出ると、隣の公園で犬と走りまわっている娘に声をかけた。
「椿~!ジル~!帰るわよ~!!!」
「ジル!もう!穴掘ってないで行くよ!」
ジルがハートの金属プレートをくわえていた。
「え?迷子札?ここに落としてたんだね!すごいよジル!!!」
※※※
「亜鉛欠乏症・・・あのポインターのMIXの子ですか?」
松本は処置台に開いてあったジルのカルテを見ながら言った。
「そう。来週静岡のご実家に引っ越すそうなので紹介状を頼まれてたの。ご主人があげていた白米とおからのみの食事、奥様が良かれと思ってあげていたカルシウム入りチーズの多給。それが大きな元凶ね。ミネラルの少ない食事、度を越した繊維質の多給、豆類に多く含まれるフィチン酸による吸収阻害、カルシウムによる拮抗作用、これらが複合して亜鉛欠乏をおこしたのでしょう」
バランスの良い食事をしていれば多少のおやつで病気になることはない。しかし極端に偏った食事はジルのようにとてもつらい症状を起こすこともあるのだ。
「サプリメントで良くなってくれてよかった。」
椿が付いてるからもう大丈夫だろう、と美樹はカルテを閉じた。
※※※
今日もざくろといちごは松本の部屋に来ていた。
「ざくろー!!!もう!大地君のトイレの砂全部出したでしょー!!!!」
「んなー!!!!!フギャー!!!」
キッチンの掃除をする間、3匹は和室に閉じ込められてしまった。
「ところでおねえちゃん、あのミミズどうしたの?」
「ん、あれ?あれはね」
「ええええー!一緒に行っちゃったの?!」
※※※
「着いたー!!!!」
「ジル!着いたよ!ここが椿のおばあちゃんの家!!!」
引っ越しセンターの従業員は、荷台に残っている物がないのを確認し、バタンとドアを閉めた。
「最後の段ボール、大きさの割に重たかったな」
「『生もの、マンゴー』って書いてたからお土産の果物だろ。」
「地面の上にそっと置いてくださいって変なの」
ブロロロローッとトラックが走り去ったあと、段ボールからは丸っこいトゲトゲの生き物が2匹、ミミズをくわえて出てきたのを、ジルだけが見ていた。
了
そうすれば必ず事態は動くと踏んだ。
それには椿の行方を探すこと、椿をもとの家におびき寄せることが必要だった。
猫又青島の情報網で椿の行方はすぐにわかった。しかし、椿は母親に「一人で外出してはいけない。父親に会うのもいけない」ときびしく言われていて、瀬戸が何度も何度も誘い出そうとしたが登下校以外なかなか外出しない。
これ以上待つとジルの身体が持たない、と焦ったざくろはジルを逃がすことにしたのだ。
賭けだった。
ハツカネズミの竜眼をジルの元へ向かわせ、ハリネズミのヘイデン・パールの力も借りてジルの首輪を切り、ジルに「夜のうちにフルーツ公園へたどり着け。椿がきっとくる」と言ったのだった。
なんとか椿をジルに再会させたあとはざくろが予想した以上に椿が自分で動いたのだ。父と母を呼び、ジルをミキの病院へ連れていき、治療を受けさせた。
結果的にマンゴーの依頼どおり、ジルは失せモノ探し能力を取り戻したのだった。
※※※
「ジル~!」
ぶち模様の犬が少女の投げたボールを追いかけていた。
椿と再会して一か月。フルーツ公園にはすっかり元気になったジルが居た。
「先生、本当にお世話になりました。」
「サプリメントを2週間分と特別療法食をお入れしています。紹介状を書きましたのでむこうにつきましたら早い目に受診なさってください。」
「ありがとうございます。椿もジルも向こうの家を気に入ってくれるといいのですが」
「ご実家へはいつ?」
「来週伊豆へ発ちます。」
院長の佐伯は、やはりとてもとても優しい声で「お元気で」とひとことだけ言った。
堂島、福島が玄関までちやを見送ってくれた。
ちやは病院を出ると、隣の公園で犬と走りまわっている娘に声をかけた。
「椿~!ジル~!帰るわよ~!!!」
「ジル!もう!穴掘ってないで行くよ!」
ジルがハートの金属プレートをくわえていた。
「え?迷子札?ここに落としてたんだね!すごいよジル!!!」
※※※
「亜鉛欠乏症・・・あのポインターのMIXの子ですか?」
松本は処置台に開いてあったジルのカルテを見ながら言った。
「そう。来週静岡のご実家に引っ越すそうなので紹介状を頼まれてたの。ご主人があげていた白米とおからのみの食事、奥様が良かれと思ってあげていたカルシウム入りチーズの多給。それが大きな元凶ね。ミネラルの少ない食事、度を越した繊維質の多給、豆類に多く含まれるフィチン酸による吸収阻害、カルシウムによる拮抗作用、これらが複合して亜鉛欠乏をおこしたのでしょう」
バランスの良い食事をしていれば多少のおやつで病気になることはない。しかし極端に偏った食事はジルのようにとてもつらい症状を起こすこともあるのだ。
「サプリメントで良くなってくれてよかった。」
椿が付いてるからもう大丈夫だろう、と美樹はカルテを閉じた。
※※※
今日もざくろといちごは松本の部屋に来ていた。
「ざくろー!!!もう!大地君のトイレの砂全部出したでしょー!!!!」
「んなー!!!!!フギャー!!!」
キッチンの掃除をする間、3匹は和室に閉じ込められてしまった。
「ところでおねえちゃん、あのミミズどうしたの?」
「ん、あれ?あれはね」
「ええええー!一緒に行っちゃったの?!」
※※※
「着いたー!!!!」
「ジル!着いたよ!ここが椿のおばあちゃんの家!!!」
引っ越しセンターの従業員は、荷台に残っている物がないのを確認し、バタンとドアを閉めた。
「最後の段ボール、大きさの割に重たかったな」
「『生もの、マンゴー』って書いてたからお土産の果物だろ。」
「地面の上にそっと置いてくださいって変なの」
ブロロロローッとトラックが走り去ったあと、段ボールからは丸っこいトゲトゲの生き物が2匹、ミミズをくわえて出てきたのを、ジルだけが見ていた。
了
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