7 / 7
最終話 ざくろが出した答え
しおりを挟む
ジルを視て、ざくろが出した答えは「ジルと椿を会わせること」だった。
そうすれば必ず事態は動くと踏んだ。
それには椿の行方を探すこと、椿をもとの家におびき寄せることが必要だった。
猫又青島の情報網で椿の行方はすぐにわかった。しかし、椿は母親に「一人で外出してはいけない。父親に会うのもいけない」ときびしく言われていて、瀬戸が何度も何度も誘い出そうとしたが登下校以外なかなか外出しない。
これ以上待つとジルの身体が持たない、と焦ったざくろはジルを逃がすことにしたのだ。
賭けだった。
ハツカネズミの竜眼をジルの元へ向かわせ、ハリネズミのヘイデン・パールの力も借りてジルの首輪を切り、ジルに「夜のうちにフルーツ公園へたどり着け。椿がきっとくる」と言ったのだった。
なんとか椿をジルに再会させたあとはざくろが予想した以上に椿が自分で動いたのだ。父と母を呼び、ジルをミキの病院へ連れていき、治療を受けさせた。
結果的にマンゴーの依頼どおり、ジルは失せモノ探し能力を取り戻したのだった。
※※※
「ジル~!」
ぶち模様の犬が少女の投げたボールを追いかけていた。
椿と再会して一か月。フルーツ公園にはすっかり元気になったジルが居た。
「先生、本当にお世話になりました。」
「サプリメントを2週間分と特別療法食をお入れしています。紹介状を書きましたのでむこうにつきましたら早い目に受診なさってください。」
「ありがとうございます。椿もジルも向こうの家を気に入ってくれるといいのですが」
「ご実家へはいつ?」
「来週伊豆へ発ちます。」
院長の佐伯は、やはりとてもとても優しい声で「お元気で」とひとことだけ言った。
堂島、福島が玄関までちやを見送ってくれた。
ちやは病院を出ると、隣の公園で犬と走りまわっている娘に声をかけた。
「椿~!ジル~!帰るわよ~!!!」
「ジル!もう!穴掘ってないで行くよ!」
ジルがハートの金属プレートをくわえていた。
「え?迷子札?ここに落としてたんだね!すごいよジル!!!」
※※※
「亜鉛欠乏症・・・あのポインターのMIXの子ですか?」
松本は処置台に開いてあったジルのカルテを見ながら言った。
「そう。来週静岡のご実家に引っ越すそうなので紹介状を頼まれてたの。ご主人があげていた白米とおからのみの食事、奥様が良かれと思ってあげていたカルシウム入りチーズの多給。それが大きな元凶ね。ミネラルの少ない食事、度を越した繊維質の多給、豆類に多く含まれるフィチン酸による吸収阻害、カルシウムによる拮抗作用、これらが複合して亜鉛欠乏をおこしたのでしょう」
バランスの良い食事をしていれば多少のおやつで病気になることはない。しかし極端に偏った食事はジルのようにとてもつらい症状を起こすこともあるのだ。
「サプリメントで良くなってくれてよかった。」
椿が付いてるからもう大丈夫だろう、と美樹はカルテを閉じた。
※※※
今日もざくろといちごは松本の部屋に来ていた。
「ざくろー!!!もう!大地君のトイレの砂全部出したでしょー!!!!」
「んなー!!!!!フギャー!!!」
キッチンの掃除をする間、3匹は和室に閉じ込められてしまった。
「ところでおねえちゃん、あのミミズどうしたの?」
「ん、あれ?あれはね」
「ええええー!一緒に行っちゃったの?!」
※※※
「着いたー!!!!」
「ジル!着いたよ!ここが椿のおばあちゃんの家!!!」
引っ越しセンターの従業員は、荷台に残っている物がないのを確認し、バタンとドアを閉めた。
「最後の段ボール、大きさの割に重たかったな」
「『生もの、マンゴー』って書いてたからお土産の果物だろ。」
「地面の上にそっと置いてくださいって変なの」
ブロロロローッとトラックが走り去ったあと、段ボールからは丸っこいトゲトゲの生き物が2匹、ミミズをくわえて出てきたのを、ジルだけが見ていた。
了
そうすれば必ず事態は動くと踏んだ。
それには椿の行方を探すこと、椿をもとの家におびき寄せることが必要だった。
猫又青島の情報網で椿の行方はすぐにわかった。しかし、椿は母親に「一人で外出してはいけない。父親に会うのもいけない」ときびしく言われていて、瀬戸が何度も何度も誘い出そうとしたが登下校以外なかなか外出しない。
これ以上待つとジルの身体が持たない、と焦ったざくろはジルを逃がすことにしたのだ。
賭けだった。
ハツカネズミの竜眼をジルの元へ向かわせ、ハリネズミのヘイデン・パールの力も借りてジルの首輪を切り、ジルに「夜のうちにフルーツ公園へたどり着け。椿がきっとくる」と言ったのだった。
なんとか椿をジルに再会させたあとはざくろが予想した以上に椿が自分で動いたのだ。父と母を呼び、ジルをミキの病院へ連れていき、治療を受けさせた。
結果的にマンゴーの依頼どおり、ジルは失せモノ探し能力を取り戻したのだった。
※※※
「ジル~!」
ぶち模様の犬が少女の投げたボールを追いかけていた。
椿と再会して一か月。フルーツ公園にはすっかり元気になったジルが居た。
「先生、本当にお世話になりました。」
「サプリメントを2週間分と特別療法食をお入れしています。紹介状を書きましたのでむこうにつきましたら早い目に受診なさってください。」
「ありがとうございます。椿もジルも向こうの家を気に入ってくれるといいのですが」
「ご実家へはいつ?」
「来週伊豆へ発ちます。」
院長の佐伯は、やはりとてもとても優しい声で「お元気で」とひとことだけ言った。
堂島、福島が玄関までちやを見送ってくれた。
ちやは病院を出ると、隣の公園で犬と走りまわっている娘に声をかけた。
「椿~!ジル~!帰るわよ~!!!」
「ジル!もう!穴掘ってないで行くよ!」
ジルがハートの金属プレートをくわえていた。
「え?迷子札?ここに落としてたんだね!すごいよジル!!!」
※※※
「亜鉛欠乏症・・・あのポインターのMIXの子ですか?」
松本は処置台に開いてあったジルのカルテを見ながら言った。
「そう。来週静岡のご実家に引っ越すそうなので紹介状を頼まれてたの。ご主人があげていた白米とおからのみの食事、奥様が良かれと思ってあげていたカルシウム入りチーズの多給。それが大きな元凶ね。ミネラルの少ない食事、度を越した繊維質の多給、豆類に多く含まれるフィチン酸による吸収阻害、カルシウムによる拮抗作用、これらが複合して亜鉛欠乏をおこしたのでしょう」
バランスの良い食事をしていれば多少のおやつで病気になることはない。しかし極端に偏った食事はジルのようにとてもつらい症状を起こすこともあるのだ。
「サプリメントで良くなってくれてよかった。」
椿が付いてるからもう大丈夫だろう、と美樹はカルテを閉じた。
※※※
今日もざくろといちごは松本の部屋に来ていた。
「ざくろー!!!もう!大地君のトイレの砂全部出したでしょー!!!!」
「んなー!!!!!フギャー!!!」
キッチンの掃除をする間、3匹は和室に閉じ込められてしまった。
「ところでおねえちゃん、あのミミズどうしたの?」
「ん、あれ?あれはね」
「ええええー!一緒に行っちゃったの?!」
※※※
「着いたー!!!!」
「ジル!着いたよ!ここが椿のおばあちゃんの家!!!」
引っ越しセンターの従業員は、荷台に残っている物がないのを確認し、バタンとドアを閉めた。
「最後の段ボール、大きさの割に重たかったな」
「『生もの、マンゴー』って書いてたからお土産の果物だろ。」
「地面の上にそっと置いてくださいって変なの」
ブロロロローッとトラックが走り去ったあと、段ボールからは丸っこいトゲトゲの生き物が2匹、ミミズをくわえて出てきたのを、ジルだけが見ていた。
了
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる