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第一章 家族
第二十話 強行突破其の壱
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ふらふらと廊下を歩く。
あの微笑み、あの優しい表情が頭からこびり付いて離れない。
そしてそれが繰り返しパタンとこと切れたように生気を手放す彼女。
ただ彷徨うことしかできないのだ。
後ろから何か声がするが、正直どうでもいい。誰でもいい。
死んでもいい。
もう生きる希望も理由もない。
なんなら死んだほうが彼女と一緒になれるだろう。
…なぜ、自分はのうのうと生きているのだろうか…
彼女に会いたい気持ちがめらめら燻る。
…あの刃、名前をウリャーナと言った。なぜ…彼女は死を選んだのだろう…
答えへの解は最短であった。
…そうか…。ぼーっとつっ立った私を逃がすためだろう。そうでもしなけりゃ私は彼女のもとを離れるはずがないであろうと。彼女の言った通り、私は夫として相応しくなかった。だから、彼女は私を信頼しなかったのだ… 。私が居ようが居まいが何も変わらないから… 。私が人に刃を向ける肝が無いから…。 だから彼女は…
雪のように思考は積もり積もる。
…私が殺した…
…それを見届けた…
「ダヴィ! 待テ。オレ撃っテ、敵気づイタ。早く逃げなキャ死ヌ」
ダヴィの肩をがっしりと掴んでも反応しない。ただぶつぶつと呟くだけ。
「…私が殺した…それを見届けた…」
「ナニを言ってイル。早クッ!」
「…行かなくては…彼女の元へ…」
「彼女…ウリーヤのトコロ!?」
洋平が彼女の名を口にした途端、ダヴィが走り出した。
ふらふらとした足取りで廊下を駆けていくのを、二人は追うしかなかった。
…どこだ。彼女はどこだ…ここか…
扉を開ける。
そこには、瓶酒を流し込む賊が屯していた。
「お、お前。どうやって逃げた!」
あっという間に酔いを醒まされる賊にダヴィが迫る。
「彼女はどこだ! ウリーヤは! 連れて行け! 私を彼女の元へ連れて行け!」
賊の一人に掴み掛かった。
「私を、彼女の、元へ、連れていけ!」
言葉のたびに賊の顔を殴打する。
「なん、だよ、こい、つ、ブヘッ」
「気持ち悪いんだよっ!」
パリン…
ダヴィの頭で酒瓶が割られ、血なのかワインなのか分からない液体がたらたらと 頭を垂れた。
その割れた瓶首を持つ男へ奴へ振り向く。
「どこだぁ。彼女はどこだ! 連れていけ! 私を連れていけ!」
ダヴィの怒声とガラスの割れる音が聞こえ、音元の部屋へ入ると。
ダヴィが賊の一人を殴っている。
その腹に割れた瓶首を生やしたまま、ただひたすらに殴っている。
繰り返し叫びながらただこぶしを振るっている。
もう一人の賊が湾曲刀を抜こうと手を柄にかけた。
ダン、ダン。ダン、ダン…
賊二人が床に倒れた。
ただほうっと立つダヴィは男の立っていたそこから目を逸らさない。
「ダヴィ。分かっタハズ! ココ危ナイ。早クココ離レル!」
しばらくほうっとした後、再びぶつぶつと呟きながらふらふらっと歩き出した。
「…私が殺した…それを見届けた…」
その様子はウリャーナの目にありありと焼き付いた。
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(*´ω`*)
あの微笑み、あの優しい表情が頭からこびり付いて離れない。
そしてそれが繰り返しパタンとこと切れたように生気を手放す彼女。
ただ彷徨うことしかできないのだ。
後ろから何か声がするが、正直どうでもいい。誰でもいい。
死んでもいい。
もう生きる希望も理由もない。
なんなら死んだほうが彼女と一緒になれるだろう。
…なぜ、自分はのうのうと生きているのだろうか…
彼女に会いたい気持ちがめらめら燻る。
…あの刃、名前をウリャーナと言った。なぜ…彼女は死を選んだのだろう…
答えへの解は最短であった。
…そうか…。ぼーっとつっ立った私を逃がすためだろう。そうでもしなけりゃ私は彼女のもとを離れるはずがないであろうと。彼女の言った通り、私は夫として相応しくなかった。だから、彼女は私を信頼しなかったのだ… 。私が居ようが居まいが何も変わらないから… 。私が人に刃を向ける肝が無いから…。 だから彼女は…
雪のように思考は積もり積もる。
…私が殺した…
…それを見届けた…
「ダヴィ! 待テ。オレ撃っテ、敵気づイタ。早く逃げなキャ死ヌ」
ダヴィの肩をがっしりと掴んでも反応しない。ただぶつぶつと呟くだけ。
「…私が殺した…それを見届けた…」
「ナニを言ってイル。早クッ!」
「…行かなくては…彼女の元へ…」
「彼女…ウリーヤのトコロ!?」
洋平が彼女の名を口にした途端、ダヴィが走り出した。
ふらふらとした足取りで廊下を駆けていくのを、二人は追うしかなかった。
…どこだ。彼女はどこだ…ここか…
扉を開ける。
そこには、瓶酒を流し込む賊が屯していた。
「お、お前。どうやって逃げた!」
あっという間に酔いを醒まされる賊にダヴィが迫る。
「彼女はどこだ! ウリーヤは! 連れて行け! 私を彼女の元へ連れて行け!」
賊の一人に掴み掛かった。
「私を、彼女の、元へ、連れていけ!」
言葉のたびに賊の顔を殴打する。
「なん、だよ、こい、つ、ブヘッ」
「気持ち悪いんだよっ!」
パリン…
ダヴィの頭で酒瓶が割られ、血なのかワインなのか分からない液体がたらたらと 頭を垂れた。
その割れた瓶首を持つ男へ奴へ振り向く。
「どこだぁ。彼女はどこだ! 連れていけ! 私を連れていけ!」
ダヴィの怒声とガラスの割れる音が聞こえ、音元の部屋へ入ると。
ダヴィが賊の一人を殴っている。
その腹に割れた瓶首を生やしたまま、ただひたすらに殴っている。
繰り返し叫びながらただこぶしを振るっている。
もう一人の賊が湾曲刀を抜こうと手を柄にかけた。
ダン、ダン。ダン、ダン…
賊二人が床に倒れた。
ただほうっと立つダヴィは男の立っていたそこから目を逸らさない。
「ダヴィ。分かっタハズ! ココ危ナイ。早クココ離レル!」
しばらくほうっとした後、再びぶつぶつと呟きながらふらふらっと歩き出した。
「…私が殺した…それを見届けた…」
その様子はウリャーナの目にありありと焼き付いた。
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