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昔の国のお話

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「この国は今の王の前の王、つまり先王は、とても身勝手で暴君でした。
先王の妻、王妃もまた、我儘で、傲慢な人でした。
その為、民は苦しみ、陛下も子供時代はとても苦労なされました。
事の始まりは、先王が王位を継承した日からでした。
まず初めに民から納められる税を引き上げました。
王妃との結婚式をする為にと言い、税を徴収しました。
最初民は王様の結婚式なので仕方がないと思っていたが、式が終わっても税の引き上げはそのままでした。
その事を一人の民が陛下に聞きました。
すると王様はその民を殺してしまいました。
そして民の前でこう言いました。

「良いか!皆聞け‼︎この私に逆らうと言うのならこの者の様になる。
この様になりたくなければ黙って税を納めろ。
以上だ。」

その言葉を聞き、民は怒りました。
しかし、反乱をしようものならあの民の様に殺されると思い、誰も何も言えなくなりました。
その日から国はだんだんと悪くなっていきました。
税を納める為に朝から晩まで沢山働きました。
そのせいで体を壊す人が増えてきました。
しかし、お金が無いので医者には診てもらえず段々と衰弱していきました。
そして、衰弱していきそのまま亡くなってしまいました。
遺体は土の中に埋葬するだけで、他は何もしませんでした。
次々と亡くなっていく民を王様は気にしませんでした。
王様はお城で豪華な暮らしをしていました。
王妃も同じでした。
王様は仕事を宰相に任せ、自分は奴隷の女達と遊んでいました。
奴隷達は王様がこっそり買っていました。
その奴隷達を自分の好きにして遊んでいました。時には暴力を振るったり、時には無理やり子供を作り、その子供を奴隷商人に売ったりしていました。
王妃は、国のお金で宝石や、ドレス、男達を買っていました。
王妃は王様との子を作る気はありませんでした。
子供が出来たら好きに遊べなくなると思っていました。
しかし、男達とはそういう遊びをして暮らしていました。
そんなある日、
王妃に子供が出来てしまったのです。
勿論王様の子では有りません。
焦った王妃は夜王様のベットに忍び込み、一夜を共にしました。
そして、王様に子が出来たと言ったのです。
王様は喜びました。
勿論、王様は自分の子だと思い喜びました。
そして、民に子が出来たので祝いとしてまた、税を引き上げ、城で貴族達を呼び、パーティーを行いました。
民はこれ以上税を引き上げては我々が生活する事が出来なくなると思い、反乱を起こそうとします。
しかし、それは出来ないと、我々では勝てないと考え諦めました。
月日が経ち、王妃は第1王子を出産しました。
幸い、王子は王様に似ている所があり、王様に可愛がられていました。
しかし、それも最初のうちだけでした。
王妃は王子を出産したら乳母に任せ、自分は又、遊びを始めました。
王様も王子の事を忘れたかの様に奴隷と遊び始めた。
王子は乳母に育てられ、宰相に勉強を学んでいました。
宰相が何故勉強を教えたかと言うと、今の王様は駄目だと思っていたからだ。
宰相は真面目で民を心配していました。
しかし、王様には逆らえませんでした。
なので、王子にいろんな事を教え、いずれこの国を変えてくれると信じていたのです。
そのお陰で王子は両親の様にはなりませんでした。
ある日、王子が18歳になった時、王様はパーティーを開きました。
王子の婚約者を探す為に。
そのパーティーで今の王妃様と出会ったのです。
王妃様のご両親はとても良い人で、王子を自分の息子同然に可愛がっていました。
王子も王妃様のご両親の事を本当の親と思って接していました。
しかし、事件が起きました。
18歳になり、かっこよくなった王子に生みの親の王妃が手を出したのです。
王子が寝ている時に王妃は裸でベットの中に潜り込んだのです。
王子は目を覚まし、ベットの中に人が居ると分かった途端、大声を出しました。
その声に王様が駆け付けました。

「おい!どうした‼︎何があった!」

王様は王子の部屋に入り、目に映る光景に絶句しました。
何故なら自分の妻が息子のベットに裸で潜り混んでいたからだ。
それを見た王様は最初王子を疑いました。
しかし、王子の悲鳴を聞き、駆けつけてきたので違うと確信した。
そして、自分の妻が自分の意思でベットに潜り込んだとわかり、怒りを露わにした。
王妃を兵士に捉えさせ、牢屋に連れて行けと命令した。
王妃は嫌だ!誤解だと喚いていたが王様は無視をした。
その後は王妃は処刑された。
そして、王様は目を覚ましたのだ。
今まで自分がどれ程民に酷い事をしたのかと。
それを反省し、真っ先に税を引き下げ、民を助けました。
痩せ細り、生きているのが不思議なくらいの民を見て王様は涙を流し、民に謝罪しました。
今までの事や、亡くなった民の事を…
そして、王様は自分が王であることを恥ずかしく思いました。
王は民を守り、国を守る存在なのに、自分は民を苦しめ、国を守らなかった者と思ったのです。
そして、王子に自分の王位を継承して、自分は辺境で残りの人生を歩む事を決めました。
王子は王位を継承し、王妃には婚約者の令嬢を。
王になって民を、国を守る事を誓いに今の平和な国にしました。
これがこの国の歴史です。
そして、陛下の人生でもあります。」

話終えたハミュは美久の顔を見て驚きました。
何故なら美久はハミュの顔を見ながら泣いていたからだ。

「あ、すみません。何故か涙が止まらなくて…」

「いえ、泣いていいんです。貴女はお優しい方だ。」

そう言ってハミュは美久を抱きしめた。
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