8 / 33
8
しおりを挟む
それから私はオリオン様がおられると言われた音楽室を探そうと思いました。
二年四組も覗きましたが、オリオン様はやはりおられませんでした。催しは喫茶店のようでした。
そこの方に音楽室の場所をお尋ねしたところ、不思議そうな顔で、場所は一つ隣の棟の最上階の端ですが、そこには催しはありません、とお教えいただきました。
私は隣の棟の上の階へと急いで向かいました。
気がせいて早足で階段を登りました。結構な距離なので苦しくなってまいりました。
侍女テレサや護衛のハッサンは文句一つ言わずついてきてくれています。ただ、二人とも表情が暗いのです。
…もしかしたら私も不安のあまりそんな表情になっているのかもしれません。
妹君フローラ様の話だけではなく、エレナさんという方についてもオリオン様にお尋ねしないといけなくなったからです。
階段が終わりに近づいてまいりました。私は手すりを持ち、息を整えながら登っています。
足元を見ながらため息をついたところで、上から声をかけられました。
「サフィラじゃないか。随分と久しぶりだなあ。」目を上げると、階段上の踊り場に、すらりとした一人の銀髪の青年がいるのが目に入りました。
「…ロズウェル伯爵令息様」私は礼をいたしました。「ご無沙汰しております。」
「他人行儀だな。昔のようにジルでいいさ」青年は、階段を降りて来られながら言いました。
近づくと見覚えのある深い青の瞳がよく見えました。私は息を飲むような思いでその瞳を見つめ返しました。
子供時代から美しいので有名な方ですが、青年期となり一段とお美しくなられています。
…オリオン様も麗しい方ですが、ジルベール様には敵わないと思います。
彼と私とは、遠縁にあたる間柄です。
幼い頃は親族の集まりなどでよく顔をあわせており、当時は子供たち皆で一緒に遊んでおりました。
今はもう、成長し身分差を意識するようになったので、子供時代のように気さくに口をきくべきではないとわかっております。
…寂しいことですが。
二年四組も覗きましたが、オリオン様はやはりおられませんでした。催しは喫茶店のようでした。
そこの方に音楽室の場所をお尋ねしたところ、不思議そうな顔で、場所は一つ隣の棟の最上階の端ですが、そこには催しはありません、とお教えいただきました。
私は隣の棟の上の階へと急いで向かいました。
気がせいて早足で階段を登りました。結構な距離なので苦しくなってまいりました。
侍女テレサや護衛のハッサンは文句一つ言わずついてきてくれています。ただ、二人とも表情が暗いのです。
…もしかしたら私も不安のあまりそんな表情になっているのかもしれません。
妹君フローラ様の話だけではなく、エレナさんという方についてもオリオン様にお尋ねしないといけなくなったからです。
階段が終わりに近づいてまいりました。私は手すりを持ち、息を整えながら登っています。
足元を見ながらため息をついたところで、上から声をかけられました。
「サフィラじゃないか。随分と久しぶりだなあ。」目を上げると、階段上の踊り場に、すらりとした一人の銀髪の青年がいるのが目に入りました。
「…ロズウェル伯爵令息様」私は礼をいたしました。「ご無沙汰しております。」
「他人行儀だな。昔のようにジルでいいさ」青年は、階段を降りて来られながら言いました。
近づくと見覚えのある深い青の瞳がよく見えました。私は息を飲むような思いでその瞳を見つめ返しました。
子供時代から美しいので有名な方ですが、青年期となり一段とお美しくなられています。
…オリオン様も麗しい方ですが、ジルベール様には敵わないと思います。
彼と私とは、遠縁にあたる間柄です。
幼い頃は親族の集まりなどでよく顔をあわせており、当時は子供たち皆で一緒に遊んでおりました。
今はもう、成長し身分差を意識するようになったので、子供時代のように気さくに口をきくべきではないとわかっております。
…寂しいことですが。
25
あなたにおすすめの小説
溺愛されている妹の高慢な態度を注意したら、冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになりました。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナフィリアは、妹であるレフーナに辟易としていた。
両親に溺愛されて育ってきた彼女は、他者を見下すわがままな娘に育っており、その相手にラナフィリアは疲れ果てていたのだ。
ある時、レフーナは晩餐会にてとある令嬢のことを罵倒した。
そんな妹の高慢なる態度に限界を感じたラナフィリアは、レフーナを諫めることにした。
だが、レフーナはそれに激昂した。
彼女にとって、自分に従うだけだった姉からの反抗は許せないことだったのだ。
その結果、ラナフィリアは冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになった。
姉が不幸になるように、レフーナが両親に提言したからである。
しかし、ラナフィリアが嫁ぐことになった辺境伯ガルラントは、噂とは異なる人物だった。
戦士であるため、敵に対して冷血ではあるが、それ以外の人物に対して紳士的で誠実な人物だったのだ。
こうして、レフーナの目論見は外れ、ラナフェリアは辺境で穏やかな生活を送るのだった。
私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。
木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。
彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。
しかし妾の子である妹を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。
だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。
父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。
そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。
程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。
彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。
戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。
彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし
香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。
治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。
そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。
二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。
これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。
そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。
※他サイトにも投稿しています
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
【完結】悪女を押し付けられていた第一王女は、愛する公爵に処刑されて幸せを得る
甘海そら
恋愛
第一王女、メアリ・ブラントは悪女だった。
家族から、あらゆる悪事の責任を押し付けられればそうなった。
国王の政務の怠慢。
母と妹の浪費。
兄の女癖の悪さによる乱行。
王家の汚点の全てを押し付けられてきた。
そんな彼女はついに望むのだった。
「どうか死なせて」
応える者は確かにあった。
「メアリ・ブラント。貴様の罪、もはや死をもって以外あがなうことは出来んぞ」
幼年からの想い人であるキシオン・シュラネス。
公爵にして法務卿である彼に死を請われればメアリは笑みを浮かべる。
そして、3日後。
彼女は処刑された。
事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。
木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。
彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。
しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる