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勇者の迷い

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 何故僕は皆と別れたのだろう...。

 皆と別れてからずっとそればかり考えている。

 いつもなら敵地で絶対に別れるはずがないのに、今回は別れてしまった。

 僕は皆に今の表情を見られたくなかったから仕方なく別れたのだと自分に言い聞かせる。

 勇者である僕に迷いがあればそれだけでパーティ全体に迷惑がかかる。

 そう思っての決断だった。

 迷いのある勇者などお荷物だと心の何処かでそう思っていた。

 外で4体の龍を倒した時に緊張の糸が僅かに切れていたのだと思う。

 正直少しだけ油断していたのは事実。

 僕が階段から上の階に上がろうとした瞬間にそいつは現れた。

 青い髪に青いコートと全身青づくめの少女が僕の前に立ちふさがったのだ。

「新手か...」

 僕はそう呟きながら紅き剣に手をかけて敵を見据えたと同時に脳内に衝撃を受けた。

「パルナ...?」

 思わずそう漏らしてしまうほど似ている少女の姿に僕は驚いたのだ。

 青髪も少女は?とでも言いたげな表情を浮かべながらも答えてくれた。

「パルナ...?、違う私はケロナ、誰と重ねているのか知らないけど勘違いしないで」

「ケロナ...?」

 そう、パルナが生きているはずがないと1番理解しているのは自分のはずなのに思わずその様な言葉を呟いてしまった自分を笑う。

「ははっ...、そうだよな...、パルナが生きている筈がない...、そしてお前は敵...敵だ」

 僕はただ剣を引き抜く。

 それを見た彼女も戦闘態勢を取り始めた。

 僕と少女の間には数メートルの空間があるのにも関わらず、ピリピリとしたいたい空気がここまで感じられた。

(...強いな...、それもかなりの手練れだ)

 相対する少女は見た目こそ幼いものの、そこから感じられる殺気や仕草、その所作の一つ一つに至るまでが強者たる所以を醸し出している。

 ...、これはまずいな...、僕と同じくらいの実力ならいいんだが...。

 強い存在という者は自分の実力を隠すのも上手いものだ。

 最後まで気の抜けない戦いが今始まるのだった!。



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