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まあ...そんなところじゃ
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「それで...、今でも旅の途中だという訳か...」
「まあ...そんなところじゃ...」
僕は静かに視線を合わせないようにしていた。
なんだかその事を話す彼女の姿が悲しく見えたからだ。
なんだか聞いてはならない物語を聞いてしまったような気がする...。
さっきまでただの酔っぱらいだった彼女が見せる静かなる表情...。
それがあまりにも悲壮感に満ちており、普段の彼女が見せるものとかけ離れ過ぎているのが、より一層の深みを出している。
『聞いてはいけない話を聞いてしまった』
誰しもが持っているであろう話したくない過去。
彼女にとって、この話こそがそれに当たるのだという考えにたどり着くのに、そう時間はかからなかった。
夜になり冷え切った空気に襲われる中、僕の体は勝手に動いていた。
「ツグミ...君?」
「こんな事くらいしか出来ないけど...、受け取ってくれ...」
そっと尻尾を彼女の頰に当てて彼女の体を温める。
獣人である僕の尻尾はもふもふなので暖かい。
「ツグミ君の尻尾...、暖かいのう...」
それで彼女の冷え切った体が少しでも温まるのならいいと思った。
ただそれだけだ...。
しばらくそうしていると...。
「あっ!見つけましたよ!」
「チュリア!?」
「チュリアじゃのう」
息を激しく切らしたチュリアが僕たちの前に現れました。
大きく肩で息をしながら、彼女は大きな声で僕を叱りつけてきます。
「今何時だと思っているんですか!!、本気で心配したんですよ!」
いつになく本気な表情の彼女を見ていると、申し訳ない気持ちになってきた...。
「ごめん...」
「全く...、無事なようですし、システィさんが側にいたみたいなのでそこまでネチネチは言いませんけど、出かけるんだったら一声かけてくださいね」
心配したような表情で僕のことを見てくる彼女に、僕は本心から謝る。
「まあまあ良いではないか、だいたい町に誘ったのはわしじゃし、そこまで怒るな」
「えっ...、システィさんがツグミ君を連れ出したんですか?」
「ああ」
そう答えるシスティにチュリアは怒りの声を叩きつけ始めた。
「いいや!ダメでしょ!、いくらシスティ様でも未成年を夜の町に誘うのはアウトですよ!!」
その声を聞いたシスティは困惑した表情で頬っぺたに人差し指を当てる。
「そういうものかのう?」
「そういうものです!」
必死なチュリアとあっけらかんなシスティのやりとりを見ていると、なんだか笑えてきた...。
「ふふっ...」
「ツグミ君?」
「いや...、何だかこのやり取りが面白くってさ...」
急に笑い出す僕を見て、2人は顔を見合わせているのでした。
「まあ...そんなところじゃ...」
僕は静かに視線を合わせないようにしていた。
なんだかその事を話す彼女の姿が悲しく見えたからだ。
なんだか聞いてはならない物語を聞いてしまったような気がする...。
さっきまでただの酔っぱらいだった彼女が見せる静かなる表情...。
それがあまりにも悲壮感に満ちており、普段の彼女が見せるものとかけ離れ過ぎているのが、より一層の深みを出している。
『聞いてはいけない話を聞いてしまった』
誰しもが持っているであろう話したくない過去。
彼女にとって、この話こそがそれに当たるのだという考えにたどり着くのに、そう時間はかからなかった。
夜になり冷え切った空気に襲われる中、僕の体は勝手に動いていた。
「ツグミ...君?」
「こんな事くらいしか出来ないけど...、受け取ってくれ...」
そっと尻尾を彼女の頰に当てて彼女の体を温める。
獣人である僕の尻尾はもふもふなので暖かい。
「ツグミ君の尻尾...、暖かいのう...」
それで彼女の冷え切った体が少しでも温まるのならいいと思った。
ただそれだけだ...。
しばらくそうしていると...。
「あっ!見つけましたよ!」
「チュリア!?」
「チュリアじゃのう」
息を激しく切らしたチュリアが僕たちの前に現れました。
大きく肩で息をしながら、彼女は大きな声で僕を叱りつけてきます。
「今何時だと思っているんですか!!、本気で心配したんですよ!」
いつになく本気な表情の彼女を見ていると、申し訳ない気持ちになってきた...。
「ごめん...」
「全く...、無事なようですし、システィさんが側にいたみたいなのでそこまでネチネチは言いませんけど、出かけるんだったら一声かけてくださいね」
心配したような表情で僕のことを見てくる彼女に、僕は本心から謝る。
「まあまあ良いではないか、だいたい町に誘ったのはわしじゃし、そこまで怒るな」
「えっ...、システィさんがツグミ君を連れ出したんですか?」
「ああ」
そう答えるシスティにチュリアは怒りの声を叩きつけ始めた。
「いいや!ダメでしょ!、いくらシスティ様でも未成年を夜の町に誘うのはアウトですよ!!」
その声を聞いたシスティは困惑した表情で頬っぺたに人差し指を当てる。
「そういうものかのう?」
「そういうものです!」
必死なチュリアとあっけらかんなシスティのやりとりを見ていると、なんだか笑えてきた...。
「ふふっ...」
「ツグミ君?」
「いや...、何だかこのやり取りが面白くってさ...」
急に笑い出す僕を見て、2人は顔を見合わせているのでした。
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