黒髪狼少女は、白髪の青年に何を思う？

氷の国アイシス編

空夜

　俺は親父に鼓動について話してもらっていた。
　今日でしっかりとレクチャーするつもりなのだろうが、何度も聞いた話を繰り返しているだけだ。

「親父...、さっきから鼓動について話してくれているが、やっぱり実戦を積み重ねた方がいいと思うんだが...」

　親父は子供らしい仕草で俺の方を向く。

「いや、ちゃんと鼓動について深く理解しておかないと発現はできないだろう、才能がないのであればなおさらな」

　狩夜が落ち込むのを見て空夜は慌てて慰める。

「狩夜に才能がないって言ってるんじゃないけどね」

「いや、いい才能がないのはわかってる..」

　2人のやり取りを見ていた狩夜の弟がつまらなそうに空夜に喋る。

「お父さん、僕はもういいかな？、兄さんと一緒にいても僕に有益はないと思うけど」

　狩夜の弟の名前は青夜、黒髪短髪に青い服を着ている。
　彼は鼓動才能に恵まれており、高い実力を皆にも評価されている。
　それ故か、狩夜を毛嫌いしている節が時折見られる。
　そんなことを発言する青夜を見かねた空夜は、青夜にも鼓動の歴史を語るが全部先に言われて、空夜の方がたじたじになっている。
　空夜を言い負かした青夜は席を立ち自分の部屋へと戻っていく。
　空夜はため息をつきながら青夜を見つめている。

「できの良すぎる子も問題だな...、全然僕の言うことを守れない青夜には手を焼かされるよ....」

　そう空夜は呟く。
　実際に青夜の実力の伸び方は異常だ。
　最近になって青夜のやることが派手になってきている。
　1人で勝手に悪魔の潜む屋敷に忍び混んで盗みを働いたり、魔物を親父の許可なく討伐したりとやりたい放題している。
　しかもその報復にやってきた悪魔を1人で返り討ちにするだけの実力が青夜にはあった。
　時々青夜が人間ではないような気がする。
　あの時の青夜の表情は尋常ではなかった、強い者を倒す快感に打ち震えているような...。

(青夜も昔は素直ないい子だったのにな...、いつからああなったんだ...)

　狩夜が物思いにふけっていると空夜の鼓動教室は再開する。
　狩夜はため息をつきながら空夜の話を聞いていた。