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氷の国アイシス編
黒い悪魔の誕生
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土砂降りの雨の中、俺は怪我をした手を抑えて母さんを抱えている。
この日のことは忘れたくても忘れられない、忘れてはいけない。
母さんの左目がえぐられていて血が流れている。
俺は腕に走る痛みに耐えながら母さんを雨の当たらない木下に置いて休ませる。
俺たちの家の方から煙が上がっている。
「すぐに戻るからそこでまってて!」
母さんを放っていくことに罪悪感はあったが状況が状況だ。
(なんで...、なんでこんなことになっちまったんだよ..)
~燃える家~
俺が家にたどり着くと父さんが黒い悪魔と戦っている。
黒い悪魔が急に現れ母さんの右目をえぐり出したのだ。
俺は父さんに加勢するように形で割り込みむが、黒い悪魔に一蹴される。
俺は蹴られて燃え盛る壁に背中を激しく強打する。
父さんは俺に意識を向けようとしたが、すぐに悪魔の方に向き直る。
「狩夜!なぜ戻ってきた!」
「俺も戦う!」
父さんに戦う意思を見せるが、父さんは悲しそうな目で俺を見てくる。
「すまない、こんな形になるとは思いもしなかったんだ...、許してくれ狩夜...」
「なんで、親父が謝ってんだよ!、悪いのはそいつだろ!」
俺は黒い悪魔を指差して叫び声を上げる。
「つか、青夜のやつどこへ行った!、今こんな状況だとわかっているのか!」
空夜は狩夜を見ることをやめる。
「...、そうだよね、鼓動を使えない狩夜にはわからないよね...」
「今は鼓動使える使えないは関係ないだろ!、あいつぶっ潰すには少しでも戦力が...」
狩夜がそこまでいうと親父は涙を流していた。
あれほど強い親父が泣いているところは初めて見た気がする。
「何、泣いてんだよ...」
親父は答えてくれない...。
黒い悪魔の見た目は人型で顔はない。
全身が真っ黒に染まっていて、顔の部分が時折チカチカと赤く光る。
さっき蹴られた時にあれは生物ではない様な気がした、あまりにも感触が無機質すぎる。
空夜と悪魔は向かい合う。
じっと互いを見つめて睨み合う。
先に動いたのは悪魔だった、右手を刀の様に変形させて空夜に斬りかかる。
それを空夜は鼓動の蒼き鎖を腕から放出し絡めとり悪魔の体を自分の射程圏内へと引きずりこむ。
空夜は幼子とは思えないほどの腕力で悪魔を高速で殴り続ける。
秒間10発程度の速さだ、人間であれば最高クラスの速度である。
鼓動の乗った空夜の方が悪魔より強い様だ.
(やっぱ親父はつぇぇ...)
空夜が本気を出したところは見たことがなかった、もしかしたら今でも本気を出していないのかもしれない。
俺は息を呑みながら空夜の鬼神の如き戦いぶりを見ていた。
黒い悪魔はダランとしているが闘志は消えていない様だ。
不意に機械音の様な音でこう叫に出した。
「チァラァァ..!、キュウヤァァァ!!」
よくわからないが叫んでいるのは確かだった。
空夜の鎖を振り解いて反撃し始める。
親父はなぜか打たれるままになる。
目を瞑ったまま黒い悪魔に殴られ続ける。
「親父!?」
俺は思わず声を上げる、親父の力はこんなものじゃないはずだと、というより反撃する気がないのか!?
空夜が一度膝をつくと黒い悪魔は遠吠えを上げる。
それは地を裂き空を割るほどの人の感情の様に狩夜は思えた。
空夜はなぜかそれを悲しそうに見ている。
「ごめんな...、お前がそう思ってるなんて思っていなかったんだ...、一度くらい本音で話し合えば良かったな、でもこうなった以上本気でやってやる...」
空夜の意識が集中する。
さっきまで散漫だった空夜の気持ちがある目的の為に一つになる。
「悪いが、お前が家族に手を出したことは許されない、僕がこの手で終わらせる」
いつになく真剣な眼差しで悪魔を睨みつけている。
(あんなに怒った親父は見たことがねぇ...)
親父の鼓動は覚めるような青さで、全てを守り通す意思の強さを感じた。
それが小さな拳に乗っていく。
右手に集中させたそれはもう幼子の拳ではなかった。
屈強な戦士の腕、そのものだった。
黒い悪魔は咆哮を上げて蒼きオーラを纏う。
「なっ!、あいつ鼓動を使えるのか!?」
それは狩夜には見慣れた鼓動の鮮やかな色をしていた。
見間違えるはずがない。
2人の戦士がぶつかり合う。
小さい空夜の方が不利に思えたが、そうではなかった、明らかに空夜が押している。
そう、空夜の後ろには狩夜がいる、子を守る親の底力は我々の想像を超える。
凄まじい生体エネルギーの波紋は拡散しながら辺りに被害を被る。
拡散したエネルギーの余波だけで狩夜は吹き飛ぶ。
「親父ィィィ!!!」
俺は思わず心の底から叫んでいた。
....?。
俺が目を覚ますと親父が俺の側で横たわっていた。
何が起きたのかいまいちよくわからなかったが、親父の体を触ってみる。
まだほんのり温かい。
黒い悪魔はなにかを呟いていた。
「ボクァァ...ツヨイ....、キュウヤァコロシタ...、ツギ..、モットモットツヨイヤツ...サガス....」
黒い悪魔はそれだけ言うと鼓動の羽を作り上げて飛び立った。
「待て!」
俺が叫んで追いかけようとすると親父が息を吹き返した。
それを見た俺は親父の傷口を押さえるが、全然血が止まる気配がない。
「止まれっ!、止まれってんだよ!」
傷口を押さえて血の噴出を止めようとするが意味はほとんどなかった。
空夜はもういいと言う。
それでも狩夜は続けた、続けなければいけないと心が命じていたからだ。
空夜は小さく呟く。
それを狩夜は一字一句全て聞く。
「狩夜...、今までありがとう...、僕の残った鼓動受け取って欲しいんだ...わかるだろ...?」
鼓動使いは鼓動使い同士と鼓動の継承ができる、だがそれは系統が近いもの同士でしか行えない、狩夜の系統が空夜と近いとは限らない。
「お前が奴を止めてくれ...、僕じゃできなかった...、お前が...家族を守ってくれ...」
空夜は自身の残った命そのものと言える鼓動を狩夜へと継承する。
親父の弱々しくも雄々しい力を感じる。
狩夜はこの時に鼓動を習得したと同時に空夜の手はガクンと落ちて地面を叩く。
天から降りそそぐ雨と空夜の体から流れ出す血が混じり水溜りを作り上げる。
狩夜は静かにただ涙を流していた。
この日のことは忘れたくても忘れられない、忘れてはいけない。
母さんの左目がえぐられていて血が流れている。
俺は腕に走る痛みに耐えながら母さんを雨の当たらない木下に置いて休ませる。
俺たちの家の方から煙が上がっている。
「すぐに戻るからそこでまってて!」
母さんを放っていくことに罪悪感はあったが状況が状況だ。
(なんで...、なんでこんなことになっちまったんだよ..)
~燃える家~
俺が家にたどり着くと父さんが黒い悪魔と戦っている。
黒い悪魔が急に現れ母さんの右目をえぐり出したのだ。
俺は父さんに加勢するように形で割り込みむが、黒い悪魔に一蹴される。
俺は蹴られて燃え盛る壁に背中を激しく強打する。
父さんは俺に意識を向けようとしたが、すぐに悪魔の方に向き直る。
「狩夜!なぜ戻ってきた!」
「俺も戦う!」
父さんに戦う意思を見せるが、父さんは悲しそうな目で俺を見てくる。
「すまない、こんな形になるとは思いもしなかったんだ...、許してくれ狩夜...」
「なんで、親父が謝ってんだよ!、悪いのはそいつだろ!」
俺は黒い悪魔を指差して叫び声を上げる。
「つか、青夜のやつどこへ行った!、今こんな状況だとわかっているのか!」
空夜は狩夜を見ることをやめる。
「...、そうだよね、鼓動を使えない狩夜にはわからないよね...」
「今は鼓動使える使えないは関係ないだろ!、あいつぶっ潰すには少しでも戦力が...」
狩夜がそこまでいうと親父は涙を流していた。
あれほど強い親父が泣いているところは初めて見た気がする。
「何、泣いてんだよ...」
親父は答えてくれない...。
黒い悪魔の見た目は人型で顔はない。
全身が真っ黒に染まっていて、顔の部分が時折チカチカと赤く光る。
さっき蹴られた時にあれは生物ではない様な気がした、あまりにも感触が無機質すぎる。
空夜と悪魔は向かい合う。
じっと互いを見つめて睨み合う。
先に動いたのは悪魔だった、右手を刀の様に変形させて空夜に斬りかかる。
それを空夜は鼓動の蒼き鎖を腕から放出し絡めとり悪魔の体を自分の射程圏内へと引きずりこむ。
空夜は幼子とは思えないほどの腕力で悪魔を高速で殴り続ける。
秒間10発程度の速さだ、人間であれば最高クラスの速度である。
鼓動の乗った空夜の方が悪魔より強い様だ.
(やっぱ親父はつぇぇ...)
空夜が本気を出したところは見たことがなかった、もしかしたら今でも本気を出していないのかもしれない。
俺は息を呑みながら空夜の鬼神の如き戦いぶりを見ていた。
黒い悪魔はダランとしているが闘志は消えていない様だ。
不意に機械音の様な音でこう叫に出した。
「チァラァァ..!、キュウヤァァァ!!」
よくわからないが叫んでいるのは確かだった。
空夜の鎖を振り解いて反撃し始める。
親父はなぜか打たれるままになる。
目を瞑ったまま黒い悪魔に殴られ続ける。
「親父!?」
俺は思わず声を上げる、親父の力はこんなものじゃないはずだと、というより反撃する気がないのか!?
空夜が一度膝をつくと黒い悪魔は遠吠えを上げる。
それは地を裂き空を割るほどの人の感情の様に狩夜は思えた。
空夜はなぜかそれを悲しそうに見ている。
「ごめんな...、お前がそう思ってるなんて思っていなかったんだ...、一度くらい本音で話し合えば良かったな、でもこうなった以上本気でやってやる...」
空夜の意識が集中する。
さっきまで散漫だった空夜の気持ちがある目的の為に一つになる。
「悪いが、お前が家族に手を出したことは許されない、僕がこの手で終わらせる」
いつになく真剣な眼差しで悪魔を睨みつけている。
(あんなに怒った親父は見たことがねぇ...)
親父の鼓動は覚めるような青さで、全てを守り通す意思の強さを感じた。
それが小さな拳に乗っていく。
右手に集中させたそれはもう幼子の拳ではなかった。
屈強な戦士の腕、そのものだった。
黒い悪魔は咆哮を上げて蒼きオーラを纏う。
「なっ!、あいつ鼓動を使えるのか!?」
それは狩夜には見慣れた鼓動の鮮やかな色をしていた。
見間違えるはずがない。
2人の戦士がぶつかり合う。
小さい空夜の方が不利に思えたが、そうではなかった、明らかに空夜が押している。
そう、空夜の後ろには狩夜がいる、子を守る親の底力は我々の想像を超える。
凄まじい生体エネルギーの波紋は拡散しながら辺りに被害を被る。
拡散したエネルギーの余波だけで狩夜は吹き飛ぶ。
「親父ィィィ!!!」
俺は思わず心の底から叫んでいた。
....?。
俺が目を覚ますと親父が俺の側で横たわっていた。
何が起きたのかいまいちよくわからなかったが、親父の体を触ってみる。
まだほんのり温かい。
黒い悪魔はなにかを呟いていた。
「ボクァァ...ツヨイ....、キュウヤァコロシタ...、ツギ..、モットモットツヨイヤツ...サガス....」
黒い悪魔はそれだけ言うと鼓動の羽を作り上げて飛び立った。
「待て!」
俺が叫んで追いかけようとすると親父が息を吹き返した。
それを見た俺は親父の傷口を押さえるが、全然血が止まる気配がない。
「止まれっ!、止まれってんだよ!」
傷口を押さえて血の噴出を止めようとするが意味はほとんどなかった。
空夜はもういいと言う。
それでも狩夜は続けた、続けなければいけないと心が命じていたからだ。
空夜は小さく呟く。
それを狩夜は一字一句全て聞く。
「狩夜...、今までありがとう...、僕の残った鼓動受け取って欲しいんだ...わかるだろ...?」
鼓動使いは鼓動使い同士と鼓動の継承ができる、だがそれは系統が近いもの同士でしか行えない、狩夜の系統が空夜と近いとは限らない。
「お前が奴を止めてくれ...、僕じゃできなかった...、お前が...家族を守ってくれ...」
空夜は自身の残った命そのものと言える鼓動を狩夜へと継承する。
親父の弱々しくも雄々しい力を感じる。
狩夜はこの時に鼓動を習得したと同時に空夜の手はガクンと落ちて地面を叩く。
天から降りそそぐ雨と空夜の体から流れ出す血が混じり水溜りを作り上げる。
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