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氷の国アイシス編

良かった...

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 親父...。

「親父!」

 俺は布団をめくり上げて絶叫しながら目覚めた。
 それを見た2人は声を上げて感極まった声で狩夜に抱きついてくる。

「狩夜...、本当に良かった....」

「もう、ずっと狩夜が起きないから本気で心配したんだからね!、でも起きてくれてありがとう!」

「花夜...?クウ...?、俺は一体どうなっていたんだ?」

 彼女達に事の成り行きを説明され、自分の身勝手な行動が彼女達を危険に誘い込んだ事を思い出した。

「すまない...、俺はお前達を危険に晒したんだな...」

 俺は頭を下げて謝ると、2人は「大丈夫」と言ってくれた。

「大丈夫です、私は狩夜お兄ちゃんの為ならば、たとえ火の中水の中、あなたに命を救われた日から私は...」

 そこまで言うと花夜は目線を外し、顔を手で覆って隠した。

「クウも狩夜といるとなんだが楽しい気分になれるんだ~」

 そこまで言うと、思い出したかの様にアイスクリスタルでできた花を出してきた。

「そうそう、狩夜が早く良くなる様にこれを買って来たんだ!、受け取って」

 差し出された精密な花を渡された時、なんだか胸が熱くなった俺は、自然と涙が溢れて来た。
 その様子に2人はびっくりして心配するように声をかけてくる。

「大丈夫ですか狩夜!?、どこか痛みますか?」

「いや、急なことに感動しただけだ...」

 俺はハッとした様に口を閉じる。
 2人はニヤニヤしながら俺の方を見て来る。

「もう一回言ってくれますか?」

「何も言ってない!、本当だ!」

 完全にあちらのペースに飲まれた俺は布団に潜り込んでしまった。
 その様子を見た2人は顔を見合わせて笑っていた。

「でも良かった、狩夜お兄ちゃんが目覚めてくれて...」

 花夜は布団に潜り込んだ彼を、優しく微笑みながら見下ろしていた。


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