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共依存

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 その日から俺は自分の家に篭った。

 たま~に結美と出かけるのだが、基本的には彼女がずっと隣にいる。

「カズ君♡ カズ君♡ カズ君♡」

 毎日毎日彼女の声を近くで囁かれるのが堪らなく心地いい...。

 ずっと彼女の声に包まれていたいと感じてしまう。

(ああ...結美が側にいてくれるから俺は生きていられる...)

 今の俺は幸せだ。

 毎日彼女が俺の為に食事を作ってくれるし、俺が望めば基本的になんでもしてくれる。

 彼女は毎日笑顔を絶やさずに俺に微笑みかけてくれるし、俺はそんな彼女を好きでいる。

『マイナススキル【愛川結美への共依存】を取得しました』

(マイナススキル? 今のこの思いが...か? 馬鹿馬鹿しい。所詮は誰かの作ったシステムだろ? メニュー画面なんて...)

 俺は鼻で笑いながらメニュー画面を見つめていた。

「カズ君♡ 今日の晩御飯はカレーだよ♡」

 彼女が作ってくれた熱々のカレーに俺はとろけてしまう。

「うん! 美味いよ! 結美!」

「そう? ふふっ♡ カズ君には私の手料理をもっともっと沢山食べてほしいから頑張っちゃうね!」

 俺はがっつくように彼女の作ったカレーを貪る。

 それが彼女の目論み通りだと知らずに...。
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